第7話 ジョゼ料理長は静かに対抗心を燃やす。

side:ジョゼ料理長





今日もいつものようにウルツァイトハート男爵家の夕食を作っていると


珍しくフレデリカ様が妹のエリカ様と一緒に厨房にやって来た


エリカ様と言えばあまり私室からお出にならないので俺は2度ほど顔を見た程度だ、まぁそう言う俺も厨房からほとんど出ないけどな(笑)



貴族家のお嬢様が厨房に来るって事は何か無理難題でも言われるのかと思ったが、どうやらエリカ様を祝う為に赤飯をご所望らしい


フレデリカ様は『お姉ちゃん記念日』と言っていたが、ちょっと意味が分からない


なんにしてもエリカ様の事で嬉しい事があったのは分かったので、最高に旨い赤飯を用意せねばならん!


となると夕食のメニューも少し変更が必要だなと考えていたら、エリカ様が菓子について知っている事は無いかと聞いて来た


残念ながら菓子については専門外なのだが、エリカ様の言う『生クリーム、バター、バニラ、シナモン』


とは何だ?



シナモンは知っているが他はまったく分からん、本に書いてあったと言うが学園にはそのような本が普通に置いてあるのか?


だとすれば是非読みたい!


平民の俺では学園に入るのは無理だろうけど、エリカ様に頼んで本を借りてきて貰えないだろうか


そんな事を考えていたら、またまたエリカ様が『ジャム』と言うパンに付けて食べる甘いソースの話をされた



パンに甘いソースだと?!


これはいよいよ子供の遊びに付き合わされているのだと思ったが、エリカ様の顔を見て確信した


この方は『ジャム』を食べた事があるのだと!



何処かのお茶会で出されたのかもしれんが、長年料理人としてやってきた俺がまったく知らない料理があるなんて


パンに甘いソースを付けて食べるなど、はっきり言って考えただけでも気持ち悪いのだが


ジャムの話をされるエリカ様はとても楽しそうだ


俺の作る料理は食べた人をこのような表情にする事が出来るだろうか?


無理だな(悲)



くっ!


羨ましい


旨いかどうかはともかく、俺の知らない料理の知識を持ってるエリカ様がとんでもなく羨ましい!


その知識を教えて貰えるのなら、エリカ様専属料理人にして欲しいくらいだ!



どうやらエリカ様は今から『ジャム』を作るつもりらしい


これはチャンスだ♪


料理人としての技術を向上させる事は出来ても、新たな知識を得るのは難しいからな


俺はまだまだ成長出来るんだ、やるぞぉーーーー!






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る