第8話 サポーター
グレイウルフとの戦闘はイレギュラーの集団ゴブリンに比べ厳しいものでは無かったので、単体で居るグレイウルフに狙いを定めて戦闘を続けることにした。
その後は数えるのが面倒くさくなるほどグレイウルフと戦い続けた。最後の方は流れ作業のようにグレイウルフの攻撃を受け流し、手の空いてる方が首を切り落として戦いを終えていた。今では一人だけでもグレイウルフに勝てるだろう。
「そろそろ帰ろうかルナ」
「そうだね……魔石も予備の麻袋にも満杯になったし、ドロップだって通常の牙はもちろん珍しい狼爪も手に入ったしね」
***
二人は何事もなく地上に戻ってくることが出来た。しかし地上に上がってきたときに声を掛けられた。声を掛けてきた相手はダンジョンの入口に無数にいるサポーターたちの一人だ。
サポーターとは荷物持ちを初めとした雑用を仕事とする冒険者のことだ。サポーターをやる理由としてはお金が無いのだが、冒険出来るほどのステータスを持たない弱者がなる仕事なので、命を掛けて魔物と戦う冒険者たちからは見下されている。
「あの!サポーターを雇いませんか!」
「サポーターですか……どうする?」
「そうだね……今のままだと一階層が限界だと思うから雇うのはいいと思うよ……けどまあ信用に値する相手ならね」
「私は冒険で信用されるように頑張ります!!明日もこの場所に居るので、雇って頂けるのなら声を掛けてください!!」
「じゃあまた明日ね」
***
「裏表のなさそうな人だったけど……どうする?」
「うーん、私としては身元の分からない人を連れてダンジョンに潜るのはちょっと危険な気もするけど……これ以上先に潜るのが難しいのも確かなんだよね」
「なら明日お試しで潜るのがいいかな?」
実力としては先に進んでも大丈夫なのだが、魔石を持って帰ってくるのは難しいため、実質一階層が限界となっている。
だがサポーターが着いてくるとなると効率が格段によくなる。サポーターに探索で得たお金を割合で渡すため損しているような気もするが、サポーターが居るだけで何倍もの魔石を持って帰ることが出来る。
「サポーターですか?サポーターを生業としている人なら調べれば出てくると思いますけど名前は聞きましたか?」
「あっ、聞いてなかったです。でもスタイルの良い女性でした」
「スタイルのいい女性……あー、ハルカさんですね」
サポーターを雇うかどうかを悩んでいた二人は、冒険者について詳しいギルドに所属しているリリムに尋ねることにした。
ホルスがサポーターの女性のことをスタイルのいい女性と言った瞬間、場の空気が冷えたように感じられたが、当の本人は一切気づいて居らず話を続けていた。
スタイルのいい女性でサポーターをやっているのは、リリムの知るサポーターのなかでは一人しか居なかった。
「ハルカさんですか?」
「一時期は旅団に入っていましたが、今はフリーの冒険者ですね」
「フリーの冒険者って居るんですね」
「まあサポーターはかなりの数居ますからね。有能なサポーターは強い旅団に入っていますが……たまに縛られるのが嫌いな有能な人も居ますので、試験的に雇ってみるのはいいと思いますよ」
サポーターの善し悪しは、性格のステータスの組み合わせ、そしてスキルの有無だ。性格はどんなに強い冒険者でも仲間にしたくはないだろう。そしてステータスは筋力と速度を高く持つサポーターが良いとされている。理由としては筋力は高ければ高いほど沢山の荷物を持つことが出来る。速度は冒険者の速さに追いつけるからだ。
スキルはどんな物だろうとありがたい。ただデメリットのあるスキルは嫌悪されてしまうが、デメリットを持つスキルは滅多にないため気にする必要はあまりない。
「私はいいと思うけど、ホルスはどう思う?」
「僕もいいと思うよ。あの人は悪い人ではなさそうだったし」
「もし揉め事等が起こったら教えてくださいね。旅団所属ではない冒険者相手ならこちらから警告を出すのが簡単ですので」
「ないと思うけど心に留めときます」
二人はリリムに報告を終えると本拠地(仮)に帰宅した。夜まで時間があるので、二人は街を散策することにした。
この都市に来てまだ日の浅いホルスに配慮した結果、ルナが案内することになった。
「この街は冒険者中心の街だから、娯楽らしい娯楽がないんだけどね……あっ、あっちは行っちゃ駄目だよ」
「やっぱり、冒険者たちはダンジョンに潜るのがメインですもんね。あっちには何があるの?」
「夜の街って言えば分かるかな?俗に言うふうぞ――」
「言わなくて大丈夫です!!……女の子があんまりふう……なんて言わないでください」
夜の街はとある旅団によって管理されている街である。そこの団長の実力単体では薔薇の騎士団団長のローズに迫る物があるとの評判であった。
それでも旅団ランクで上位に来ない理由はその旅団の審査基準が美貌だけなため、実力をそこまで持たない者も多く在籍しているためだ。
「あっちの方行きましょう!!」
「敬語に戻ってるよ。まあそういう話は恥ずかしい年頃かな?」
「ルナだって同じくらいでしょ!!」
「私の父は冒険者だったからそういう話は慣れているからね」
夜の話をされて恥ずかしくなったホルスは、夜の街から離れるために街の中心へと向かって行った。
街の中心ともなるとダンジョン探索を終えた冒険者たちが多く居るため少しだけだが治安が悪くなっていた。そして運悪く二人は酔っている冒険者に絡まれてしまった。
「おい、てめぇ女連れかよ。いいご身分だなァ!!弱っちそうなくせして」
その顔はどこかで見覚えのある顔だった
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