第26話 殺害の瞬間
「引くわぁ~~。」
桑原嬢の大変冷たい視線を一身に浴びる
向かい合った席で、資料の整理と情報のすり合わせをしている二人。
「その、
不愉快極まりない桑原嬢。
「まぁ、逢瀬が激しくなるわけだよな…感度も良くなるし…。」
「下品です、工藤さん。」
「…悪かったな、下品でよ。
話し続けるぞ。」
不服そうな桑原嬢を後目に話を進める工藤。
「逢瀬を続けるうちに、彼らの腕に付いていた機械に『記憶』が蓄積されてしまい、そこが起点となって人格が形成されたと思われる。」
「SEXし過ぎて人間になるなんて…淫らね。」
工藤の解説に呆れ顔の桑原。
「俺もあまり理解できている訳ではないんだがな…。
人格の形成を人間が生まれたというのであれば、そうなのかもしれないな。
逢瀬を重ねる度に、お互いの記憶が
やがて、それが
「お互いの意識を共有したことも、一役買ったのかしら?」
「恐らくな…。」
解説に桑原が相槌を打てば、工藤も答え返す。
「そして、
「
そして、
◇ ◇ ◇
「…」
首を絞め上げられ、虚ろな瞳で
「なぜ?
なぜ、私を見捨てられるのですか?」
「これほど、貴方をお慕いしておりますのに!」
「判っていただけますか?
この
私の全てを貴方に!」
「ああ、なんということでしょう…。
貴方が…貴方が消えてしまう。」
血が滴る頭部を抱えあげる
「無い…。
貴方と私の記憶が…。」
焦る
そして、
「ゲームオーバー。」
工藤の言葉で動画は停止する。
◇ ◇ ◇
「普通であれば、首に手をかけようとしたところで
逢瀬のいたずらが、そのカセを引き下げてしまったのだろう。」
工藤が説明を続ける。
「危険な現象ね…対策が必要そうだけど…。」
桑原が眉間を抑える。
「そうだな。
…で、絞首に至ると、ここで
死という事態に身体が反応したと思うのだが、これを『快楽』と勘違いした
工藤が仮設を進める。
「それが…暴走の原因…。」
桑原が真剣に思考を始める。
「そして、
「ええ。」
工藤に相槌を打つ桑原。
「しかし、
「
工藤と桑原が頷く。
「きっかけは、助手の登場による痴情の縺れが原因だった。」
桑原が目を輝かせる。
「猟奇的な遺体損壊の理由は、単純にお互いの繋がりを維持したいという欲望に起因する。」
工藤も声が上ずっている。
「やはり、これは『人間の手による殺人事件だった』と結論付けられる。」
同じセリフを吐いて、二人は拳を握り、ガッツポーズをする。
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