第19話 小学校時代

 小学3年生の駒井優の世界は、大嫌いで溢れていた。

 小柄で、クラスでも一番小さい。親の言いつけで、漆黒のストレートヘアを肩の少し上で切りそろえている。透明感のある艶やかな肌、内側から光るような赤い唇は人形を思わせ、大人がどんなに褒めたたえても優にとっては不快でしかなかった。大きな黒目がちの瞳は怯えきってふるえていて、本人の意思とは関係なく、体のどこかや、心を少しつつかれただけで瞳から涙が零れ落ちた。

 それを面白がった男子生徒が「妖怪・泣き虫優」と言い出したことで、優はあらゆる生徒たちに「弱い」とレッテルを貼られていた。

「やーい座敷童!」

「ええん…‥っ」

 優が顔を覆って泣くと、男子生徒たちは優を取り囲んで、どこからか持ってきた木の棒などで優の華奢な背中を物理的につついた。優は涙が止まらない自分を恨む。

「こら~!」

 太陽のような声がして、優が顔を上げる。

 赤いマントを羽織り、明るい髪を頭のてっぺんでおだんごにした幼馴染が、優の前に立つ。荒井友里は颯爽と顔を上げ、にっとわらう。

「優ちゃん泣いてる!」

「!」

 ハッとして、優は溌溂とした幼馴染に見られたくなくて、(かっこわるい!)と全てが小さな体の中で、手だけは大きいアンバランスさで、顔をおおって涙を隠した。


「きゃわいい~!」

 友里は優の頬に自分のもちもちの頬をつけて、蕩けるような笑みを浮かべた。

「なんだよ荒井、うぜえな。あっち行ってろよ。俺らはこの座敷童を退治するんだよ!」

「座敷わらし!?」

「なんだぁ、荒井は、駒井の味方か?!そんならお前も、妖怪ってことだからな」

 にやにやと友里にも標的を定めようとする男子たちに、優は怒りで震えた。

「ざしきわらしは、幸運を呼ぶんだよ!?」

 しかし友里は、そんな悪意など一切気付かず、光り輝く笑顔で叫んだ。毒気を抜かれて、男子も優も友里にくぎ付けになる。

「優ちゃんはいるだけで、幸せになっちゃうからびったりだね、天才」

 にこ~!とピカピカの笑顔を振りまく友里に男子たちは思わず怯む。

「幸運を呼ぶ座敷わらしを、退治したら大変!」

「はあ?どうなるって言うんだよ」

「確か、カトクガホロブ……」

 友里と男子生徒が「?」という顔をした。涙目の優が、

「「家督」は、その家の家長や後継ぎ、財産の事で、滅ぶ、は無くなることだよ」

「つまり家の財産が全部消えるってこと?優ちゃんさすが!あ、でも小学生は財産なんか、持ってないから、お父さんか、この子たちがなくなるってこと?」

 友里が恐ろしいことを赤ちゃんのような声で言うので、男子生徒たちはゾッと顔を青くした。

 言われた男子たちは顔を真っ赤にして「俺、この間ポケモンのレアカード手に入れたもんな!」などと言い返すが、友里の蜂蜜色の瞳が、悪意をひとつも含まずにきらりと光った。

「滅ぶんだって!」

「うっ!」

 一様に混乱する男子生徒たち。

「友里ちゃん」

 優が泣いた声で、友里にしがみ付くと、そのタイミングを見計らったように男子生徒たちは口々になにか文句を言いながら去っていった。


「友里ちゃん、危ないよ。あの子達、棒を持ってたから、せっかくバレエのステージに立てるのに、怪我しちゃう」

「しないよ~!殴ったりはしないこたちだよ!」

「友里ちゃん……」

 悪意を持っている男子たちにすら、良いところを見つけようとする友里の眩しさに、己の在り方が恥ずかしくなり、泣き出す優の頭を、友里が撫でる。友里は優より少し背が高い。

