第2話
通常、生徒を管理し、取り
生徒たちの小説を読み、それを評価し、
もっとも、彼らが面白いと言ったものが評価されるという、権力主義というわけではない。それでは
もちろん——その立場に
彼らはあくまで、順当で、正当な読者である。
無論、生徒によって好んで読むジャンル、
そして、そんな学園内において特別な位置に存在する彼女、早乙女京子は——全校生徒から〝
〝
その文字に、呼称に、詳細な説明は付いて回らないが——だが、大抵の場合、二つ名を見ればそれがどんな生徒か分かる。それくらい洗練されたものだけが、生き残る。
そしてそれとは別に、彼女には生徒会役員としての【
二つを混ぜて語るのであれば——『幸せな文学少女』である。
本を読むのが好きで、幸せで、とにかくずっと読み続けていたい。
本が、物語が、小説が——ただ、ただただ好きなだけ。それ以上でも以下でもない。
狂信的なまでに、物語の世界に
時間があれば本を読み、
故に、〝
故に、【
と——そう呼ばれている。
「じゃあ、早乙女先輩を満足させる小説が書ければ、俺は入部出来るんですね?」
「いやいや、いやいや。字木一年、お前、話聞いてたか? 入部は許可するよ。入部は許可するが——季刊誌への
「傷付きました。
「そうだな。
字木は、部室内を見回した。部室と言っても、特別な機能が
「……ええ、入るつもりです」
「よろしくお願いします。新入部員、大歓迎です、字木くん」と、早乙女は嬉しそうに言って、字木の手を取る。「私が入部してからというもの、【
「季刊誌の発行回数が少ないのは、早乙女先輩が許可しないからでは……?」
「そんなことないですよ。だって、みんな
ああ——字木は
学者に対する知識が
『もしもある瞬間における全ての物質の
つまり、コインを投げ、その落下速度と回転回数を完全に
そうした
であれば——過去の経験から、読書体験から、
こうなった方が面白い、という、定義を出来る人間がいるとしたら——
そんな生徒を、〝
「……俺がやります」と、字木は言って、早乙女の手を握り返した。歓迎のボディタッチを、
「いやいや、いやいや。字木一年。お前、まだ分かってないな。早乙女は別に、喜びやしねえよ。喜ぶ小説なんてないんだ。
「ああ——そうでした。そうですね。じゃあ俺は、
「ありがとうございます。はい! 嬉しいですね、小説を書いてくれる部員が増えるのは、とても喜ばしいことです」早乙女は嬉しそうに言ったあと、少しだけ表情を
「私は小説が書けるのでー」と、
「それでも
「よろしくお願いします。
と、早乙女は言って、
「じゃ、じゃあ……とにかく、俺は今日から入部ということで……いいですか」
「ああ、構わねえ。伝統的に、うちの学園には入部届やらは存在しない。入ればそれでいい。嫌になったら抜けりゃいい。退部届も存在しない。まあ、表の世界の出版業界と似たようもなもんだ。
「——わかりました。よろしくお願いします」
「よし、覚悟が決まったんなら、
「ああ……どうしたらいいんでしょう。そもそも、皆さんどうやって書いてます?」
「んー? いや、別に自分の好きなようにしたらいいぜ。まあ、
「欲を言えばメカニカルキーボードの搭載されたノートパソコンがあればいいんですけどね」と、烏島は口を挟む。「まあ書ければなんでもいいです、私は」
「俺はデスクトップ派——もとい、独立キーボード派だ。で、早乙女は——」
「私はMacだねー」
「なるほど。いや……そもそも、俺は小説を書いたことがないので、いまいち分からなくて」と、字木は言った。「なので、特にこだわりはありません。備品があるというなら、それと同じで大丈夫です」
「そうか。分かった、じゃあその辺の申請の仕方を教えて——ん? いやいや、いやいや。お前今、なんつった? 小説を書いたことがないって、そう言ったか?」
「はい。あ、いえ、正確に言えば——小説を
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