其の三一 オレ、話し合ウ。
彼は一人で路地を歩く。
街灯が壊れて薄暗い為、道に迷いやすい者は月明かり以外の光源を持たなければならない。
薄汚れたアスファルトの剥がれかけた所をつま先で蹴り、彼は進む。
右へ左へ、そして右へ。
時には少しだけ塀の上を通ったり、ゴミ箱を踏み台にして上へ登る。
「………!」
と、サーカスさながらに塀の上を歩く彼の先に、魚を咥えた一匹の猫が居た。
その首には輪がなく、恐らく野良で生きてきたのだろう。
彼はジリジリと後退し、猫は少しずつ前へと進む。
その場を謎の緊迫感が支配した。
が、猫が塀から飛び降りる事で、何事もなくその場は収まった。
「………はぁ」
彼は胸を撫で下ろす。
野良猫と偶にすれ違う時には、相手の行く先を考えて、そちらを開ける。
些細な事で騒ぎを起こすと後々面倒だからだ。
元々彼は隠密行動が得意なタイプでは無く、そちらは彼の仲間の方が得手としているが、それでも通い慣れた道だ。
いつもなら手際良く進めるのだが、今日は彼自身に少し落ち着きが欠けていた為、猫の方も彼を警戒したのだろう。
さて、そうして辿り着く先には何があるか、と言うと。
往々にして、何でもないような所にこそ宝石は隠されているものだ。
これは彼の仲間の一人が語った内容で、彼の目的地をそのような僻地に設定したのもそいつである。
確かに第三者に発見される恐れは少ないが、それでも通うのに面倒な事に変わりはない。
特に彼の場合はそこで寝泊まりをしているため、日々の買い出しや銭湯に出掛けたりすることが面倒で仕方がなかった。
しかし隠密性と利便性を天秤に掛けた時、結局より重いのは前者の方で、彼が目的地を移動させる事はなかったが。
いっそ瞬間移動でも出来たら、と彼が願うのはいつもの事であった。
「………」
かれこれ路地裏に入ってから数十分が経ち、そろそろ目的地周辺に差し掛かってきた頃。
彼の目の前に、人型の影が浮かび上がった。
突如として現れたそのシルエットに彼が驚くことは無い。
彼からしてみれば、見知った人物が、予想の付く場所、タイミングで現れただけの話であった。
どうやら姿を現す事が目的だったようで、彼の前の影は特に何もすることなく、路地の先へと入っていく。
影の正体は彼の仲間の一人であったが、油断大敵という事を忘れさせまいという意識の高さのせいか、心臓に悪い事をする。
彼は、こと感情をコントロールすることに関しては他の追随を許さぬ技術を会得しており、常に平静を保つ事は彼にとっては容易いことである。
しかしそのような技術を持たない者は、毎度毎度幽霊でも見たかのようなリアクションをする。
それもあながち間違いでは無いのだが。
彼の目的地とは何か、という話に戻そう。
もっとも、百聞は一見に如かず、実際の光景をお伝えするのが最良であろう。
彼の目の前には、無愛想なコンクリート製の扉に掛かる、《
彼が頭目を務める組織の本拠地………言うなれば、アジトである。
先程お伝えした、本拠地決めの際に駄々をこねて押し通した構成員は、そう呼んでいる。
周囲には街灯の一つも無く、看板にあしらわれた無数の宝石片だけがキラキラと輝いていた。
彼は、自分の記憶を頼りにインターホンを探し、そしてボタンを押す。
元々正規の業者に頼んで施工してもらった訳ではない為か、最近感度が悪いのが玉に瑕である。
しかし今回はキチンと作動したようで、扉の鍵が重苦しい音を立てて開かれた。
周囲に人影が無い事を確認した後、彼は中に滑り込む。
「………ヨウ。遅れちまったナ。すまンすまン」
中は殺風景なコンクリート部屋、ではなく、意外にもフローリングがあり、座り心地の良さそうなソファが置いてある。
他にも様々な家具が置いてあるが、それら全てに、既製品を現す札は付いていない。
ソレを嫌う者が外した訳で無く、最初から既製品ではない為に付いていないだけの話だった。
