第6話
バスを降りて辺りを見渡した。バス停の看板以外周りには何もない。あると言えば、人生で初めて見るこじんまりしたお店だけだ。本当に何もないのか不安になり、マップでコンビニの位置を調べた。コンビニがないことは想像できない。マップの検索の結果は、バス停からバンジージャンプ場の反対に歩いて20分程先にコンビニがあるということだった。
近くにあれば寄りたかったがコンビニは諦めて、バンジージャンプ場へ行くことにした。
バス停からバンジージャンプ場までは10分くらい歩けば着くが、看板すらない。人もいないし、車も軽トラックを1台通過したのを見たくらいだ。
まだ、大通りだから耐えられた。でも、マップに大通りから外れた小路を案内している。車1台通れるかどうかの道を案内され、怖くなった。
バンジージャンプ場がこんな道の奥にあるはずもない。いや、バンジージャンプできるような場所は特別な場所だからもしかしたら人里離れた場所じゃないと許可が降りないのかもしれない。そんな気持ちを持ちながらマップに案内された道を歩く。
歩けば歩く程何もない。気づけば、木に囲まれたし車も通らないだろうし、人も歩くのかな。バス停から歩いて10分で着くはずなのに、もう10分超えてると思う。
電車を乗り換えてから飲んでるペットボトルの中身はなくなりかけている。まだ、カバンの中には2本ペットボトルがあるが、万が一に備えて飲むのを辞めた。
マップに示される道を歩いていく。徐々に明るくなってきた気がした。水の音も聞こえる。少し気持ちが楽になった気がした。マップ通りに進んでいく。頭を上げた。木と木の間から少し、橋的なものが見えた。
バンジージャンプ会場なのではないかと思った。そして、ペットボトルの中身が空になった。
だんだん、橋の全体像が見える。こんな、大きな橋があったのかと思うくらい大きい橋だ。川もでかい。
橋の近くの道路も大きい。絶対あの小路じゃなくても道あったと思う。少しマップにクレームをつけたい気持ちになった。
橋の手前には、小屋があった。念の為、マップを見る。マップはこの小屋をゴール地点としている。看板もちゃんとあった。
とうとう、来てしまった。遠かったのに旅の内容は薄いので着いたことだけに感動した。
着いたことの安心感とこれから私がバンジージャンプをすることが未だに信じられない思いが溢れてくる。たぶん、あの小屋の中に受付があるはず……。少しずつ小屋に近く。予約の勢いのまま来たが、バンジージャンプは怖いものだと知っているからこそ、小屋の扉の前で少し開けるのを躊躇う。
脳内では今までの交通費、時間、ここまで来たという事実と申し込み料とキャンセル料が私の背中を押している。気持ちは行きたくないが、小屋の扉の取っ手に手をかけた。
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