第11話 エピローグ

 薬で狂った冒険者との戦いから数日が過ぎた。戦闘に勝利した二人はギルドから表彰され新人ニュービーとして若い冒険者たちから一目置かれる存在となった。

 

「ふぅ……やっと三階層に来れたね。ハルカ」


「そうですね……でも良かったんですか?私なんかじゃなくても候補はいっぱい居たでしょ?」


「僕たちが無名の時に声を掛けてくれたし……それに他の人たちは僕らのことなんてどうでも良かったと思うんだ。あの人たちが欲しかったのは新人って称号だけだと思う。でもハルカは違った。僕たちと一緒なら稼げるって欲もあったかもしれないけど……声を掛けてくれたのは嬉しかったよ」


「そうだよ。私たちはまだまだ未熟者なんだから一緒に成長していこう」


「ホルスさん……ルナさん……ありがとうございます!!」


 約束通りハルカとダンジョンに潜ることになった二人だったが、思っていた以上に彼女は優秀だった。

 彼女のステータスはかなり筋力と速度に偏っているためサポーター向けのステータスになっている。それにプラスして彼女が持つスキル『運び屋』。このスキルは自分の持つ鞄の内部の大きさが倍になるという効果を持っているため、彼女はサポーターとして天才と言ってもいいほどの才能を持っていたのだ。

 そして彼女との相性も良かった。サポーターの中にはチームワークを乱す者も居るのだが、彼女は乱すどころか最初から二人の戦闘に後衛として参加し、的確にダメージを与えている。

 相性がいいと思った二人はハルカのことを正規のパーティーメンバーとして誘うとハルカはこれを了承して、彼女はルナたちのパーティーメンバーになっていた。


「これから三階層に挑むわけだけど……この階層の魔物はゴブリンメイジが出てくるから僕が出来るだけ前衛をやるよ」


 ゴブリンメイジは魔法を使ってくるゴブリンで、稀にバフ魔法を使ってくることもあるので、魔防と防御の数値が高いホルスが前衛をやることになった。

 バフ魔法によって上がった筋力は魔防と筋力の平均値でダメージを受け止めるので、両方の数値が同じくらい高いホルスがやるのが一番ということで、二人の前に立った。

 三人の目の前に現れたのは、前衛のゴブリン三体にゴブリンメイジが一体の群れだった。


「三階層初の戦闘だから気を引き締めていくよ!!」


「ハルカは前衛ゴブリンの邪魔に集中して!メイジの方はホルスがお願い!!私は前衛をやるから」


 ホルスとルナは同時に走り出した。速度のステータスはルナの方が高いので、ゴブリンに初撃を入れたのはルナだった。

 ルナは前衛ゴブリンのうちの一匹の首に短剣を叩き込むと他のゴブリンたちが襲いかかって来たので、回転しながら二匹の首を切りつけた。

 回転後の隙にゴブリンメイジが火魔法の初歩中の初歩である火玉ファイアーボールを発動させた。弓矢ほどの速度で球体の火が隙だらけのルナ目掛けて飛んできた。魔法とルナの間にホルスが入ると短剣で魔法を打ち消した。

 

「わざわざ隙を晒すわけないでしょ」


 ゴブリンメイジはルナの隙はわざと作られたものだと分かると森の奥へと逃げ出した。


「はぁぁぁ!!」


 ゴブリンメイジの逃げ足はそこまで速くなかったので、ホルスは簡単に追い付き首を切りつけゴブリンメイジは絶命した。


「ふぅ……やっぱり魔法は打ち消せるね」


「まあ初歩の魔法だからね。これがもっと先になるともっと難しくなると思うよ」


 まず彼らが目指すのは十階層である。そこまで行くと魔法は簡単には打ち消せなくなる。

 

「できる間はこの作戦が一番いいから頑張ろうね」


「そろそろ時間なので、帰りましょうか」


 時間を管理しているハルカの言葉を聞いた二人は帰還することにした。

 受付で報告を終えると買取所で魔石を買い取ってもらった。その値段は以前の倍以上になっており、そこからもサポーターの重要さが伺える。


「じゃあまた明日もよろしくお願いします」


「よろしくね。……この後どうする?」


「そうだな……酒場にでも向かおっか」


 ハルカと別れた二人は狂った冒険者と初めて会った酒場に向かった。あの事件は冒険者の記憶から風化していき、いつかは忘れられるだろう。しかし二人はこの酒場に来る度に記憶が蘇る。二人はあの戦闘を胸にダンジョンに挑んでいくことになる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【あとがき】

これにて一章が終わります。第二章は『第二章 オークナイト編』になります

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る