ちなみにこの部屋の改造と家具製作を担当したのは同一人物である。
戦隊物の秘密基地さながらに盛り沢山の仕掛けが施されているこの部屋であるが、作り手の熱意に反比例して利用者は少なかった。
それもそのはず、ああいった演出の多くは、時間を取るものの、やっていること自体は然程でもない。
加えて、ここの利用者は7割5分は実利主義的な考えの持ち主で、普通にできる事をわざわざ時間をかけてまで演出する浪漫を解さない。
結果、作り手が一人で遊ぶ、という自己満足的な悲しい光景が出来上がっていた。
そして、様々なボタンやレバーがあしらわれた扉を普通に押して開き、そちら側から若い男が歩き出てくる。
「問題無い。多少遅れた所で我々の計画に変更は無いのだろう?」
男は入って来た彼に問う。
全身を迷彩柄の服に包み、フードを被り、色の剥げかけたトレッキングシューズを履くその姿は、不思議と迫力に満ちていた。
彼が出て来た男を見ていると、ポケットに突っ込まれた男の手が握られたり解かれたりしている。
口調こそ落ち着いて聞こえるが、恐らく早く暴れたくて仕方が無いのだろう。
遠足前の子供の様な様子を見た彼は、内心申し訳ない思いがしながらも、努めて何気なく迷彩の男に告げた。
「いヤ、そう言う訳でもねぇんだけどナ」
「!?」
迷彩の男の眉毛がピクリと動き、手の動きが止まる。
「すると、俺は暴れられないのか?」
「ンー、まァ、そうなるナ」
「何だ? 何か問題でも発生したのか?」
「マ、全員揃ってからナ」
困った様に笑いながら彼は歩み寄り、手を迷彩の男のフード越しの頭に置く。
それで少しは納得したのか、迷彩の男は苦々しげな様子で部屋中央のソファに座る。
それを確認した彼は、一先ずお茶でも淹れようと、キッチンへ消えていった。
ふてくされたままの表情で、迷彩男は置いてあった少女漫画を読み始めた。
あれだけ好戦的な性格で、この趣味を持つというのだから驚きである。
少し機嫌が戻った迷彩の男が取ろうとした最新巻が、いきなり宙に浮き、それと同時に漫画を掴む女の姿が現れた。
「まだ私、これ読んでないの。貸してほしいのだけれど」
サバイバル的な男の服装とは対極をなすようなスーツを纏った女。
彼女が少女漫画を手に取るその様は、一見すると仕事に疲れたOLが癒やしを求めているかの様であるが、実は現在、彼女はオフィスとは程遠い職場で働いている。
しかして動機はほとんど同じなので、疲れたOL以外でも癒やしを求めてちょっと痛い事をする、ということが立証された。
ほぼ同時刻に狐耳と鼻、尻尾を持つ少年の考えていた事は、完全なる偏見であった事が図らずもここに証明された形となった。
どうか全国の疲れたOLの方も、それ以外の方も、自分のやり方で癒やしを求めることをやめないでください。
「………断る、と言ったら?」
サバイバルな男は、喧嘩を売るようにして女に問い掛ける。
先程自分の暴れられる場所を取り上げられたので、半ば八つ当たりではあった。
その様子を見た女の方は、彼の神経を逆撫でしないように意識しつつ、頼む。
「私がそれを読めないと、続きが気になり過ぎて貴方の衣類が洗濯されないけれど、良いのかしら?」
「何故俺の服に限定されているんだ」
はぁ、と言いつつサバイバーは、読んでいた漫画に栞代わりにテレビのリモコンを挟む。
これをすると漫画が歪むので持ち主が怒るのだが、サバイバーはそれを気にする程お人好しでは無かった。
そんなに他人に汚されたくないなら、最初から自室の本棚にでも仕舞っておいて、鍵を自分一人で管理すればいい、と言うのは借りている側の言い分である。
確かにそうしたいのは山々であり、持ち主の技術を持ってすればセキュリティ万全の本棚を作るなどはお茶の子さいさい、朝飯前ではある。
しかしどうにかしてこの漫画の世界の素晴らしさを広めたい、しかし布教用を買うだけの資金は無い。
