第20話 魔物の大群
振り下ろされたルナの剣は、オークナイトの分厚い皮膚を破ることに成功したが、その下に隠れる強靭な筋肉に阻まれ、うなじを攻撃したにも関わらず致命傷を負わせることが出来なかった。
「……フゴ」
「――っ!!ぐっっ!」
自身の皮膚を斬り裂いたルナを敵とみなしたオークナイトは、ホルスを狙って走り出そうとした前傾姿勢から一気に振り返り、その勢いを使ってルナのことを殴り飛ばした。
オークナイトの攻撃は、オークナイトを倒すための頼みの綱である剣では受け止めず、左腕を使って受け止めた。
オークナイトの巨体から放たれた攻撃をモロに受けた左腕の骨は砕けた。少なくともこの戦いで動かすことはほぼ不可能だろう。
「ハァハァ……選択は間違っていないはず……」
「……フゴ」
オークナイトは先程の攻撃でかなりの体力を消費をしたルナ目掛けて追撃を仕掛けてきた。
『オーク特攻』の剣を失う訳にも行かず、ルナはオークナイトの攻撃に対して避けることだけに専念し続けていた。
「避けるだけで精一杯……体力の残るうちに鎧だけでも……」
「《我人を守る道を突き進む》」
ホルスはスキル『守護する者』を使用して駆け出した。ルナへの攻撃に集中していたオークナイトは一瞬反応に遅れた。
ワンテンポ遅れて振り返ったオークナイトの顔目掛けて、予備の短剣を振り下ろした。
ホルスが振り下ろした剣先はオークナイトの右眼を切り裂き、失明へと追い込んだ。
「フゴォォォォォォ!!!!」
一生残るであろう傷を負わされたオークナイトは雄叫びを上げた。オークナイトの咆哮を聞いた三人は身体の自由を奪われて、地面に膝を着いてしまった。
その咆哮は四階層全体に響き渡り、四階層に散らばる魔物たちに居場所を伝えるものとなってしまった。
「やばいですよ!全方向から魔物が近付いてきます!!」
魔物の動きに気付いたのは、オークナイトから一番距離があり、比較的軽傷で済んでいたハルカだった。
そんな魔物たちを呼んだ張本人であるオークナイトは逃げるかのように五階層に繋がる階段の方へと駆けて行った。ハルカは逃がすまいとボウガンの矢をアキレス腱目掛けて放ったが、量産型のボウガンと矢ではオークナイトの強靭なアキレス腱には歯が立たなかった。
「大丈夫ですか!?」
オークナイトがボウガンの射程範囲外まで逃げるとハルカの力ではどうにも出来ないため、未だに地面に膝を着いている二人の元に駆け出した。
「……うん、なかなか力が入らないけど立つくらいは出来そうだよ」
「私も直ぐに戦闘は難しいかもしれない」
「……筋肉の震えの問題だからポーションを使って治るか分からないから無闇に使えないし……」
「僕は魔法を使えば何とか動けると思うから……ある程度は戦えると思う……けどその後はルナに任せっきりになっちゃうかもしれない」
「数分耐えてくれれば私も動けるようになるから……お願いね」
三人を囲うように魔物の群れが現れた。この階層に現れる『ダークバット』や『オーク』、『オークナイト』が数十単位で居た。
「ふぅ……《我人を守る道を突き進む》!!」
魔法を発動して戦闘ができる状態に無理矢理したホルスは魔物の群れ目掛けて走り出した。それに合わせて魔物たちも目の前の人間の息の根を止めるために動き出した。
まずホルスが狙ったのは厄介度で言えば一番であるダークバットだ。だがダークバットは全体に散らばり、一点突破で倒しきることは出来ないため、一番ダークバットが密集している場所を襲撃した。
「はぁぁぁ!!」
「やっぱりホルスさんは凄いですね……」
「私たちはホルスの足枷にならないように自衛をしっかりするよ」
ホルスが暴れることによってヘイトは一点に集中しているが、それでもルナとハルカに攻撃を仕掛けようとする魔物は居る。そんな魔物をホルスが気にしなくていいように二人は近付かれる前にボウガンで脚を狙い機動力を奪っていった。
だがオークナイトは別だ。オークナイトは鎧を着込み露出している部分は少ない。今のハルカの技術では、その少ない露出場所を狙うのは難しいため接近を許していた。接近してきたオークナイトは多少動けるようになったルナが対応していた。
「フゴ!!」
「はぁぁぁ!!」
自分目掛けて振り下ろされる大剣を【オーク特攻】の剣で受け流すとオークナイトのどう目掛けて薙ぎ払った。
通常のオークナイト相手なら【オーク特攻】の力は偉大だった。鎧を一撃で破壊し、厚い皮膚、強靭な筋肉をも切り裂き絶命させることに成功した。
「やっぱりあいつが可笑しかっただけか」
「また来るよルナ!」
今度はホルスが仕留め損なった手負いのオークナイトが群れとなって、二人に襲いかかろうとしていた。
迫り来る群れにハルカはへっぴり腰ながらもボウガンを構え、ルナは【オーク特攻】の剣を構えてオークナイトに備えた。
しかし不運は重なってしまった。ホルスの魔法『守護する者』の制限時間を迎えてしまった。『守護する者』が解けたホルスはオークナイトも含む魔物の群れに対抗出来るほどのステータスを持ち合わせていないため、二人のもとへと引かざるを得なかった。
「ごめん……三分あればまた発動できると思う」
「ふぅ……私の番だね」
ホルスの働きもあり、魔物の総数は数十匹にまで減っていた。その中にはオークナイトが十匹居るが、三人で個別対応すれば勝てない敵ではない。だがまともに戦闘出来る者がルナしかいない。そのためルナは全スキルを使って本気を出した。
「『瞬歩』!」
ルナは魔物の群れへと一気に距離を詰めた。
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