第11話 告白
「あの…佐々井くん。」
進路指導室に進路希望を提出した帰り、廊下で同じクラスの女生徒に呼び止められた。
「はい?」
「あの…放課後、体育館裏に来て下さい。」
消え入るような声を残し、女生徒は教室へ走って行った。
「ええ…っとぉ…」
返事を返すべき人が居なくなり途方に暮れる僕だった。
恙無く授業も終わり、放課後、約束した場所へ行くと、
「遅れてごめんなさい。」
僕の言葉に首を横に振って答える女生徒。
「それで、どんな用事…」
「付き合ってください!!」
そう言って、手紙を付きだし、僕に渡すと、真っ赤な顔で校舎の方に走って行った女生徒。
嵐のような出来事に呆然とする僕。
気づいたときには、受けとった手紙をしっかり握っていた。
◇ ◇ ◇
帰宅した隆文がいつになく落ち着きがない。
しのとゆいは、直ぐに気づいたが、彼の口から直接理由を聞くまでは放置しようと話がまとまっていた。
さて、夕食時の事、モジモジしながら隆文はしのとゆいに帰宅前に受けとった女生徒の手紙を披露していた。
「これって…
「
あなたぁ、何処で貰って来たのかしら?」
しのはちょっと驚き、ゆいは嫉妬に燃えている。
「あ…あの…これは…」
今日あった出来事を話して行く隆文と、話を聞きながら、次第に揃って眉間に手を当てはじめるしのとゆい。
話が一段落したところで二人は隆文ににじり寄る。
「貴方!
この手紙は読みましたか?」
「読んだ?」
フルフルと左右に首を振る隆文。
「この子、角南 ゆかりさんをうちに連れて来なさい。」
「そうよ、ちゃんと連れて来ること。
何なら、私が学校まで迎えに行くわよ。」
状況をよく飲み込めていない隆文くんは、二人の
そして、隆文くんが夢見心地に入ったところで、しのとゆいは話しはじめる。
「良かったですね。
普通に女性の方が付き合って下さるなんて。」
ゆいが嬉しそうにしている。
「そうね、
しのも安心した顔になる。
「私達は
何処まで行っても
「でも、隆文は
「そうよ。」
ため息を漏らすゆいの頭を優しく撫でるしの。
そんなしのに寄り添うゆい。
「私達、お役御免かなぁ。」
「そうねぇ…」
二人の夜は耽ていった。
◇ ◇ ◇
「私、相方が三人になっても構いません!!」
ゆかりさんの言葉に絶句する三人。
「あのね、私達は
だからね…」
「だから何ですか?
そんなことで、隆文くんを諦めるんですか?」
ゆいの言葉にゆかりは毅然と答える。
◇ ◇ ◇
ゆかりさんが、佐々井家の門をくぐったのは、1時間ほど前。
隆文がゆかりに恋文の返事の代わりに自宅へ招く旨を伝えた結果である。
帰宅途中に、待ち伏せしていたゆいが合流し世間話をしながら家に着いたのである。
その後、しのが菓子と飲み物を出したところで、隆文が自分の身の上話しと、しの、ゆいとの関係をゆかりに話したのだ。
「…というわけで、僕は、しのとゆいをお嫁さんに貰っているので、ゆかりさんとのお付き合いは…」
「二人揃って
そこに私が入るのは問題?
私は人間で、彼女達はモノよ…」
「そうなんだけど…でもね…
僕にとっては…」
「三人で寝たの?」
ゆかりの言葉に絶句する三人。
ゆかりはため息をついた。
「隆文!
貴方、甲斐性無しって言われてるでしょ。」
甲斐性無しという単語に拭き出してしまうゆい。
あらあらと、微笑むしの。
憮然としてしまう隆文。
「分かりました。
私、角南 ゆかりは、佐々井 隆文くんに正式な交際を申し込みます!!」
何故か、素直に納得顔になって、相槌を打つしのとゆい。
「貴女方も含めてです。
しのさん、それとゆいさん。」
◇ ◇ ◇
「…ということがあったんだよぉ。」
喫茶店でお茶をしている隆文と達也。
「おうおう、モテやがって。
この野郎がぁ!」
そう言って、隆文にベアクローをかける達也。
「い…イタタ…
痛いよ、達也。」
達也の魔の手から逃れた隆文。
「俺、どうしたら…」
「付き合っちゃえばいいんじゃない?」
「そんな、節操も無い…」
お茶を一口すする二人。
「だって、
何か問題でも有るのか?」
「いやだって、仮にもしのさんやゆいさんと結婚した身としては…」
「仮にもだよな。」
「うん。」
「じゃぁ、ゆかりちゃんとは仮にも付き合えないのかい?
しのさんやゆいは、反対してるのかい?」
「…ゆかりさんが押し切る形で納得して…いる。」
「じゃぁ、ゴールは見えてるじゃないか。」
「で、でもよ…いてて!」
再び達也のベアクローの餌食になる隆文。
「
「イダダダ…」
このベアクローは、しばらく続くのだった。
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