第7話

 小屋の入口はよく事務所とかで見るガラスの2枚扉で、建物中が見える。ここだという確信はあるのだが、扉が開けにくい。ゆっくりと扉を引いていく。

 人が1人ギリギリ入れるくらい扉を開けた辺りで

「いらっしゃい!!」と中から大きな声で言われ、驚いた勢いで小屋の中にすんなり入ってしまった。

 少し薄暗いような室内には受付台があり、受付台の前には健康そうなおじさんがいた。

 バンジージャンプのインストラクターさんだと思われるおじさんの方へ近づく。私が近づいてもあっちから声をかけて来そうもない。声をかけて来てくれれば楽なのに……。声を出したくない気持ちを押し殺して、声を発した。

「き、き今日予約しているものです」

 吃ってしまった。

 おじさんは吃りを気にせず、私に名前と電話番号を聞いてきた。そして、言われるがまま体重を図り、奥の小さな会議室のようなところへ案内された。

 その会議室には、今日の参加者がもう居た。

 カップル、男3人組だった。1人で参加するのは私だけ。私ひとりかぁ。変な目で見られることの方がバンジージャンプより嫌すぎる。席に座らないといけないのに被害妄想のせいで上手く歩けない。

 そもそも、ひとりで来るやつは変なやつだと思われるのは予約前に冷静になれば分かったはずだ。なのに、私は来た。よし、と思い空いてる席に座る。

 部屋には折りたたみのよくある会議机が横2列、縦3列、机に対してパイプ椅子が2個ずつ設置されている。後ろの席は全て占領されており1番前と入って右側が2列目も空いているが、カップルの前に座ることになるし、グループの横に座りたくない。右側1番前の壁際の椅子に座った。

 私が最後の参加者だったのか、私が席に着いた後、受付に居たインストラクターさんが入ってきた。

「本日は、参加していただきありがとうございます。では、早速流れと注意事項の説明をし、順に飛んでいただきます」

 手馴れているからか、淡々と話している。そんなに淡々とされてしまったら私の意が消えてしまいそうだ。

 なんて思っていたら説明が終わり、誓約書なんかもサインしたりして全員部屋を出ることになった。

 怖いねぇーなんてカップルが前で話してるの聞きながら外へ出た。自分の気持ちにしか気にしていなかったから何か重要なことを聞き漏らしてないか不安になった。誓約書はもう書いたし、危ないことだけは説明を聞かずとも知っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る