第15話 続・2人ご飯

side:エリカ





『カーン、カーン、カーン』



鐘の音が聞こえたという事は、今日の午前の授業も終わりの合図です。


お昼ご飯の時間になりましたから、いつものように中庭に行きましょう。






「こんにちはエリカさん、ベンチはバッチリ確保しておいたよ♪」


「ありがとうございますラルフさん、ではお弁当を食べましょうか」



中庭に来ると、いつものようにラルフさんがベンチを確保して待っていてくれました


初めてラルフさんと出会った日から早いもので1週間になります。


今ではこうして一緒にお昼ご飯を食べる程度に仲が良くなりました、クラスメイトとは相変わらず全く距離が縮まっていないのですけどね(笑)



まぁラルフさんの目的の半分は私の持って来るお弁当なのはご愛嬌といったところでしょうか



私の予想通りラルフさんはスパイスの効いた刺激的な料理が苦手で、お腹の調子が悪くなる事が多かったそうなのです


普通なら学園側に相談して、食堂でスパイス抜きの料理を作って貰えば解決なのですが


ここは貴族が通う学園


『刺激的な料理を食べるとお腹の調子が悪くなるから』などと言われれば料理人は即クビ


最悪の場合は物理的に首が飛びます。


スパイスが身体に合わないという理由があったとしてもです。



そのような理由から、ラルフさんはご自宅でも刺激的な料理が苦手という事は秘密にしているそうです。




「あれ?今日のお弁当はいつものと少し違うようだね」


「ええ、今日は『蒸しケーキ』という物を作って持って来ました、イチゴジャムが別の容器に入っていますのでお好みで付けて食べて下さいね」




『蒸しケーキ』本当はパウンドケーキを作るつもりだった物です。


よく考えたらこの世界にオーブンレンジなどという便利な機械は存在しない事をすっかり忘れていました


今までは色んな果物でジャムばかり作っていたので、オーブンが無くても問題無かったのですが


いざ『パウンドケーキ』を焼こうとした時に薪窯しかなくて困りました


薪窯なんて使った事がありませんから黒焦げになる未来しか見えません、苦肉の策で蒸す事にしたのですが


結果として蒸しパンのような食感の『蒸しケーキ』の完成です(笑)



求めていた物ではありませんけど、これはこれで美味しいから問題無し!


薪窯で焼く『パウンドケーキ』はジョゼ料理長に頑張って完成させて貰うとして


私のお弁当を分けてあげる対価に、ラルフさんが食堂で買って来てくれたパンを食べるとしましょう


なんと今日は手作りのバターを持って来ているのです♪



搾りたての牛乳があればバターを作るのは簡単ですが、購入予約がいっぱいでなかなか買えなかったのですけど


昨日やっと買う事が出来たので朝から頑張ってバターを作りました!



このバターをパンに塗るだけでも美味しいのですが、パンに切れ込みを入れてからバターを塗り、ベーコンとレタスとトマトを挟めば


BLTサンドの完成です♪




「ん?今日はパンの食べ方もいつもと違うんだね」


「はい、新しい調味料を作りましたから試食も兼ねています。ラルフさんの意見も聞きたいので半分どうぞ」


「そういう事なら遠慮無く頂くよ♪」




ふふっ


ラルフさんが興味深げにBLTサンドを見て来ましたが、昨日まではジャムかマヨネーズを塗るだけでしたからね


節約の意味もあってジャムかマヨネーズでしたけどさすがに飽きて来ました(笑)



「エリカさん、このサンドイッチ凄く美味しいよ!エリカさんの家の料理人は優しい味の料理が得意なんだね」


「我が家は男爵家でそれほど裕福ではありませんから、毎日のようにスパイスを使えないだけという理由もありますけどね(笑)」


「そっ、そうなんだ、、、でもジャムもマヨネーズも美味しいから販売すれば皆買うと思うけど」


「確かに味に自信はありますし販売する為の商会を立ち上げる計画もあるのですが


単純に資金不足なのと、伝もノウハウも無いので買い叩かれるのではと心配もあってなかなか計画が進んでいません」


「その考えは正しいよ、お金に汚い上級貴族に目を付けられたら、圧力をかけられて下手をすると二束三文で権利を買い取られる恐れはあるね」



「やはりそうですか、何処かの上級貴族に販売を任せられれば良いのでしょうけど」


「ねぇエリカさん、僕の方で少し心当たりがあるから任せて貰えないかな?勿論エリカさんの許可無しに話は進めない事は約束するよ」


「それはとてもありがたいお話ですけど、ラルフさんがそこまでなさる必要は」


「是非やらせて欲しい!ジャムもマヨネーズも今食べた蒸しケーキも、販売されないと好きな時に食べられないから!」


「ふふふっ、ではお願い致します。」


「任せて!」






つづく。

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