 顔を覆って泣く優の周りをグルグルと回る友里を困らせていると思い、優はお礼が言えない自分に、また涙が出てきてしまう。友里が、優の小さな手をそっと撫でた。顔から手を離すと、友里の笑顔が見えて優は無言でポロポロと涙を流した。

「かえろ」

 優の手をぎゅっと握る友里に、優はまた涙がこぼれた。

「ふふ、優ちゃんの涙、今朝お母さんにみせてもらった真珠のネックレスみたい」

「なに……」

「優ちゃんも見せてもらうといいよ、似てるから」

「自分の涙なんか、だいっきらい、おとこのこもきらい、いちばんきらいなのは……」

 ──弱虫な自分。優はあふれ出す涙で続きが言えなかった。

「優ちゃん鏡もキライだもんね、こんなにかわいいのに」

(友里ちゃんは大好き)言いかけて、優は、しかしこんなに嫌いなものが多い自分に言われても、いやだろうと思い、黙り込んだ。

 友里と優は、ランドセルを鳴らしながら夕暮れの道を手をつないで歩いた。


「優ちゃんは可愛いなぁ、お姫様……ううん、天使かな」

「どこが?みんなは妖怪って言うよ」

「みんなの価値観はそうかもだけど、友里の目には天使とか妖精みたいに見えるよ、バレエのDVD見てると、優ちゃんがいーーーーっぱいでてくるんだから」

 蜂蜜色の真ん丸の瞳に見つめられて、優は言葉に詰まる。満月のようで、みとれてしまう。

「……友里ちゃんは、大人の人みたい。優の……わたしのお師匠さんたちもみんなそう言ってくれる」

 優は自分の事を名前で呼ばないよう気を付けている。ふたりは、いま、大人になろうとしている時だ。友里も「わたしっていわなきゃ!」と優を見て慌てた。

「いっぱいご本よんでるし、お勉強もしてるの。だっていつか絶対プリマドンナになって、真ん中で踊るんだもん、お姫様は、優雅に華麗にしないとだめだよね」

「すごい、絶対叶うよ」

「えへへ!みてて」

 道の真ん中で、覚えたてのダンスを披露する友里に優は手を叩いて喜んだ。優にとって友里はお姫様で、世界で一番かわいいと言いたいのに、優は友里の姿が夕日だけではなくキラキラと輝いて見えて、言葉が胸につかえて出てこなかった。


「友里ちゃん」

「ん~?」

「ありがとう」

「なにが?」

「いろいろ」


「優ちゃん泣き止んでる!」

「え」

「わあい、友里……ううん、わたしのダンスにも泣き止む力があるのかな!?」

「そうかも!」

 純粋に喜ぶ友里に、優は頷いて、ふたりは笑顔で帰路についた。


 ::::::::::::::::


「優ちゃん昨日、素敵なお着物きてなかったぁ?」

「お稽古の日だったから、お茶の」

「にゃ~!、すてき!!!こんどお写真とらせてくださああい」

「ええ……やだ、お着物きてるわたし、きらい」

「つれない!!かわいい!!」

 体育が始まる少し前、友里が、わああっと優に抱き着いてくるくると回る。優はなすがままになっていて、友里がぐたっとなるまでじっとしていた。

 優の胸にピトッとくっついて、ぐりぐりと頭を撫でつける友里に、優はくすぐったくなって笑う。

「やっ、はは、アハハ、友里ちゃん、くすぐったい」

「うりうり」

「あははは」

 更に脇腹をくすぐられて、優は噴き出す。体育館の床に転がって、じゃれつくふたりを、同級生たちは「またやってる」という顔でほのぼのとみている。


「お茶って苦い?」

「ううん、前に甘ーいお菓子を食べるから苦く感じないよ」

「甘いお菓子大好き!優ちゃんは甘いもの苦手なのに」

「うん、でも教室のお菓子は美味しいよ」

「いいなああ、いきたーい」

「友里ちゃんも一緒に来る?いっしょならうれしい」

「お母さんに聞いてみる!たぶんダメって言うと思うけど!!」

「なぁんだ、でも、聞いてみるだけ頑張ってみて」

「うん!」

 ニコニコと笑いあって、ほとんど優の上に乗っていると友里はウトウトとしはじめた。ピーっと笛が鳴って、ハッと起きると、優は友里に微笑んで、友里も笑う。体育が始まる。


 体育館から教室への帰り道、優は男子生徒たちに体育館履きを奪われ、遠くにポンと投げ捨てられた。体育館裏の鬱蒼と葉が生い茂る方向へ飛んでいき、優の体育館履きは姿を消した。

