第47話 コミュニティバス 出発します!
のどかな田園風景を背景に、低床小型バスが町道を走っている。
「このバスは、コミュニティ交通システムです。
役場から運動公園前までの環状バスとなっております。
次の停車場所は、飛行場前、飛行場前です。
搭乗手続きの窓口は、降車口の正面となっております。
お乗り間違えの無いように、ご注意下さい。」
程なくすると、正面には飛行場の建物群が見えてくる。
女性のアナウンスに、旅行カバンを携えた人々がゆっくりと席を立ち始める。
そのバスの車内に冨永夫妻も同乗している。
「すっかり便利になりましたねぇ、おじいさん。」
「そうだね。」
仲睦まじく会話を楽しむ老夫婦。
おじいちゃんが免許を返上したのは半年前。
そう、アローナと老夫婦が開拓した『レベル4自動化運転』の道程は、そのまま『コミュニティ交通システム』の道程に置き換えられたのである。
文字通り、彼らの進んだ後に道が出来上がったのである。
◇ ◇ ◇
老夫婦のもとからアローナが旅立つ日。
その日は薫風が頬をくすぐる、穏やかな皐月晴れだった。
『ご主人、お世話になりました。』
「こちらこそ、世話になったね。」
自宅玄関に鎮座するアローナを前に、老夫婦が並んで立っている。
『しかし、面白い事になりましたね。』
「そうだろう。
お互い、存分に楽しめたし、見聞も人脈も大いに広がった。」
「そうですねぇ。
美味しいランチのお店も増えましたからね。」
笑顔の老夫婦。
しばしの談笑に耽っていると、アローナを引き取るためのキャリアーが到着する。
キャリアーに乗せられたアローナが夫婦に語りかける
『それでは、ご主人…しばしのお別れですね。』
「ああ、縁があったら、また会おう。」
『まぁ、三途の川でお会いしても私は構いませんけど。』
「すっかり、冗談も使いこなせるようになったな。」
コロコロ笑う老夫婦に見送られ、アローナは『次の利用者』の元へ旅立った。
◇ ◇ ◇
「次は、白馬亭前、白馬亭前。
お昼のランチは白馬亭!
白馬亭へお越しの方は、こちらでご降車下さい。」
次の停車場のアナウンスに促されるように席を立つ老夫婦。
バスが停まり、前扉から降りようとする老夫婦。
「ご乗車、ありがとうございました。
お気をつけて。」
満面の笑みで、降車するお客様を見送る
コミュニティ交通システムのバスは、レベル4自動化運転…つまり、運転手を必要としない自動運転を採用している。
一応、自動運転がトラブルを起こした際の保険的位置づけとはなっているのだが…この
「さあ、行きましょう。おじいさん♪」
年甲斐もなくウキウキのおばあちゃんに手を引かれ、おじいちゃんもバスを降りるのだった。
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