それでも少しでも宣伝をして作者様への貢献をしたい、でもそうする為には働かなければならない。
それは嫌だ。
堂々巡りの結果、持ち主は少しでも漫画家さんの意思を汲もうとして、貸し出す事に決めたのだった。
しばらくごそごそと漫画の山を漁っていたサバイバーは、同じシリーズの別巻を何冊かまとめて取り出した。
ファンの間でも伏線考察が活発に行われていた巻である。
「そっち読むなら一応こっち読んで復習しておけ。主人公の妹が………おっと、言い過ぎたか」
「………そう。わざわざありがとう。ではそちらも借りていくわね」
「応。読み終わったら感想を教えろよ」
「勿論。後でじっくりと語り合いましょう」
何処か不敵な笑みで言葉を交わすその様は正に何かの取引のようだが、話している内容は完全にヲタクのそれである。
持ち主の作戦は見事に成功したと言えるだろう。
………もしも持ち主が貸し出すことをやめればの話であるが。
持ち主は持ち主で、語り合う仲間が増えてうれしいのである。
今の時代、少しづつインターネットと言うものも普及してきているが、やはり顔を見て語らうのは、画面越しとは違った感慨があるらしい。
どの道その魅力に憑りつかれた彼は、普通に貸し出すことを続行しているのだった。
読み終わった後に感想を語り合うことを条件にして。
女が漫画の最新巻を読み始めた頃、それを察知したかのようなタイミングで現れた人影が一つ。
「………あーっ! もう読んじゃってるじゃないっすかー! 読み始める前におさらいから始めてもらおうと思ってたのにぃぃぃーーーっ!」
お察しのように、漫画の持ち主である。
ツナギを纏った体でオーバーリアクション気味に反応する彼の姿を見て、女の周辺にある漫画の山を指さしながら鬱陶しそうにサバイバーが言う。
「五月蠅い。奴は貴様の言う『おさらい』をもう既に終わらせている。俺が最低限必要だと思った巻は既に手渡して読ませてある」
「バッ! そんなこと言ったって、拙者が復習用に準備していたリストと一緒のラインナップじゃなかったら意味ないでござろーが!」
もしこの部屋の壁が、少年自身が制作した特殊防音壁でなければ近所迷惑になりそうな大声をあげて、ズンズンと歩く少年。
サバイバーが用意したと言う漫画の山をチェックしに行ったのである。
既に最新巻のおおよそ半分を越え、佳境に入っていた物語に夢中だった女は、身動ぎ一つせず、ソファに座って読み入っていた。
その隣で積まれた漫画を検閲し始める少年。
「………! これは………いや………まさか………」
その表情は驚きの色に満ちていった。
それもその筈。
「これ、拙者のリストにあるものと同じ………寸分違わず!? 馬鹿な………こんな事、ある訳が………あって良い筈がないッ!」
サバイバーが女に渡していた漫画は、全て少年が予め作っていたリストのソレと完全に一致したからである。
このグループ内で最もこの漫画に精通している自信のあった少年は、サバイバーの叩き出していた最適解に驚愕した。
畏怖の視線を向けられたサバイバーは、戦慄く少年に対して不敵に笑いを返した。
「ハ………そのくらいなら、俺でも分かる。この作品の深さが分かってるのは貴様だけ………と言う訳ではないことを覚えておくんだな」
「お前………」
少年は歩み寄る。
そして、ソファの上でくつろいでいたサバイバーに対して、一言だけ言った。
「大きくなったな」
「ああ。貴様の英才教育の賜物だろうよ」
しばしの間、二人は険しい視線を交わす。
そして………少しの時間の後、二人は熱いハイタッチを交わした。
ここからしばらく、詳しくない者にとっては謎の詠唱時間が続くのだが、それはボスの知るところではない。
しばらくして、ボスが帰ってくる。
両の手に二つづつマグカップを持ち、それぞれに予め割り当てられた絵柄に合わせ、ソファー前のテーブルに置いて行く。