「!」

 優は大きな瞳からボロボロと涙をこぼして、体育着の裾をぎゅうっと掴んだ。

「へっへ、妖怪優~、ざまあみろ」

「あ…っ、おとこのこ、きらいっ」

「!!!」

 優が嗚咽をあげながら泣き出す。隣にいた友里は、あっという間に走り出した。そして、茂みの中に入った友里の姿が一瞬で消えた。その場にいた生徒たちはハッとして、「荒井が消えた!」と口々に言う。


「友里ちゃん!」

 優が走り出すと、茂みのすぐ後ろは大きくブロックの谷になっていて、あわや優は落ちそうになったが、背の高い草を両手で掴んで、事なきを得た。

 下に空き地が見える。きょろきょろと辺りを見回すが、友里の姿はない。鍵のかかった階段で下に降りられる構造になっていた。昔プールがあった場所だ。その下に、優の体育館履きが落ちていて、友里は、いない。優の心臓が大きく、ドキンと鳴った。


「おおい、優ちゃん!あっぶな~、落ちるかと思った」

 大きな木にしがみ付き、ブロックの脇に足先でしがみ付いて友里が言う。優は止まっていた息をして、ドキドキと鳴る心臓を感じるとヘタっとその場にしゃがみこんだ。


「落ちてるぞ、荒井!」

「バカ!手を離すな!!」

 元凶となった男子生徒たちだったが、さすがに危ないと思ったのだろう、友里の言葉に一様に我に返り、先生を呼びに走る。

「友里ちゃん」

 優は震えて、涙を流したまま、友里に手を伸ばした。持ち上がるわけもなく、ただ優と友里は手をつないでいる構図になる。

「大丈夫大丈夫、登っちゃうから見てて。木登りも得意なんだよ~」

 友里は、白いコンクリートが出っ張っている位置に足をかけた。ポロリと、それらが崩れて「あー」というと、友里が掴まっていた木が根から離れ、下に落ちた。友里はブロックに飛び移る。

「!!!!」

 見ていた優のほうが、心臓がどうにかなりそうで、友里の名前を呼ぶ。握った手のひらに優の涙が落ちて、友里は困ったように笑った。

「優ちゃん、手を放して。このままじゃ優ちゃんが解けちゃう」

「やだ!友里ちゃん」

 優は叫んだが、友里が指をくりくりと優の手のひらの中で動かす。

「みて、これ、下に降りたほうが早そう」

 優も友里の捕まっているブロックの壁を見た。確かに上に上がるほど草に壊されていて、下へおりるほどしっかりしたブロックの階段になっていた。

「わかんないから、優ちゃん、案内して」

「ん」

 優は泣きながらも、友里に指示をする。右左と友里がその通りにひょいひょいと降りていく。ハラハラと見守る優に「優ちゃんさすが~!」と笑顔を見せると、ハンズアップをした。

