とんでもないもの

送りものが届いた。しかし中は分からない。重いようで軽く、送り主は不明。段ボールだが、ガムテープは使われておらず、内側から接着剤か何かでくっつけられているようなのだ。振っても音はしない。何のラベルも貼られていない。ひょっとしたら、巧妙に作られた爆弾かもしれないと思いついた。だとすれば、これは開けずにそのまま捨ててしまおう。しかし、それも危険ではある。他の人が開封に成功すれば一気に木っ端微塵になってしまうからだ。そんなことをさせるほど人の心を忘れたわけではない。ではやはり、自分で持っておくより他に仕方ない。中が何かは分からないが、開けるのは危険だ。それに、もしいいものであったとするならば、人手に渡してしまうのは勿体ない。ではどうやって開けるか。いや、よく考えれば、中身がわかりさえすれば良いのだ。別に開けることにこだわらずともよかった。この中身がわかりさえすれば、もう怯えずとも済む。しかし、中身のわからないダンボールを調べてくれる都合のいい業者はどこにもいない。また振り出しに戻ってしまった。とにかく、もう一度見てみることにした。やはり、どこからどう見てもただの、なんの変哲もない箱だ。ますます怪しい。郵便局へ行って誰が送ってきたのか聞くべきだろうか。それをするには余りにも情報が少なすぎる。追い返されてしまうかもしれないと思うと、簡単には持って行けそうになかった。自分で開けるしかない。どれほどの危うさを共にしても、好奇心には抗えないのだ。カッターナイフとハサミを、文房具立ての中から取り出した。上底の頂点にカッターを刺す。そのまま手前の辺に沿って刃先を滑らせようとするも、どうもうまくいかない。やはり、内側から何かでくっつけられているのだろう。そこまで考えて、もはや面倒になってしまった。こんなものの中身などどうだっていい。せっかくの休みを無駄に費やした自分への憤りを感じながら眠りについた。

朝がやってきた。日差しに顔を照らされて目を開けた。ふと箱を見ると、滅茶苦茶に内側から破られていた。箱の内側は黒い煤に塗れていたが、何かがその煤に擦り付けられたような跡があった。すぐ近くの床に、正方形の跡がついており、それが窓まで続いている。閉めていたはずの窓が開け放たれていた。ベランダの手すりについたものを最後に、跡は無くなった。とたんに、その正体に思い当たってがたがた震えた。とんでもないものだ。しかし、まだ不十分だったようで、きっとここから落ちてしまったのだろう。もっと早くに叩き潰しておけばよかったと思った。それと同時に、知らなければよかったとも思った。

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