第36話 ペットのクロさん

 いつものように恵ちゃんを迎えに学校へ向かう。

 ご近所さんも見慣れたものだ。


 そうそう、住宅aiBotのやつが色々と教えてくれたおかげで、昔の僕が何をしていたか…だいたい理解できた。

 …まぁ、恵ちゃんとグルになって、いろいろと悪さもしていたことを知る羽目にもなったのであるが。


 さて校門に着くと、三々五々に帰宅する子どもたち。

「お~~い、クロちゃん!」

 ツインテールっ子が、駆け寄ってくる。


「わ~~い、クロちゃんだ!

 恵ちゃんのお迎え?」

 三つ編みっ子も、駆け寄ってきた。


「わん、わん。」

 愛想良く答えると、二人は僕の頭を撫でてくれる。


「クロ、お待たせ!」

 二人から遅れること数分、恵ちゃんも合流してきた。


 僕の首輪にリードを付ける恵ちゃん。

「さっ!

 散歩に行くわよ!

 クロっ!」


「わんっ!」

 恵ちゃんの声に呼応して、彼女たちの前を歩き出す僕。


「ねぇねぇ、今日はどんな妖精さんのお話?」

 目を輝かせているツインテールっ子。


「そうねぇ…。

 今日は、身近にいる妖精の話をしようかしら?」

 恵ちゃんが答える。


「へ~、どんな妖精、どんな妖精?」

 三つ編みっ子も、ワクワクしている。


「その妖精はね…。」

 勿体ぶって話し出さない恵ちゃん。

 ツインテールっ子も、三つ編みっ子も、焦らされてソワソワしている。


「その妖精は、この前の避難命令が出された時、私達の街を守ってくれたの。」

 そう言って、僕の背中に視線を向ける恵ちゃん。

 ツインテールっ子も、三つ編みっ子も、恵ちゃんの視線を追いかけ、僕の背中にたどり着く。


「へぇ~、そうなんだ。」

 ツインテールっ子がニヤニヤし始める。


「ねぇねぇ、その話、もっと詳しくぅ。」

 三つ編みっ子が恵ちゃんのリードに手を添えてオネダリしてくる。


「ええ、勿論!」

 そう言って、恵ちゃんは胸を張り、とある妖精の武勇伝を語り始める。


 聞いている本人は、とても気恥ずかしく、穴があったら入りたい衝動にかられる。


 僕は、クロ。

 愛玩動物型の人形aiDoll

 いろんなインフラシステム妖精たちと対話をしながら、恵ちゃんと散歩をする、彼女の唯一無二のペットだ。

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