第2話

「おおおぅぅぅはよおおぅぅ!」

「うわっ、、、ってジョーか、、、」

俺は1人の登校に昔から慣れていた。だから友人と共に歩くのには憧れがあった。

「相変わらずすごい声量だな、、、」

「おう、まあな!毎日の挨拶は大事だしな!改めて、おはよう、S!」

「ああ、おはよう、ジョー」

なんだか新鮮だな、誰かと一緒に学校まで行くなんて。

「S?なんだか目元にクマがあるな。寝付けなかったのか?」

「あ、ああ。ちょっと考え事を、な」

嘘はついていない。

「そうか。どうやらお前は対人関係と言い、物事を深く考えすぎる傾向にあるようだ。あまり前のめりになり過ぎるなよ」

!そうか、ジョーは人をよく見ているんだ。どうりで人付き合いが良いわけだ。

「なあ、Sは何か部活には入っていないのか?ちなみに俺は帰宅部だ!だが、ひっきりなしにいろんな部から声がかかる。だからちょくちょくお助けとして一時的に部に入ることがあるんだ。流石、俺!頼られてるなぁ!」

「お、俺も帰宅部だ。まあ入るとしても文化部になるだろうけどな」

するとジョーは少し考えたような表情を浮かべ、、、

「よし、S!お前と同じ部に入ろう!そうと決まれば今日の放課後、早速校門前の大樹の前に集合だ!」

「お、おう、、、」

ジョーは行動力があるな、、、


俺たちは予定通り、放課後に大樹前に集まった。

「よし、お前の希望は文化部だったな!まずは美術部だ!」

「な、なあ、ジョー。俺、絵はあまり得意じゃ、、、」

「S、俺の直感だが、お前は天性の才能の持ち主だ。俺が言うんだ、間違いない。だが、その才が何の才かまでは分からない。だから、これからお前の才を探しに行くんだ!」

きっとジョーなりに俺を立ててくれているのだろう。正直恥ずかしかったが同時に嬉しくもあった。初めての友達がジョーで良かった。

「タノモー、タノモー!」

「うわ、、、ってジョーじゃないか。今日はどうした?」

ロングヘアーの青年が顔を出す。

「お、部長殿ではないですか!」

どうやらジョーは美術部の部長と知り合いのようだ。

「実は俺はこいつ、NSと一緒に部活に入ろうと思いましてな!今日はぜひ、体験入部をしたくて参った次第です!」

「おお、そうかそうか。それなら、N君、手始めに君の絵の腕を見せてくれ。そこのリンゴをデッサンするんだ。ああ、ジョーの腕前はもう知ってるから大丈夫だよ」

促されるままに筆を握り、束ねられた毛を紙に当てる。


数十分後、、、

「で、出来ました、、、」

「ふむ、、、」

部長は少し間を置いてから顔を上げる。

「良いんじゃないか?経験がないにしては出来がいいぞ。きっと君には秘めた才能があるな」

「あ、ありがとうございます!」

「よし、この部のことは何となく分かったな!じゃあ、次は吹奏楽部だ!」

俺はジョーに腕を引っ張られ、次の目的地に向かった。

「あ、星梅半クンじゃん、今日はどしたの?」

メガネをかけた少女が声をかけてきた。

「副部長殿、今日はかくかくしかじか、、、」

こ、こいつ、吹奏楽部の副部長とも知り合いなのか。顔が広過ぎる、、、

「おー、それならあそこに置いてあるトランペットを使って、私のレッスンを受けてみない?」

「は、はい!よろしくお願いします!」


数十分後、、、

「ふむふむ、未経験と言えど、まあまあな腕前じゃないか。大したものだよ」

「おお、副部長はあまり人を褒めないから、お前には本当に才能があるのかもな!じゃあ、次は、、、」

俺たちはその後も文化部を片っ端から回った。そして最後に訪れたのは、、、

「S、この部は趣味部と言って、自分の好きなことを仲間と一緒に探す、といった主題だ。ここは今年から出来た部でな、、、」

「あ、星梅半君、こんにちは」

ロングヘアーが眩しい美少女が部室から顔を出す。

「実はな、今日はかくかくしかじか、、、」

「ふむふむ、入りたい部を探しているんだね?それならうちがオススメだよ!堅苦しい話は抜きにして、まずは入って入って!」

俺たちは促されるままに部室に入る。

「初めまして、私は紫蘇入鹿(しそいるか)。ここの副部長だよ!気軽にイルって呼んでね!」

「お、俺はNS、好きに呼んでくれ」

「俺は星梅半譲!俺のこ、、、」

「星梅半君のことは知ってるから大丈夫だよ」

「しょんぼり、、、」

俺たちが話していると、出っ歯が特徴的な、メガネをかけた少年も会話に入って来た。よく見ると側頭部にスイッチのようなものがくっついている。

「き、君たちのことは、会話の内容でおおよそ把握しました!この部に興味があるなら、是非部長であるこの僕、ディスカバリー前田の話を、、、」

「部長の話は長いからダメ!」

イルが前田の話をぶった斬る。

「しょんぼり、、、あ、僕はディスカバリー前田って言います。し、しがない帰国子女で、この部の部長です」

「なあ、イル、前田、この部には他にメンバーはいないのか?」

人数が2人しかいないので気になって聞いてみた。

「い、いい質問ですね、N君。実はもう1人メンバーがいるのですが、今日は遅いですね、、、」

「いるよ」

突如として視界に坊主頭の少年が入って来た!

「うわ、、、って直(なお)君か、脅かさないでよ」

「済まない、紫蘇。とは言っても、俺も好きで脅かしてるわけじゃないんだ。それは理解してくれよ?それはそうと、お前は?星梅半のことは知っているが、、、」と直と呼ばれた坊主はボソボソと喋る。

「俺はNS。今日はこの部を体験したくてジョーと一緒に来たんだ」

「そうか、俺は線直(せんなお)。そういう話なら是非ゆっくりしていってくれ。ああ、お茶でも出そうか?」

「せ、線君は移動に制限があるから僕が出しますよ」

「移動に制限?」

前田の言葉に俺は首を傾げる。

「ああ、一応これは話しておこうか。俺は進もうとすると一瞬で突き当たりまで移動してしまうんだ。まあ、移動時間が圧倒的に短縮されるから便利かもしれんが、障害物や壁などがないと止まれないんだ。いやあ、難儀難儀、、、」

なるほど、さっき急に現れたのはその性質のせいか。

「そうだ!星梅半君は何でもこなせるオールラウンダーってイメージがあるけど、その友人であるS君はどうなの?何か好きなこと、ある?」

「俺は、、、」

イルの質問に対し、言葉が出そうになったがすぐに詰まる。特に思い浮かばない。

「、、、好きなことは自分でも分からない。でも、それを誰かと探せるなら、、、俺はそれを嬉しく思えるだろうな」

「じゃあさじゃあさ、うちにおいでよ!今は部員も3人しかいないから大歓迎だよ!」

イルの満遍の笑みを見ていると心が穏やかになる。その日、俺とジョーは趣味部への入部を決意するのだった。

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