間話 ロキ・マグニ・プロメテウス
ロキ・マグニ・プロメテウス。
百を超える多種族によって統治、および自治で成り立っているオルガ評議国のとある村に産まれ落ち、そして捨てられた人間族の男の子。
彼が捨てられた理由は……魔法に関する複数の貴重な才能を持ちながらも魔法才能が一つもなく産まれた忌子、
不吉の象徴、神に見放された存在と言われる
オリオン家の様に別の才能があれば気にしない家ある。近くにいると不幸が映ると、不吉なものとして差別の対象とする街もある。
そして、ロキが産まれたその村は……
だから、産まれてすぐ捨てられた。遠い山の人里離れた森奥深くに。
本来ならば魔物に食べられて、もしくは空腹で、もしくは寒さで凍えて。ロキの人生はそこで終わるはずだった。
しかし、そうはならなかった。
偶々運良く、本来ならば人が通らないその森に人が通ったのだ。
山森人族の女が。
山森人、通称山エルフと呼ばれるオルガ評議国のとある地方の火山地帯に住み、大陸で唯一他の人族と共存するエルフ達。
ポルネシア王国北方の森エルフ達は例外なく風魔法を使えるように、火山地帯に住む彼らは例外なく火魔法を扱える火魔法のスペシャリスト達。
そんな彼等にロキは拾われた。
ロキ。
一歳にも満たないにも関わらず、理解できないはずの言葉を理解した様な顔で相槌をうつその赤ん坊に、彼を拾った山エルフの女はそう名付けた。
そしてその後、火魔法のスペシャリストであるエルフ達すら一目置く天才として頭角を表すことになる。
特にロキが優れていたのは、魔力を練る速度とそれを放つ速度。異常としか思えないほどの尋常ならざる魔力故に、山エルフ達の中でさえ並ぶものがいないほどの速射性を誇っていた。
ロキ・マグニ。
神鬼バンイの側近、夜鬼ヤシャを素手で殴り殺したロキを見た育て親が名付けた名前だ。
元々血の気は多くとも社交的な山エルフであるが、それでも人間族の、しかも出自のわからない
捨てろとは言われない。出てけとも言われない。話しかければ答えてくれる。
だけど仲間じゃない。
そんな彼等との距離感はわずか八歳のロキがヤシャを嬲り殺した時、無くなったといわれている。
力こそ全て。強さこそ全て。
神鬼バンイに生贄を捧げ続けるという苦渋を飲み続けた大地も焦がす憤怒に燃えた山エルフ達の掟だった。
ロキ・マグニ・プロメテウス。
十二年。その年にはもう防御魔法、補助魔法において、エルフ達の中でさえ並ぶ者はいないとされる異端児となっていた。
そして、その若さであらゆる英雄達を討ち倒し、万を超える兵を薙ぎ払った怪物、神鬼バンイを討ち取った。
無詠唱を持ち、魔力を練り魔法を放つ速度はオルレアン大陸最速とまで謳われるタイマン最強の魔導士。膨大な魔力と高いステータスによる高機動の近接戦闘をこなす人間族の少年。
そんな彼にロキの育て親は敬意と愛情を込めてロキ・マグニ・プロメテウスと名付けた。
オルガ評議国の人間は、彼をこう呼ぶ。
壊神ロキ。
それが超大国オルガ評議国に産まれた神童ロキ・マグニ・プロメテウスだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます