タイムレコーダーの恋
第48話 出勤の風景
今日もあの人がやって来るの。
私に視線を向け、手を振ってくれるの。
私は動くことは出来ないけれど、彼はいつも来てくれるの。
でもね、休日はお会いすることが出来ないの。
会社の決まりだから仕方がないの。
だからね、仕事のある日はいつも彼を私は見るし、彼も私のところに来てくれるの。
…そして、彼と私の邪魔をする憎いあの子もやって来たの。
私を睨み、手をかざしやがるの。
彼とほぼ同じ時間に現れて、彼の肩を気安く叩いて話しかけるの。
何を話しているのか聞こえないけど、談笑している姿が許せないの!
彼は私のもの、貴女のモノじゃないの!
あっと、いけない!
報告書を上司に提出する時間なの。
え~っとぉ、皆さん体調不良もなさそうで、全員出社されました。
備忘録として、いつもの二人が遅刻気味…なの。
◇ ◇ ◇
オレの名前は
今日も元気に『遅刻』回避の出勤だ。
おかしいんだよなぁ…オレの務める会社ってフレックスタイムの筈なんだよねぇ。
コアタイムさえ守れば、出勤時間なんて、ど~とでもなるはずなのに…。
うちの課の課長さんが
「うちは家庭持ち以外は、一般的な勤務シフトとする!
つまり、九時出社の十八時退社とする!!」
と言い放ちやがったのだ!
どういうイジメなのか、新手のパワハラなのか…それとも、課長は『婚活を率先して進める会』の代表理事なのか?
「こらぁ~、サダノブぅ~、遅刻はダメよぉ~~!」
後ろから走ってくるのはオレの相方、渡辺
ちなみに、同期入社の一人であり、
「アキ
売り言葉に買い言葉ではないが、ついつい歩く速度を落としてしまえば、彼女の到着を待ち、二人してじゃれ合いながら、入場ゲートにあるID読み取り兼タイムレコーダーに社員証をかざして事務所ビルに入っていくのがオレたちの日常だ。
なお、何故に『アキ
「ねぇ、サダノブ知ってる?」
「何をです?」
「私たちがマークされてるって事。」
「そりゃ、これだけ毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、遅刻ギリギリで出社してたら、嫌でも目に付くんじゃないかなぁ。」
「そうよねぇ…。」
「はいはい、アキ
立ち止まりかけたアキ
◇ ◇ ◇
定信たちが事務所に入ると、館内では社歌が流れ出し、やがて始業のチャイムが鳴る。
チャイムが終わると、事務所毎に朝礼の訓示が始まり、何がしかの唱和が終わったところで、忙しなく人々が動き出し始める。
そんな人々の動きを知ってか知らずか、入場ゲートにあるID読み取り兼タイムレコーダーは、通信を送るべく信号灯を点滅させていた。
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