第3話 謎の美少女参上!!

 それから時間はいつも通り過ぎていった。


 俺は陰キャのお手本としてクラスの空気となり、誰にも話しかけることも、誰にも話しかけられることもなかった。まさに空気。


 ……正直、羽村から何も言ってこないのは逆に恐いのだが……俺から話しかけるのなぁ。

 ……今朝のストーカー事件は俺の妄想、幻覚の可能性が大いにある。


 だってなぁ、クラスの上位カーストである羽村が、ボンクラな俺のことをストーカーするメリットがない。別に俺は金持ちでも何でもないし。


 だが……授業中とかになんか後ろの羽村の席から邪な視線を感じる……なんかこうねっとり絡みつくような……。


 き、気のせいだよな……。


 そんなことをモンモンと考えていたら放課後に――。

 俺はいつも通り1人で帰ろうとする……。


「あっ、石神君」


「…………!!」


 その時、羽村に話しかけられる。不安と期待で俺の鼓動がドクンと高鳴る。


「ばいばい」


 俺に笑顔で手を振る羽村。

 その可愛さに思わず見とれてしまう……だって、こうして挨拶されたの初めてだし……。


「あ、ああ、さよなら」


 俺はそれだけ言うと、その場を後にする。

 正直に言うともっと話したいが……今朝の件も俺の勘違いだったら恥ずかしいし、何より目立つのが嫌だしな。


 羽村は俺と会話を終えると女生徒と話し始めたし……まあ、帰るか。

 挨拶できただけでもいい日と言えるだろう。


   ◇◇◇


 俺はちょっといい気分で校門に向かい、最寄り駅に向かい歩きはじめ、近くのコンビニで他校の可愛い制服姿の女子を見つけた。


 容姿的に中学生か……?


(……小動物系で可愛い子だな。ん……? なんかあの顔、誰かに似ているような……誰だっけ)


 そんなことを考えながら歩いていると、ふとその女子中学生と目が合う。


「あ……」


 女子中学生はハッとして俺のことを見つめてくる。

 えっ……見てるのが気持ち悪かった? えっ……俺何かした?


 と、混乱しているのもつかの間、女子中学生はたったっと、駆けて俺の元へやってくる。


「…………」


「…………」


 そして突然、互いに見つめあう形になる。

 170センチの俺と25センチぐらいは離れており、上目遣いで見つめてくる顔はとても整っていて、今時の女子中学生らしさも服装や鞄につけている小物から感じることができた。


 まあ、それと顔立ちが幼いので服装によっては小学生ぐらいに見えるだろう。


「え、えっと……」


 当然陰キャの俺にこんな可愛い子の知り合いはいない。なのでとてもいたたまれない気持ちになるのだが……。


「うん……間違いない……」


 女子中学生は何かを確信するように頷く。その様子はどこか大人びていて、顔とのギャップがまたなんとも可愛らしい。


「あなた……先週の金曜日に私を助けてくれた人ですよね?」


「えっ……」


 金曜日……? 金曜日って、学校終わった後にそのままゲーム屋に寄ったな。


 ……その時にマスクと帽子を被った少女が柄の悪い連中にからまれていて、助けたっけ……。


『警察の人こっちです! 喧嘩です!!』の奥義を使って……あれ一度やってみたかったから、気持ちよかった……。


「いや……」


 目立つのが嫌だったから、あの時は速攻で姿を消しただけなんだけど……。

 それにしてもすごい偶然だな……。


「あの時、お礼言えずに別れちゃったので、私……あなたのことを探してたんです。やっと見つけらました。この前はありがとうございました!」


「えっ……? 探してた?」


(いや……助けたのは土曜で今日は月曜……それで名乗ってもいないの俺のことを見つけたの?)


 俺が疑問に思うと同時に女子中学生の瞳の色彩が濁る。

 それは今朝見た羽村の顔に似ている気がした。


「うふふ、とある情報から先輩の学校はすぐにわかりました。だから、校門が見えるここにいれば会えると思って、ずっとここにいました……朝会えなかったので8時間ぐらい。それと先輩と同じ学校に通う『身内』に聞いたら、ゲーム好きということを聞きました」


「…………えっと、今俺最高にモテてる?」


 漫画でしか見たことない展開にとっさによくわからないことを口走ってしまう。

 すると女子中学生は急な真顔で……。


「いや、何言ってるんですか? 私はお礼を言いたかっただけです。私、そんなに軽い女じゃありません。そういう短絡的な思考はどうかと思いますよ。今のところ先輩に1ミリも恋愛感情は持っていません。私は年収1000万の男がいいです」


「…………言い過ぎだろ? 俺のメンタル脆さを舐めるなよ? 泣くぞ」


 ガチトーンで否定された。

 いや、これ俺が悪いのか……?

 8時間も待ってた、なんて言われたら、勘違いもするだろ? お礼がしたいだけなら、どんな執念深いお礼だよ。


「おほん、時に先輩。先輩ってゲーム好きなんですよね? それもかなりのレベルの……『お姉ちゃん』の許可も得ているのでこれからゲームセンターに行きませんか?」


「??? お、お姉ちゃん? 許可?」


 俺の頭に疑問が浮かびまくる……。それに答えるように女子中学生はうなづき、またもや大人びた口調で話し始めた。


「ああ、お姉ちゃん、私に対して超過保護だから、本来であれば男子と遊びに行くなんて絶対に許してくれないんですけど……『恭弥たんなら大賛成! 私の大好きな2人のカップリング……えへへ、はぁはぁ』とか、言ってました」


「…………」


 えっと、つまりどういうこと?


「ああ、名乗るのが遅くなりましたね。私は『羽村未海(はねむらみう)』です。先輩の後ろの席の『羽村友里奈』の従妹です」


「えっ……うん、誰かに似てると思ったら羽村だったか……」


(ん? 待てそれなら『恭弥たんなら大賛成! 私の大好きな2人のカップリング……えへへ、はぁはぁ』とか言ったの? ……今朝のことが一気に現実味を帯びてきたな……)


「うふふっ、『死神』に好かれた同士仲良くしましょうね、先輩♪ それで行きますか……? ゲーセン」


 またもや何かを期待するように上目づかいで見てくる。


「…………行く」


「うふふ、私の誘いに乗るなんて、先輩いい趣味してますね。それじゃ、レッツゴー!」


 羽村従妹は悪戯っぽく笑う。

 怪しさ満点だが、美少女の誘いを断るほど、俺はリア充をやってない

 友達(仮)とゲーセン……ボッチの俺には夢に見たシチュエーションだ!!


 相手ロリだけどな!!

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