手際の良さは、彼がそれを何度も繰り返してきた事をよく表している。
全て置き終わったあとには、彼は一つのバランスボールに座った。
これもまたオーダーメイド、というよりオーダーは受けないシステムなので、実は売れば相当の価値があるものを尻に敷いている事になる。
「お、さんきゅーボス」
「すまん、ボッス」
「あ、ありがとう、ボッスn………」
「待テ。その先は一端言うナ」
女がお礼を言おうとした時に、彼女がその後に何と続けようとしたか察したボスは彼女を手で制した。
恐らくその先には、『ン』が付く事だったろう。
それも少年が貸していた漫画の影響である。
あ、アス○ラのアニメ楽しみにしてます、はい。
「さテ………取り敢えず、全員居るナ?」
「見りゃ分かんだろー」
「元々現時点では我々四人しかいないからな」
「そうね。ボスの目を付けてる
先程までの、漫画の今後の展開について話し合う時のままのテンションで、構成員達が言う。
それもそうか、と、ボスは自分の発言を少しだけ後悔した。
ボスが自分の発言を顧みている間に、女が切り出した。
「それで。私達を此処へ集めたのには理由があるのでしょう?」
「そうだな。先程の話の続きをしてもらおうか」
「え? なんすかなんすか? 拙者、何も聞いてないのでござるが!?」
「あァ、まだお前にャ言ってなかったからナ」
「非道いっ! そうやってまた拙者を仲間外れにしてっ!」
「すまンすまン、忘れてタ。あト、どうせ言わなくても良いと思っテ」
「うわぁぁぁぁああああん!?」
ツナギの少年が喚く。
それを片手で落ち着かせてから、サバイバーが言った。
「で、俺達は一体何をすれば良くなったんだ? まさか今回は指を加えて見てろという事か?」
「部分的に言えば、そうなル」
「何………だ、と………」
大きくショックを受けるサバイバー風の青年。
肩を落とす彼を冷徹な目で一瞥してから、女がより深い説明を求めた。
「部分的に、でなくて具体的、全体的な話をして欲しいわね」
「あア。今から説明すル。実はナ………」
そしてのっぺら坊の男、ボスと呼ばれる彼は、仲間達に今回の作戦の変更点を伝えた。
「………以上ガ、今回オレ達がメインで動かない理由ダ」
話を聞いていたサバイバーと少年は、少しづつ落ち着きを取り戻していた。
そこで、腕を組みながらサバイバーが溜息混じりに呟いた。
「成程。愛する女の為に自らが救け出し、覚悟を表明したい、か」
「………なるほどね。確かにこの案件は私達が動くべきでは無いわね」
「そっすねぇ、頼まれてもいない拙者達が気を揉んでも仕方ないでござるねぇ」
納得の様子を見せる一同。
これで一先ず安心か、とボスが胸を撫で下ろしたときに、女が至極真っ当な疑問を口にした。
「でも………その子、大丈夫なの? 一人で行かせても問題は無い?」
それは心配だった。
以前から一人の少年の顔を見知っている彼女だからこそ言える心配。
この場にいるメンバー内において、二番目位には白九尾の彼の事を気に掛けていた。
真摯な目線を向けられたボスは頷く。
「まぁ確かニ、一人で行かせるのは心配っちゃあ心配ダ。でもよ、アイツ、訓練とは言え、あの雪女に一本取ったんだゼ?」
「………! ほぅ………」
サバイバーの眉がピクリと動いた。
サバイバーはその雪女のことを知っている。
以前に会った事のある強者から一本取った、という事は、彼の対抗心を湧き上がらせるに十分だった。
サバイバーが、今度手合わせをしよう、と決意した瞬間であった。
「え? それってそんなに凄いんすか? 拙者にも分かるように説明プリーズ?」
「五月蝿いわね、察しなさい。コイツがこういう反応するという事は、それなりに強いのよ。少しは頭使いなさい」
「ナチュラルに非道い! でも何故だろう、その冷めた眼で見られるとちょっとばかし背筋がゾクゾクするぅ!」
