第53話 畠山 定信 出社する
真っ白い風景から徐々にピントが合ってくる。
それは白い天井のようだった。
瞬きをすると、白い看護服の女性と白衣の男性が視界に入ってくる。
二人が語り合っているが声は聞こえてこない。
話し込んでいた二人が視界から消える。
やがて白い天井がボンヤリとした白い風景に戻っていき…
---
彼が出社してきたの!
とってもうれしいの!
あの
でも、今日は怒らないの。
だって、彼が出社出来ている方が遥かに重要なの。
メールは彼に届かなかったのかもしれないけど…でもいいの。
彼の元気そうな笑顔が見れたから…もうどうでもいいの。
ホッとした反面、また私はイライラしているの。
…なぜなの?
◇ ◇ ◇
自分たちの職場に向かいながらアカリとサダノブは話し合っている。
「お疲れ様。」
アカリが
「本当ですよ!
危機管理に問題は有りまくりだし、お隣の某国さんが情け容赦無く攻めてくる。
その攻め方がバラエティー過ぎてうんざりですよ。」
サダノブが肩を
「こっちにも、某国の波状攻撃が有ったわね。
バラエティーというより、気になることがあるのよね…。」
アカリが職場のドアを開く。
「気になること?」
サダノブもアカリのあとに続く。
「そう…波状攻撃にね。
今までに無かった傾向が見えるのよ。」
手慣れた操作でヘッドセットを被り、システム起動を始めるアカリ。
「それは?
って、オレも何となく気にはなっていたんですよねぇ。」
席に座りシステムを起動していくサダノブ。
「それじゃ、今日も始めるわよ!」
アカリがブラインドタッチをスタートする。
「了解、相棒!」
サダノブもブラインドタッチをスタートする。
◇ ◇ ◇
昼下がり、アカリとサダノブはいつもの居酒屋で定食を食べている。
「…今のところは大人しそうですねぇ。」
サダノブがお新香を食べながら話し始める。
「そうねぇ…。
今日は…ね。」
アカリも吸い物に手を付ける。
「…にしても、先週のお祭りは何だったんだろう?」
サダノブも吸い物に手を付ける。
「恐らく、経済政策の見直しに対する嫌がらせじゃないかしら。
某国は対外的には経済衰退をいいように弄ばれ、その無能っぷりに国内情勢は不安の一途…。
内憂外患と言ったところかしら。」
アカリがおかずを口に運ぶ。
「じゃぁ、今回の一件は連中の政府ばかりが起こした犯行ではない!っと?」
サダノブが箸を置き、お茶を啜りだす。
「そうね、某国のアチラコチラで散発的な動きが見受けられたから、活動家たちも混ざっているでしょうね。」
アカリもお茶に手を伸ばす。
「ふぅ、国内問題をこちらに持ち込んで欲しくないね。」
サダノブは席を立った。
「そう…ね。」
アカリも席を立つ。
◇ ◇ ◇
さて、アカリとサダノブが事務所の玄関に入ると車内は蜂の巣を
そして、玄関口のID読み取り兼タイムレコーダーが異常を示す警告灯を灯していた。
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