第5話

 とうとう、近くまで来てしまった。勢いのまま来てしまった。こんなに自分に対してお金と時間をかけることはあったのだろうか。お金を使うとしても、私以外の誰かがいた。自分ひとりにお金と時間を使ったことは、お菓子とか2,000円以内のアクセサリーを買うくらいだ。生きていくための必要経費も極力お金は使わない。そもそも使えるお金がないのもそ理由の一つだけど、私にお金をかける価値はあるのか自問自答してしまう。そして、その時の答えいつもNOだ。だから、1人で旅行も1人で外食もしない。

 今回みたいな行動は本当に私史上どうかしている。

 今日は天気がいい。私の心配とは違って時間より早くバスが来た。

 本当にこのバスでいいのかどうか不安になりつつ乗った。ホームから降りて何となく思っていたが、人が少ない。私以外におばあちゃんが1人、バンジージャンプ行くのか、散策に行くのか山登りに行くのか分からないけど外遊びするんだろうなっていう人が6人組いる。その他にも1人でバスに乗っている人もいて安心したが、明らかにアウトドアのベテランだ。にわかで1人の私には居心地の悪いバスだった。早く出発して欲しい。出発してないのに体感時間が長く10分は乗っている。

 バスが出発して、30分くらいで着く。

 私はコミュ障を発症して完治する見込みはない。だから、運転手さんに行先を聞けるわけもない。

 当たってるといいな。

 マップと通過する駅を見比べながらバスが進むを受け止める。

 改めてバスの中を見回す。おばあちゃんは風景に溶け込んでるし、ベテラン風の人は自分の時間を楽しんでる感じがするし、グループで来ている人達は楽しそうだ。

 私は初挑戦で知らない土地でバンジージャンプをするそわそわ感とバスの行先が合ってるかどうか分からないというそわそわ感で、私だけ挙動不審だ。

 やっとバスが動き出した。

 だんだんバスは進んでいく。バス停と運賃が記されている版が次々と赤く光るけど、見えない。バス停の名前を運転手さんが言ってくれるけど、ぼそぼそ声で聞こえない。不安だ。

 スマホのマップを見る。マップ通りにバスが進んで安心した。おばあさんが1人降りていく。

 私はずっとマップを見ている。そろそろ降りる駅に近い。うっすら降りるバス停の名前聞こえたような気がした。ボタンを押すか押さないか躊躇ったが、誰も押さない。それもそれでさらに不安になったが、これで降りないと一生降りれない。意を決して押した。

 結局バスを降りたのは私しか降りなかった。

 他の人は何しに行くんだ。というより、本当に降りたところ合ってるのかますます不安になった。

 でも、マップはこのバス停だと言っている。私にはマップしか頼るものがない。だから、マップを通りに歩く。

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