第参話 激突メーエル①

 『敵魔導騎兵を視認!!』


 敵歩兵に対しての圧倒的優位は長くは続かなかった。


 『こちらガルダイタス01、クライペダ管制コントロール応答求む』


 アルジスは任務の継続の可否を尋ねようと、指揮官クラスのみが接続できる軍管区管制直通の回線に接続した。


 『こちらクライペダ管制コントロール

 『メーエル南東に増強大隊程度の敵魔導騎兵部隊の進出を確認した。何か詳細は分かるか?』


 どこの国も基本的に部隊の編成は同様で、同じ部隊規模であるならば人数にそこまでの差は無い。

 だが、第701特務魔導騎兵大隊は4個中隊36名で構成されていたが帝国軍の増強大隊の規模は、5個中隊45名で構成されているため数的劣勢だった。


 『その部隊に関して友軍からの報告は上がっていない』


 管制の応答に、なるほど……とアルジスは納得せざるを得なかった。

 友軍はメーエルからの退却の真っ最中で、秩序だった後退が出来ているかは怪しいといった具合。

 つまり任務の放棄は不可能だということだった。


 『貴隊は未知の敵戦力に対しての対応について、任務には含まれていたか?』

 『いや、メーエル近郊で友軍の撤退を支援しろとしか言われていない』


 国軍司令部の切り札であるという自覚はあったが、さりとてその程度の内容に関しての指示が漏れるほどに司令部がお粗末なのかとアルジスはため息をついた。


 『こちらから司令部に問い合わせてはみるが……他に何かあるか?』

 『いや……』

 『武運を祈る』


 それで管制との会話は終わりを迎えた。


 『望む答えは無かったってところかしら?』


 クニッツが会話から全てを察したかのように言うと、アルジスは


 『全くその通りだ』


 と肩を落とした。

 とはいえ眼前に敵がいる以上、あるいは任務が友軍の支援であるから戦闘を避けることなど無理な話だった。


 『南方方向の敵魔導騎兵部隊、動き出します!!』


 部隊内の回線に緊張した声が飛び込む。

 ヘッドセットに聞こえる部下の報告を待つまでもなく、敵の狙いは明確だった。


 『市街地に引き込むぞ!!』


 練度には自信があったが戦争は始まったばかりだと、アルジスは平原部での迎撃案を棄却した。

 そして真っ向勝負で数が劣るのなら地形を選べばいいのだと思考を切り替える。

 

 『街に逃げ込んだら反転して迎撃用意をしろ!!』


 選んだのは市街地での反転迎撃だった。

 隘路、袋小路に誘い込み徹底的に叩くという決断。

 


 『ここから戦闘収束までの間は、各中隊長に指揮権を委ねる。危険と判断した場合はすぐに近隣の中隊を頼れ』

 『『『了解!!』』』


 かくしてメーエルを巡る一連の戦闘は第二幕を迎えた―――――。

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