第18話 現場

「あんにゃろぉ~。」

 含み笑いを浮べながら、資料室に置いてある旧式情報端末スタンドアローンの画面を眺めながらほくそ笑む工藤。

「これって…問題になりますよ。」

 同じ画面を工藤越しに眺め、引き気味になっている桑原嬢


 ◇ ◇ ◇


 工藤は謎のUSBメモリーを携え、資料室へ向かっている。

 桑原はそのUSBメモリーを不思議そうに眺めながら、工藤の後について歩いている。

 やがて二人の眼前に見えてくる資料室。

 ドアを開き、ホコリをかぶった旧式情報端末パソコンの前に座り電源を入れる工藤。

「そんなキカイで大丈夫なんですか?」

 怪訝そうに尋ねる桑原。

「こいつじゃないと、ダメなんだ…よっと。」

 OSが起動したところで、くだんのUSBメモリーを差し込む工藤。


 内容は動画ファイルが一つ

「な、何なのでしょうか?」

 怪訝そうな桑原嬢。

「さぁ~てな。」

 そう言って動画を再生させる工藤。


 さて、画面に表示されるのは、目指し帽に茶色い背広姿の男性。

 白い背景が、男の存在を際立たせる。

「これ…って、検察の安倍…さ…ん?」

 桑原嬢が画面に近づいてくる。

「…のようだな。」

 画面の男、『地方検察庁 公安部 公安事務課  主査 安倍 源三』さん。

 工藤の高校時代からの友人腐れ縁


「何で、動画動かないの?」

 桑原嬢が怪訝そうに画面を覗き始める。

「あ…再生し忘れてた。」

 慌てて動画を再生する工藤。


 動画が始まる。

 早々に始まる能書き部分。

 秒の速さで早送りを決める工藤。


 さて、本題が始まる。

「…ということで、本編は別動画になっております!

 是非楽しんでくれたまえ!」

 その言葉を残し動画は終了する。


「な、何なのです?

 この動画以外、動画なんて入ってないじゃないですか!」

 桑原嬢が動画に噛みついてる中、工藤がコマンドプロンプト画面を呼び出し、ゴソゴソと作業を進めている。

「ちょっと、工藤さん…。」

「少し黙ってろ!」

 黙々と作業を続ける工藤。


「これで、お~わりぃ~…っと。」

 五分後、作業を済ませリターンキーを叩く工藤。

 USBメモリーの内容物が途端に膨らむ。


「こ、これって…。」

 桑原嬢が画面を見ながら驚き、工藤はニヤリと笑っている。


「さてと…お仕事お仕事♪」

 録画記録の古いファイルから順次再生を始める工藤。


 上映されるものは、野島助教とのホームドラマから始まっている。

「…人形aiDollの記録…。」

「そういうこと。」

 桑原嬢は口を抑え、工藤は後ろ手に後頭部を起き画面を眺めている。

「でも…これって…。」

「ああ、公にはシロモノさ。」

「では、何故ここに?

 しかも、安倍さんて刑事部ではなく、公安部のはず…。」

「公安部だったから…さ。」

 工藤の言葉に首を傾げる桑原嬢。


 さて、動画の再生が進む。

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「やったぞ!

 画像による意思疎通が出来るぞ!」

 男性野島助教の声が響き、人形aiDollを正面に見つめ、その両手を取り燥いでいる画面。

 人形aiDollの顔は綻び、その瞳に映っているのは、男性野島助教本人。

 人形aiDollの脇には、同じ画面を表示したモニターが置かれている。

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 工藤は薄ら笑いを浮べ。

「???」

 桑原嬢、直角に首をひねって悩んでいる。


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 亀甲縛りにされた挙げ句、鞭打たれる人形aiDollを鏡越しに楽しそうに眺めている男性野島助教

 お互いに服ははだけ、人形aiDollは恍惚の声を演じている。

 鞭打つ男性野島助教も、狂気の笑みを浮べている。

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「うげ…。」

 桑原嬢は画面から目を逸らす。

 工藤は丹念に画面を確認している。


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 行為の終わった部屋。

「君は最高だよ。

 あやめ…。」

 男性野島助教が顔を近づけてくると、画面がブラックアウトする。

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「工藤さん、これって…。」

 桑原嬢が震え始めている。

「ああ…。」

 言葉を失う工藤。


 やがて映像が事件直前の場面に近づいてくる。

 その頃には、男性野島助教人形あやめの逢瀬は穏やかなこともあれば、過激な場面も登場する。

 ただ注視しないと気付かないのだが、行為の途中でいるのだ。


「工藤さん…これって…」

「ああ、もう少し時間を作って確認が必要だな。」

 途中で動画の再生を中止する工藤。

 桑原は一足先に資料室を出ていく。

 資料室の端末の電源を落とし、USBメモリーを内ポケットに突っ込む工藤。

 遅れて資料室を出ていく。

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