第14話 呼び出しからの……

 下駄箱に入っていた手紙。


 はじめてもらったラブレターというやつに僕は驚いた。その差し出し人の名前にも。


「どうしたのイヨリちゃん」


 僕の表情が曇ったことをすぐさま察した咲輝ちゃんが心配そうに尋ねてくる。


「うん、その、ラブレターなのかな? 手紙が入ってて」


「へっへー、今どき古風だね。そっそれでどっとうするの?」


 何故か手紙をもらった僕より動揺している咲輝ちゃん。もしかしたら僕が変な輩に騙されていないか心配してくれているのかもしれない。


「うん、どんな相手でもちゃんと答えは伝えるつもりだよ」


「えっ、付き合うの?」


 早とちりしたのか咲輝ちゃんが目をクルクル回して驚く。


「いや、いや、それはないよ」


 僕は慌てて否定すると、思わず出来た放課後の用事に少し憂鬱になる。

 ただ咲輝ちゃんは関係ないので今日は先に帰っていてもらおうと思い、その事を伝える。


「でも、今日の放課後会ってくるから、咲輝ちゃんは帰ってても良いよ」


 そんな僕の言葉に咲輝ちゃんは力強く首を横に振ると僕を真っ直ぐ見て言った。


「大丈夫、待ってるよ」と。


 そんな咲輝ちゃんの心遣いが嬉しくなりお礼を告げる。


「ありがとう咲輝ちゃん。まあ、そんなに長くならないと思うけど……」


 僕としては彼と友誼を結ぶには因縁がありすぎる。万が一だけど謝罪とかなら少しは考える余地はあると思うけど手紙の内容からそういった事ではないだろう。


 そんなやり取りを朝にし、気持ちを切り替えて何時もの日常を過ごす。


 そして、お昼は何故か姉さんが僕のクラスまで来てくれた。


「伊依。今日は一緒にお昼を食べましょう」


「やあ、イヨリ君、僕も一緒で良いかな?」


 合せて生徒会長の真幌瑠夏さんも一緒に教室に現れたため、一斉に女子から黄色い悲鳴が上がる。


 一緒に食べる予定だった咲輝ちゃんは特に動じていなかったけど、二本松さんは分かりやすくアタフタと慌てていた。


 そこに安藤さんと伊藤さんが絡んでくる。


「ミレイさん、うちらもよろしいですかー」

「ミレイ先輩、会長ー、ちわっす」


 どうやら安藤さんと伊藤さんはお姉ちゃんと知り合いらしい。


 姉さんは二人を快く迎え入れた結果、皆でお昼を食べることになった。


 ワイワイと楽しくお昼を食べる僕たち、中学生の時には無かった風景。


 終始姉さんは僕を温かい目で見守ってくれていて、瑠夏さんは終始僕をからかって楽しんでいた。


 それを見ていた二本松が『百合なのに薔薇の香りが』と良く分からないこと呟いて、楽しげに安藤さんがそこに絡んでいき、伊藤さんがおバカな発言で笑わせる。

 でも、咲輝ちゃんだけは少し元気が無い様子で少し心配になった。


 そんな賑やかなお昼も終わり、姉さん達も帰っていった。その後クラスから盛大なため息が漏れ出ていた。

 姉とはいえ、教室で上級生と食事を取ったのは考え無しだったかもしれない。きっと皆を緊張させてしまったのだろう。


 ただ姉さんが来てくれたお陰で少し憂鬱だった放課後に対する気持ちが少し楽になった。


 そして放課後、咲輝ちゃんが心配そうに僕を見つめてきたので、軽くウインクして「待っててね」と伝え彼が待つ屋上のテラスに向かった。





 イヨリちゃんが私を安心させるためにウインクをして決戦の地に向かう。


 相手はあの因縁の東元なのは知っていた。

 本当は先んじて排除するべきかもしれないけど、あの時のミレイさんの言葉を思い返し、踏みとどまった。


 きっと今のイヨリ君なら自らの力で道を切り開くだろう。


 でも、相手は屈強な男だ、逆上して何かするかも分からない、なのでいつでも助けに入れるようにはしておく。


 こっそりとイヨリちゃんの後を追いかける事にすると、何故か安藤達と親衛隊の皆も付いてきた。


「なんでアンタ達がいるのよ」


「当たり前じゃん、天使ちゃん、あのテニプリ野郎から呼び出されてるんだよね。心配するじゃん」


 安藤の言葉に他の皆も頷く。


「ほら、何かあった時にさ守るのがさ、あーしら親衛隊。体を張って守らないとだし」


 安藤の腰巾着の伊藤までそう言ってくる。


「……わかった。不穏な空気になったら飛び出すけど、それまでは気取られないようにね」


 そう私が釘を刺すと一斉に頷く親衛隊の面々。


 こうして私達もことの成り行きを遠目で見守る為、離れてイヨリちゃんの後に続くのだった。


 

 

 

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