第3部 パリ編
第117話 フランス東インド会社
『あなたは1430年のフランスにいる。あなたはフランス東インド会社の初代社長である。ちなみにジャック・クールはフランス中央銀行の初代総裁だ。本来ならあなたは4回のミッション変更で地獄へいくはずであったが、今回はコジモがルールを逸脱した行為をしたことで不問とする。ただし歴史の大きな改ざんにより反作用が起こった。予測不能の事態だ』
そういうことか。とすんなり納得するか! 時代は1424年のイタリアから一気に6年経過したようだ。まあそれはいい。問題は俺がフランス東インド会社の社長になっているということだ。
史実であればフランス東インド会社が設立されるのが1664年のことで、なんと200年以上も早まった。世界初の東インド会社であるイギリス東インド会社が設立される1600年から考えても180年も早い。これはむちゃくちゃだ。
まだある、ジャック・クールがフランス中央銀行の総裁という点だ。フランス中央銀行はナポレオンが1800年に設立している。こちらに至っては380年も時代が進んでしまった。世界初の中央銀行と言えるイングランド銀行の設立、1694年からみても270年も早い。
いったい何がどうなってしまったのか? それともただの冗談だろうか?
『前回と同様にこの時代で必要な知識が少しづつ追加されてくるので生活には困らないだろう、なお『ジャンヌ・ダルクを救う』というミッションに変更はない』
天使ノートに続きのメッセージが表示された。初めてブールジュに転生した時と同じだ。違うのはアイヒがいないというところだけだ。あいつはどうなったのだろう? 無事でいるだろうか?
「東インド会社への貸付の件だが、シャルル陛下のお許しがでたぞ。12,500リーヴル※を追加で融資する」
※注……約10億円【1リーヴル=8万円というこの作品内での換算に基づいています】
「フランス国債の利回りはどれくらいになっている?」
俺はこの時代の記憶が追加されるまで、とりあえず無難な質問をすることにした。
「十分な金の供給があるからな。5%程度で安定しているぞ」
国債とは国がお金を集めるときに発行する有価証券のことだ。といっても難しいだろうから国がお金を貸してくれた人や企業に渡す借金証書だと理解して欲しい。もちろん借金だから利息を払わなければならない。基本的に国の信用力、つまりちゃんとお金を返してくれるという信頼度が高ければ利息も低くなる。反対にお金を返してくれそうにもないと判断されれば利息も高くなる。
ナポレオン戦争当時、フランス国債の利回りは8%程度だったというから5%は悪くない数字だ。俺は机に置いてあるフランス東インド会社の事業計画書を読むことにした。
『フランス東インド会社の事業は以下の通りとする
①ドンレミ村開発事業
②アジア地域との独占貿易事業』
なんだこれは? ②はわかる。だが①のドンレミ村開発事業ってなんだ?
もっと詳しく書いてあるところはないだろうか? 計画書のページをめくってみると、次のような記述を無つけた。
『6年前、ドンレミ村の教会地下で過去の遺跡が発見された。遺跡では大量の金貨と上等な紙の束が見つかった。発見者であるジャック・クールとレオ・ルグランはそれらをブールジュへ輸送した。その後の研究によりそれらはテンプル騎士団が計画していた金融システムに使われるものであったことが判明した』
なんだこれは? 遺跡って白い部屋のことだよな。なんだか非常に都合良く解釈されているようだ。
『その後、遺跡からは、聖杯、ロンギヌスの槍などの聖遺物やヘルメス文書などの伝説上の財宝が出土した。シャルル王とジャック・クールはこの遺跡を探索することを事業として会社を設立することを決めた。この遺跡は特殊で探索に資金が必要だと判断したからだ』
なるほど、この遺跡からの出土品を売却することで利益を出し投資家に分配するシステムを作ったわけだ。そんなことを考えていると少し記憶が戻ってきた。このアイデアを提案したのは俺だった。
「それでその12,500リーヴルは何に使えばいいんだ?」
俺の問いにジャックは、何を今さらという呆れ顔を向けてきた。
「遺跡の鍵を取り戻すために使うんだよ」
「鍵か……」
「おいおい、しっかりしてくれよ。遺跡のさらに奥へ進むには聖女と預言者が必要だって言っただろ」
「聖女と預言者ってまさか?」
「聖女ジャンヌと預言者アイヒヘルンだ。そのふたりが遺跡の鍵なんだから」
あーなんてこった。俺はとんでもない平行世界に飛ばされたんじゃないのか?
「さっき、取り戻すって言わなかったか?」
「そうだよ。ジャンヌがコンピエーニュで捕えられたのは痛かったな。しかも預言者アイヒも一緒とはついてない」
いや待てよ。そこは歴史通りなのか? 史実に預言者アイヒは登場しなかったが。
「そうか、ジャンヌはイングランド軍に捕らえられたのか。アイヒは何やってるんだ?」
俺の言葉にジャックはまたもや怪訝な表情になった。
「イングランド? ああ今はローマ帝国の一部だがな」
俺は自分の耳を疑った。
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