「あ!足元から目を離さないで」

 優の心配通り、友里は足を滑らせ、1mほど落下した。

 優が怯えて顔を覆ったが、「優ちゃん」と呼ばれ目を開けると、上手く着地して落ちた優の体育館履き袋を拾い、優に手を振る友里の姿を見た。

「友里ちゃん……!!!」

「優ちゃ~ん。あんまり身を乗り出すと危ないよ!」

 優は言葉にならない悲鳴を上げた。


 先生が来て、優の説明に男子生徒たちは烈火のごとく叱られ、友里も少しだけ心配されながら叱られた。

「女の子なんだから、あぶないことはしちゃダメ」

「先生、それっておかしくない?友里が男子だったら違う怒られかたした」

「荒井さん」

「ううん、あぶないことしたってのはわかってるんですけど、女の子だって、好きな子の涙を止めるために、少しぐらい無茶しちゃうことあると思うんです」

「!」

 横で聞いていた優は、友里をじっと見つめ、友里もニコッと微笑むと優の手をぎゅっと掴んで握った。優はハラハラと涙を流し、「友里ちゃん」と言った。

「あ~泣かないで、かわいい~」

「……」

 友里が優の頭を撫でながらデレデレとしている様子を見ていた男子生徒たちは、呆れたように友里を見る。


「荒井さん……!罰はなしにしようと思ったけれど、荒井さんも、みんなと草むしりよ!」

 先生はそういうと、優をからかった男子生徒と友里を連れて、体育館裏の藪掃除をした。「先生も駒井さんに対する男子たちの嫌がらせを止められなかったから、一緒にやる!駒井さんは罰を受ける立場ではない」と言われ、見守るしかなかった。


 友里はへとへとで優の元へ戻ると、優の両親が車で待っていたので、友里もその車に乗って、家に帰ることになった。

「友里ちゃんはヒーローなのに、罰に巻き込まれちゃうなんて」

「んーでも、あぶないことしたのは、そうだし、これであそこから落ちる人もいなくなるから、いっかなあとおもう」

「友里ちゃんカッコいい!」

 母の芙美花が、運転しながら友里を褒めたたえる。

 優は、友里の手を握って、少し怪我をしている指先や、擦りむいた膝を見つけると、ポロポロと涙を流した。

「ごめんね、ダンスをするための体なのに」

 優の涙声を聞いて、友里はうーんと考えるしぐさをする。そして、優の胸に頭をぐりぐりとしたが、昼間のように優は笑うことがないと気付き、うーんともう一度唸って、優を抱きしめた。


「さっきも言ったけど、優ちゃんの涙を止めたいんだ、友里は」

「……」

「泣いてる優ちゃんもきゃわいいけど、笑顔の優ちゃんはお花が咲いたみたいで、だいすきだから、友里が優ちゃんの為にしたことで、泣かれると、友里は困っちゃう」

「……」

(ごめんね)と小さく聞こえた気がしたが、友里は無視をした。


「友里を困らせたい優ちゃんも、すごくかわいくて、困る」

 本当に困ったようにふにゃふにゃという友里に、優は面食らう。

「なに、それ」

 優がふふっと涙声で思わず笑ってしまう。ふわりと羽のように柔らかな優の笑顔に、友里は蕩けるように見惚れた。友里は笑顔になって、ぎゅううっと優を抱きしめた。そして、自分が草まみれでどろどろだったことに気付き、優からパッと離れようとしたが、優が友里を離さなかった。


「友里ちゃん、だいすき」

 ようやくいえた言葉をかみしめるように優は、もういちど小さな声で「だいすき」と言った。


「わー!友里も優ちゃんが大好きだよ、でも草が」

「ちくちくするのきらい」

「ねー、えへへ」


 その様子を見ていた優の母の芙美花が(なぜここに天使たちをおさめる車内レコーダーがないのか)という唸りを出しながら、友里の家の前に車を止めた。


 芙美花が、友里の母親に直接お話をしたいと言ったが、まだ友里の母のマコは帰宅しておらず、「おふろ、はいりたいよねえ」と困ったように言うと、友里が胸につるした鍵を、まるで勇者の剣のように掲げる。

