第42話 記憶にないラッキースケベ
ホルスたちは魔物の返り血を洗い流すために近くに流れている川に寄り道をすることにした。
その際ホルスは遠くでいることを提案したが、流石に魔物がいる可能性がある場所で1人には出来ないため、ホルスが目隠しをすることで解決した。
「えー!ハルカもそういう関係だったの!?」
「うん」
女性たちのキャッキャウフフの声にホルスは無心でいることが精一杯だった。
無心でいることを続けたことが功を奏して、自分の心を殻で閉じ込めることで、完全に精神統一して周りの雑音を遮断することが出来るようになった。その代わりに自分の性関係について女性たちが話すことを止めることが出来なかった。
「あたしも普通の恋愛がしたいな……」
「なんか言ったミラ?」
「いや何でもないよ。そう言えばホルスが坐禅を組んでから全然動いてないけど、なんかスキルでも持ってるの?」
「いや、私は聞いたことないけど、ハルカは何か知ってる?」
「私も聞いたことないから……単純に坐禅の才能でもあったんじゃない?」
誰にも聞こえないような声で呟いたミラだったが、ステータスで強化されたルナの耳には届いており反応されてしまった。ホルスとは違い誤魔化すのが上手いミラは何の焦りも見せずに誤魔化していた。
坐禅を組んでからホルスはピクリとも動いていないため彼女らの予想も当たっていそうだが、彼女らの予想は外れている。確かにホルスは坐禅を組むようなスキルを持っていなかったが、この短時間で坐禅に関するスキルを手に入れたのだ。その点も含めて言えば坐禅の才能があったのかもしれない。
「キャァァァ!!」
「大丈夫ですか!?」
「キャーー!!」
ミラのパーティーメンバーの1人が悲鳴をあげた。その女性は森から急に出てきたホブゴブリンと接敵してしまった。しかも運悪くその女性は後衛なのだ。後衛とはいえいつもは最低限の自衛が出来るように短剣を持っていたのだが、今は水浴びをするために川辺に置いてしまっていた。
その声に1番最初に反応を示したのは意外にもホルスだった。ホルスは雑音は一切シャットアウトしていたが、悲鳴は雑音ではない認定されているので、心を殻で閉じ込めていても反応できた。しかし悲鳴が聞こえたことで慌てていたホルスは目隠しを外してしまった。
目隠しを外したホルスは恐怖の悲鳴とは違う悲鳴を聞いたのを最後に意識を失った。
――ホルスが目を覚ますと至近距離にルナの顔があった。その状況からルナに膝枕されていることが分かったのだが、何故自分が膝枕をされているのかは思い出せなかった。
「あ、起きた?」
「うん。でもどうして……坐禅中にそのまま寝ちゃったのかな?」
「……覚えてないのね……そうだよ。ホルスは坐禅中に寝ちゃったから私が膝枕をしていたの」
ルナがなにか呟いていたような気がしたホルスだったが、鈍感でニブチンのホルスは聞き間違いだろうと思うことにした。
そんな様子を顔を赤くしているミラは少し離れたところで眺めていた。
「そう言えば僕はどのくらい寝てたんだろう?」
「10分とかだと思うから別に気にしなくていいと思うよ。起きたならみんなの所に戻って街に向かおうか」
二人がみんなの所へと戻るとミラを含めてミラのパーティーメンバーたちはみんな顔を赤くしていた。
事情を知らないホルスは首を傾げていた。そんなホルスを見てミラはため息をついてから、ホルスへと話しかけた。
「目が覚めてよかったよ。じゃあホルスも起きたことだし街に向かおう!!」
リーダーであるミラがなかった事として扱ったので、他のメンバーたちも裸を見られなかったことなどなかったということにした。
森から出て開けた場所に出ると遠くに城壁と思われる物が薄らと見えたので、気付かぬうちにホルスたちはかなりの距離を進んでいた。
「もう街が見えるけど最後まで気を抜かずに進もう」
ルナの心配は杞憂に終わり、残りの道は何事もなく港町『ヨウフラン』に到着した。
門番に目的を話して街の中に入ると生まれて初めて嗅ぐ潮の香りが鼻を刺激した。
「これが海の匂い……」
「私はこの匂い無理だなぁ」
ミラのパーティーメンバーの1人で犬の獣人のラムは犬系獣人の種族特性である敏感な鼻に潮の香りは強すぎた。
特に出来ることはないので我慢しかないので、ラムは涙目になりながら街を進んでいた。ちなみに潮の香りは海藻など死骸から発生するものなので、そもそもあれをいい匂いだと思う人は少ないのだ。
「取り敢えず今日はこの街で一泊して明日の朝に出港でいいかな?」
「あたしはそれでいいよー。ここまでの道のりで案外疲れたしね」
宿を探していた一行だったが、昼過ぎだったので宿の空きは少なく四人部屋が一つと三人部屋が一つずつしか部屋の空きはなかった。
一人部屋があれば一人で寝たかったホルスだったが、部屋がないのは仕方がないことなので、パーティーごとに別れて泊まることになった。
「若いからはしゃぐのは仕方ないけど壁は薄いから気をつけなね」
宿の女将からの忠告にルナのパーティーはみんな顔を赤くした。それを見たミラはケラケラと笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます