第51話 休日の午後
今日は会社がお休みなの。
お休みなんだけど、彼は会社に来てるの!
今日は彼と二人っきりなの。
デートにお誘いしたいなぁ~なの。
私、お喋りが出来るようになったの!
今朝初めて声をかけてみたの…勿論『彼』に。
彼ったら、驚く事もなく笑顔で挨拶してくれたの。
とっても、いい声だったの!
うふふ
◇ ◇ ◇
日曜日の午後、陽光に照らし出された町並みと、行き交う人々とまどろんだ風景を眺めながら…。
事務所の机で出張準備の書類を作成するオレ、畠山 定信。
仕事柄、自宅に持ち帰れる作業ではないため、
もっとも、行く先々で必要となる準備物もあるので、ここでまとめて手配を済ませておくことにした。
んだけれど…、アカリとユカリは終日デートということで、実に羨ましいことこの上ない。
早々に手続きを済ませて、オレも彼女らと合流したいところである。
さて、陽もだいぶん傾向いてきた。
準備物の取りまとめも終わり、必要な資料類も外部フォルダへの設置が終わった。
これで、外部からでも容易に書類などを取得できる。
大きく伸びをして、作業の終端処理を行うオレ。
コンピュータの電源を落とし、上着を取り上げながら、作業部屋の扉を開く。
いつものように、入場ゲートにあるID読み取り兼タイムレコーダーへ社員証をカザして事務所玄関へ向かう。
「お疲れ様でした。」
可愛らしい女性の声が響く玄関を抜け、外へ出た。
事務所の玄関を出ると、カップルや親子連れなど、休日を楽しんだ人々が三々五々行き交っている。
その人々をかき分けながら、アカリとユカリがオレのところへ駆け寄ってくる。
「「お疲れ様ぁ~♫」」
二人のねぎらいの言葉に頷き、オレも彼女たちに合流する。
「さて、どこに繰り出そうか?」
オレが問いかければ
「え~~っとねぇ~~。」
アカリは指を組みながら色々思案している。
「じゃぁ~~、この前話してた『噂の居酒屋』とかはどうかなぁ?」
ユカリが合いの手を入れてくるのだが
「「ユカリには、まだ早い!!」」
オレとアカリがダメ出しをする
「ぶぅ~~~。」
ユカリは頬を膨らませてしまう。
そのやり取りが可笑しくて、オレたちは三人ともに吹き出してしまう。
やがて雑踏の中に埋もれるべく、歩き始めたオレたちを見つめる視線を感じる。
視線の元を確かめようと振り返ってみたオレ。
眼前にあるのは事務所ビル。
(ま、まさかね…。)
オレは不安を打ち消し、雑踏の中に身を任せた。
◇ ◇ ◇
アノコハダレ?
ワタシノカレヲ、ツレテイカナイデ…
事務所の玄関に微かに木霊する女性の声が何かを伝えようとしていた。
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