第23話 エピローグ
「知らない天井だ……」
「団長!!ホルスさんが起きました!」
ホルスは知らないベットの上で目が覚めた。ホルス自身は何が起こったか分かっていなかった。ポーションを運ぶ女性の姿を見て医療系の旅団が運営している病院に居ることに気付いた。
「やっと目を覚ましましたか……」
「どのくらい眠っていましたか?」
「そうですね……約1週間ほど」
「えっ……?」
ホルスは驚愕で声も出なかった。だがホルスは1週間眠っていたことに驚いていたのではない。1週間も眠る必要がある傷だったのにも関わらず自分はスキルを使用していたことに驚いていた。
「貴方は背中の傷からの出血がかなり酷かったんですよ。一時は生死をさまよっていた時もあったので、目が覚めて良かったです。あっ、でも1ヶ月程度はダンジョンに行ったらダメですよ」
「そんな!?」
タダでさえ1週間無駄にしているので、出来るだけ早くダンジョンに行きたかったホルスだったが、ドクターストップを掛けられたので、仕方なく安静にするのだった。
*****
「目が覚めたの!!?」
病室のドアを勢いよく開けたのはハルカだ。ハルカは読書をしているホルスを見ると思いっきり抱き締めた。
「は、ハルカ?」
「わ゛た゛し゛のせ゛い゛でホ゛ル゛ス゛ざんがおぎなぐでぇ」
抱きしめると同時にハルカの涙腺は決壊した。自分のせいでホルスが大きな傷を負ったことへの謝罪や強くなる決意だったりを鼻水をホルスの服に擦り付けながら話していた。
最初は驚いて動けなかったホルスも時間が経つにつれて冷静になり、背中をトントンと叩き、宥めるようになっていた。
「す、すいません。お恥ずかしい姿をお見せして」
「あはは、気にしなくていいよ。心配かけたのは確かだから」
あらかた話し終えたハルカは冷静になったのだろう。大号泣しながら鼻水を服に押し付け、鼻声で自分の気持ちを好意を抱くホルス相手にしたのに気付き、恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「落ち着いた?」
「……はい」
「良かった。そう言えばルナが居ないけど」
「ルナなら一人でダンジョンに行ってます」
「一人で!?大丈夫?」
ホルスが驚くのも仕方ない。ダンジョンでの活動はパーティーで活動するのをギルドが推奨しているほどダンジョンでのソロは危険なのだ。
しかしホルスも人のことを言えるほど偉くない。もしホルスが同じ状況でルナが入院していたとしたら、強くなるために自分1人でダンジョンに潜るはずだ。
「一応二階層までしか行かないと言っていましたけど……無理はしてそうです。だから早く顔を見せてあげてくださいね」
「……うんそうだね」
そう言い残してハルカは部屋から去って行った。ホルスはハルカの悲しげな顔を見て引き止めようとしたが、何か用事があったら悪いと思い引き止めなかった。
「……どうしたんだろう」
*****
「両腕がないのはだいぶ不便だな」
「治せへんのか?」
「あいつも呪術を使っていたらしい。しかも俺より強力な呪術だったから上から呪術を使って無理矢理解呪するのも出来ない。治すにはあいつを捜し出すしかないだろう」
「あいつなら総帥を辞めてから行方不明や。あたし達でも捜すのは困難やで」
とある研究所に居るのは、ギルドの牢獄を襲撃した男に男勝りな喋り口調の露出度の多い服を来た女性。
男は肘から先がジャンヌによって斬られているため裏社会にばらまいていた薬を作ることが出来なくなっていた。それは裏ギルドにとってジャンヌが思っていた以上に大打撃だったのだ。
「感知系のスキルでも手に入れるか……」
「そんな都合よく媒体を持ってるんか?」
「持ってるわけないだろ?だからお前が居るんだ。『ゼロ番型』を貸し出してやるから行ってこい」
「人使いの荒いやつやでホンマに……」
文句を垂れ流しながらも女性は研究所を後にした。研究所に残った男はとあるカプセルを見ながら考えていた。
「せっかく第一段階をクリアした実験体が居るってのに腕を失うなんて……だいぶ誤算だ……この恩はいつか返してやるからなジャンヌ」
男はジャンヌを呪うようにブツブツと呟いていた。
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