「「「………」」」
「………ちょ! ボケなんだから反応してほしいでござるよぅ!」
ツナギの少年がおかしな事をのたまい、それにスーツの女性か迷彩の男がキツめのツッコミを入れ、ボスは近くで笑っている。
それが彼等のスタンダードだったが故に、少年は心に大いなるショックを受けた。
しかし、何時の世も、イジりの加害者は全く心が傷まないもの。
他の三人はさしたるダメージを負ったようには見えない、と言うか負ってはいなかった。
その様子を見たツナギ少年が、奮起して言った。
「こうなったら、何が何でも新入り候補を守って、此処に入ってもらって、拙者の立場を守ってもらう他ないっすねぇ!」
「………いやァ、そいつァ厳しいんじャねェかなァ」
「? 何か言ったっすか?」
「いヤ、何でもねェサ」
目を向けられたボスは軽く首を振る。
ボスは、狐の少年が人をイジったり様々な所にツッコミを入れたりするタイプである事を知っている。
けれど、仮に彼が入団したとしても、ツナギ少年が救済されることは無いだろう、とは言えなかった。
流石に、意気込んでいる人の鼻っ柱を折るようなことは言えなかった為である。
「でもマ、守るッて意見には同感でネ。オレ等の任務はそっちにシフトしてく事になル」
「成程、そういう事か」
「あア。今回のオマエは最後の手段、秘密兵器ダ」
「フン、秘密兵器、等と………」
サバイバーの口元が、少しニヤけた。
ボスの特技を持ってすれば、些細な感情の波を感知するなど、容易いことであった。
「じゃあ決まりダ。オマエ等、異論はねェナ?」
「「「異議なし」」」
「オーケー。今回の件、賛同者多数により可決、ット」
そこまで言って、ボスはバランスボールから立ち上がる。
そしてソファーに座る三人の前、テーブル越しに仁王立ちして、尊厳を付けてから言った。
「今回の任務内容の確認ダ。まず最初ニ、絶対にアイツを殺させねェ事。次ニ、アイツに見つからねェ事。最後の最後、どうしようも無くなった時にハ、俺達の手でお嬢ちゃんを救け出ス」
全員が、コクリと頷く。
それを確認したボスは、目の前の三人を順に見た。
「[アメジスト]、オマエはアイツの傍をマークしててくれるカ?」
「ええ、容易いことよ」
[アメジスト]と呼ばれた女は髪を掻き上げながら口をニヤけさせる。
仲間の信頼が何よりも嬉しい質であった。
「で、[ルビー]、オマエは現場待機ダ。出来るナ?」
「勿論だとも。俺に全て任せておけ」
[ルビー]、と呼ばれた男は被っていた迷彩柄のフードを外す。
その下には極めて野生的な笑みが浮かんでいた。
「んで[エメラルド]、オマエは、此処で待機、オレ達全員のオペレーターを頼む」
「へいへい。ま、いつも通りにやるだけでござるよ」
これからの仕事量を考えて、曲げやすいツナギで思わず背筋を曲げ、息を吐く[エメラルド]。
彼の仕事なしでは、この団の活動の多くは実現できていないだろう。
「うシ。んじャオレ………[ダイヤモンド]ハ、アイツの近くで[アメジスト]の補佐に回ろウ………異議ハ?」
「「「無し」」」
三人の様子を見て、コクリと頷く、顔の無い[ダイヤモンド]。
「それじャ、決行は今日の二十時、探偵事務所の近くの山ダ………じャァ、決して遅れないように。解散!」
「「「応ッ!」」」
三人は素早く立ち上がり、準備をしにそれぞれの部屋に向かう。
その様子を見たボス、[ダイヤモンド]は、空いたソファーに座り、天井を見上げて、大きくため息をついた。
………ボスの中には、此度の計画が失敗するビジョンが見えない。
しかし、何故だろうか。
「………杞憂で住めば良いんだがナ」
どことなく嫌な予感がするのは………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます