第39話 お買い物
さて、イナダ医院の要件も済ませ、
お二人共、楽しそうに手を振りながら、
おばあちゃんは助手席に、おじいちゃんが運転席に座る。
『それでは、出発しましょう。』
「よろしくお願いします。」
私のアナウンスにおじいちゃんが頭を下げる。
おじいちゃんがハンドルを握り、アクセルを踏むと、アローナはするすると動き始める。
『今日は光ヶ丘ショッピングモールで、野菜の特売市が開かれてますね。』
助手席のモニターに、本日の光ヶ丘ショッピングモールのチラシを掲載する私。
「そう。
お父さん、光ヶ丘ショッピングモールに向かってもらえるかしら?」
おばあちゃんは、にこやかに進路の指示をする。
「分かったよ。
アローナ、案内をよろしく。」
おじいちゃんもハンドルをギュッと握る。
『了解しました。』
ナビゲーションに光ヶ丘ショッピングモールへの案内を表示する。
◇ ◇ ◇
さて、主要バイパスに面する側道の先頭で信号停車をしている
信号が赤から青に変わったのだが、アローナは発進しない。
「???」
おじいちゃんがアクセルを踏んでも、アローナはピクリとも動かない。
後ろからはクラクションが響きはじめ、焦りだすおじいちゃん。
「どうした?
壊れたか?」
「どうしたんです?
おじいちゃん。」
おばあちゃんもオロオロし始める。
『しばし、お待ち下さい。』
今の私には、それだけしか答えることが出来なかった。
不思議なことに、対向車線側のアローナも交差点へ侵入しようとしていない。
不意に後方の車列から対向車線に飛び出し、交差点へ近づくシャコタンの高級セダン。
運転席では、いかにもという若い男性が、助手席側の窓を開き、おじいちゃんに罵声を浴びせかける。
助手席の茶髪の女性は申し訳無さそうに頭を下げる。
さて、シャコタンの高級セダンが速度を上げながら交差点に入り、中央線に近づいたまさにその瞬間。
一台のスポーツカーがとんでもない速度で交差点の左側からバイパスを直進しようと侵入する。
高級セダンの助手席へ突っ込むスポーツカー。
衝突の衝撃で横転する高級セダン。
スポーツカーも高級セダンの横転に巻き込まれ後輪側から前転する。
五回、六回と路面を跳ねながら転がっていく元車であった金属の塊。
諸々の液体と部品を撒き散らし、金属の塊が停止する頃、バイパスの左側から追跡してきた三台のパトカーが事故現場で停止する。
あまりの出来事に、老夫婦は固まってしまう。
他の車の中も同じような状態だったのだろう、クラクションの音も止み、けたたましいサイレンの音だけが現場を支配している。
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