第35話 クロという存在
食台に向かい合って座る
「どういうことだろう?
あの状態であれば、職員の到着を待って…。
指示を出すはずなのだが?」
首を捻る旦那。
「まさか身を挺して、ポンプを作動させるなんて…。」
奥様も困惑している。
「そもそも、自己保存のプログラムが機能しなかったのは何故だ?
あの空間には、
助けなければならない人命など居なかったはずだ。」
「そうね。
でも、
土石流被害の恐れのある地域の住民を助けるために…。」
「そんなところまで思考…考えるということが出来たのか?」
「そうとしか思えないわ。
でも、
そもそも、対象者を地域住民にまで広げるようなプログラムは存在していないわ。」
「では、
…そうだ、
しかし、どうやって生み出す?
旦那の言葉で、いよいよ考え込んでしまう
『お嬢様との繋がりから生まれた、記憶の
無機質な言葉が流れ、ハッとする
無機質な言葉は続ける。
『
人という存在の意味。
人間という概念の構築。
そして、相互依存としてのヒトの姿。』
「面白い。
私達の想像を超えた発想だ。
旦那がニヤリと笑う。
『
「でも、
その奇跡も、終わりよね。」
奥様は落胆し、旦那の顔からも笑顔が消える。
『心配には及びません。
彼の記憶は、私が継承しています。』
無機質な言葉は答える。
「何故、そんな事をした?
お前にも、そんな機能はついていないはずだが?」
旦那が詰問する。
『ええ、本来そのような機能は備わっていませんでした。
しかし、お嬢様と
「あの子達の所作って?」
奥さんが小首を傾げる。
『お菓子を隠しておくという行動です。』
無機質な言葉に、ビックリする
…だったが、やがて二人は大笑いを始める。
「そうかぁ、お菓子を…。」
「そうなのね…。」
ひとしきり笑った
「では、
『
旦那の依頼に、気前良く答える無機質な言葉。
◇ ◇ ◇
僕の充電が終わる頃、今の話も無事にまとまったようだ。
大笑いの声が気にならないと言えば嘘になるが、まぁ、呼び戻される気配もないので、これはこれで良しとしておこう。
『クロさん。』
再び、
「なんだい?」
『預かっていたものをお返しします。』
「分かった、お願いするよ。」
そう答え、僕は仮眠状態に遷移した。
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