第8話

 バンジージャンプをするために大きな橋の中腹に移動する。

 あーー……いよいよだ。

 参加者と引率のインストラクターと歩いて行く。そう言えば順番聞いたっけ。なんだか処刑人のような気分になってきた。

 実際にバンジージャンプをする場所は、橋の柵を出た所に見晴台のような場所が設置されている。どうやらそこから飛び降りるようだ。インストラクターが参加者に集まるように言う。実際にバンジージャンプをする流れを説明し始めた。順番に名前を呼ぶということで、飛ぶまでは自由時間だが声の届く範囲に居るようにと告げられた。

 1番初めに飛ぶのはカップルだ。

 私はこれからどうなるのかを確認するためにカップルが見える位置に居ることにした。

「あーーー。これじゃあ飛べないねぇ」

 とインストラクターが呟いた。彼女が履いていたサンダルが良くなかったようだ。少し空気が悪くなったようだったがインストラクターは気にせず、周りのスタッフに目配せをした。

「えーーー、だめなの」

 彼女が彼氏にボヤいた。

「これじゃあ、大事なサンダルがどこかに行っちゃうよ」

 と、インストラクターがダサいサンダルを差し出してきた。彼女が嫌そうな顔をしたが、ここで拒否をしてしまったら何もせずに帰ることになる。明らかしぶしぶ履き替えていた。

「さて、どちらから飛ぶ?」

 インストラクターが2人に聞いた。

 カップルが見合わせる。

 思ったより長い沈黙だった。

「じゃあ。オレから……で!」

「じゃあ、付いてきて」

 インストラクターに彼氏がついていく。

「ゆっちゃん、頑張って〜」

 と、彼女が声援を送るが彼氏の動きはぎこちない。そんな様子を見て私は1番先に飛ばなくてよかった思った。

 彼氏の飛ぶ準備が段々と整い、もう飛ぶ彼氏の背中はなんだか小さく見えた。

 彼女の方を見たら何故だか不満そうな顔つきをしている。そして彼氏は流れ作業のようにジャンプ台の先端へ連れていかれた。これが処刑か……。

 ジャンプ台のやり取りは彼氏の声が小さくて聞こえない。ただ、もう逃げられない雰囲気は分かる。

 更にジャンプ台の先に押し込まれているが、思ったより彼氏は動かない。若いインストラクターが逃げ場を塞いでいる。ちょっとずつ立つポイントに進んでいく彼氏。

 彼女の方を見たが、あまり興味なさそうだった。

「3.2.1.バンジー」

 という掛け声が聞こえ、彼氏の姿はなくなった。彼氏は無事落ちたらしい。

 次は彼女の番だ。若いインストラクターに「こわいーー」なんて言っている。誰かと一緒に来て先に飛ぶのも嫌だが、残されるのも嫌だなって1人で来ている私が思った。

 彼女は着々と準備をしている、それよりも私は若いインストラクターにかける声の高さが気になる。

 私は本当に飛べるのだろうかとだんだんと不安にななってきた。知らないカップルなんて気にする暇はなかった。

 そんなことを思っていたら彼氏が引き上げられ、無事に戻ってきた。

 

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