「うん、洗ったら、栓をして、スイッチ入れるだけだよ。ご飯もスイッチを入れるだけ!炊いて、お母さんの帰りを待つの!えへん」

「優も見習わないと!がんばる」

 握りこぶしを作って、友里に憧れたような顔をした優だったが、芙美花は少し違う感情を持った。

「友里ちゃん、今日はうちに泊まって。優を助けてくれたお礼したいな」

「でも、お母さんが帰って、夜にごはんなかったら、可哀想だし」

 友里は戸惑い、家を眺める。

「おねがい、友里ちゃん。優もしたいよね?」

「え」

 優は芙美花の顔を見て、パチンとウインクされて、芙美花は友里がひとりで家の家事をしてほしくないと思っていることを悟ると、うんうんと頷いた。


「わたし、友里ちゃんといたい」

 優が真摯に言うと、友里は泥のついた頬を赤く染めて優と芙美花を見た。

「そういうことなら……」

 照れたようにおずおずと言うと、芙美花と優が友里を抱きしめた。

「友里ちゃん、ありがと~」

 友里は少し戸惑った後、ポロポロと涙が出て、困ったように「あれ?なんでだろう」と言った。涙の訳を、寂しさだと気付かない友里に、芙美花は友里と優の頭を一緒に撫でた。



 友里がお風呂に入っている間に、夕食が用意され、友里はおなかいっぱい食べるとすぐに眠りについてしまった。小さな体の友里を、優の父が抱きかかえ、お客様用ベッドに寝かすと優も今日はこの部屋で寝るようお願いした。


 友里の親と連絡が取れたのは22時過ぎで、詳しく話を聞くと、毎週水曜日は友里を置いて、両親は出かけることになっているらしい。たまたま、友里をひとりで家に置いているわけでなかったようで、優の母は、定期的に出かけるのならば、駒井家に友里を泊まらせる約束を取り付けた。優の体育館履きを守ってくれたという上手い口実のおかげで、話がスムーズに通ったと、優に伝えた。

「友里ちゃんね、わたしの涙が真珠みたいって言ってくれたの。真珠はおしゃれして出かける親の姿を見たんだね……。でも今日見た友里ちゃんの涙は、わたしすごく、寂しくて悲しかったよ」

「そだね、夫婦仲がいいことはいいことだけど。友里ちゃんは、寂しさに全然気づいてなくて……それがよけいにつらい。あんないい子を育てたんだからきっと、素敵なご両親だとは思うんだけど、でも……落ちて少し膝をすりむいてる。こんな夜にさ、ひとりで過ごすなんて、さみしいよね」


 話を聞いていた優の父、兄3人も、黙ってコクンと頷く。


「優、みんなで、友里ちゃんが寂しいって思う暇もないくらい、まもってあげようね」

「うん……わたし、強くなる!」

「そだね、お姫様を守る、王子様ぐらい?優は女の子だけどなれるかな」

「なりたい。まずは泣き虫を治す」

「優らしくね」

 言いながら泣いている優の頬を、芙美花はやさしく撫でた。



 朝、目覚めた友里は「お城?」と呟いて、起こしに来た優に「わー!優ちゃん、朝からかわいいね!」と口説いてまたバタンと倒れた。小学生にして、全身が筋肉痛だった。

「でも学校は行かなきゃ~!」

 起き上がって、芙美花の用意した洋服に着替えだす友里を見て、優は慌てて目をつぶった。友里の特技、早着替えに優は驚く。

「えらすぎ!」

 芙美花に言われ、友里は笑顔で答える。

 優はグッと手を握って、友里に伝えた。


「友里ちゃん、わたし、つよくなるからね、友里ちゃんぐらい!ううん、もっと!」

「優ちゃんは、わたしのおひめさまなんだから、そんなひつようはないよ?」

「お姫さまだって、強くないと!!!」

「優ちゃんの大きな声、初めて聞いたかも!カワイイ!!カワイイ♡♡」

「もう!!」

 なでなでと撫でられて、優は少し怒ったが、それすらも友里に「かわいい!」と言われて顔を真っ赤にした。友里の笑顔が近くて、泣きそうになるがグッとこらえた。


 優の世界は大嫌いで溢れている。友里だけが大好きだと思う気持ちは、もう何時からかも思い出せない。そして、その日初めて、毎日、友里の笑顔を見ていたいという感情が芽生え、心臓がドキンと鳴った。

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