第10話 仕組まれた人形

 僕の召喚は消滅した。

 理由は聞くまでも無かった。


「あなたぁ♪ご飯よぉ~。」

「隆文さん、起きてください。」

 朝も早くから、二人の女性つまに起こされる僕。

 目を覚ますと、しのとゆいが僕の顔を覗き込んでいる。


 ゆいは、達也の屋敷ところから、うちにくら替えした、あの人形メイドだ。

「名無しはイヤァ!!」

 というわけで、自分のモデルになった女性の名前を頂いたのだ。


「おはようございます、お二人さん。」

 着替える間もなく、手を引かれ食堂に連行される僕。


 ◇ ◇ ◇


 召喚状の一件以来、父からの連絡はパタリとなくなってしまった。

 しのにも聞いてみたが、にこやかにはぐらかされてしまう。

 学校の先生からは、進学先はどうするのか?の一点張りだ。


「まぁ、いいんじゃないか?

 お前が無事なら…

 ところでよぉ…」

 達也は相も変わらずといった感じだ。


 夕食時、しのとゆいに進路の相談をした。

「貴方が思うままの道を進みなさい。」

 優しく答えてくれるしの。

「私が付いてるから安心しなさい。

 何なら、一緒に学校行ってもいいわよ。」

 茶目っ気いっぱいに返して来るゆい。

「分かった。

 じゃ、僕は父と同じ道を歩んでみようと思う。」

 二人は頷いてくれた。


「ところで、たかふみぃ。

 私達、いつから子作りしようか?」

 ゆいの爆弾発言にせっかくの空気も打ち壊れ、僕は飲んでいたお茶を噴き出してしまった。

「そうねぇ…」

 こぼれたお茶を拭きながらしのが答える。

「こういう事は早い方がいいと思うし…

 しー姉はどう思う?」

「そうねぇ、変な虫が付いても困るわよねぇ。」

 何故か意気投合が形成されつつ有る二人。


「お…お…お休みなさぁ~い!!」

 やばいことになる前にとっとと眠ることにした僕。


「あ~あ、逃げちゃった。」

「ゆい、大丈夫。

 チャンスはこれからよ。」

 台所からは怖い会話が聞こえてきたが、聞こえなかった事にして寝る僕だった。


 ◇ ◇ ◇


 ここは達也の研究室。

 コンピュータの前に座り、何処かへ電話中の達也。

「ええ。

 ええ、そうです。

 現在のところサンプルは二人…

 ええ、そうです。

 人形aiDollがニ体です…

 はい…はい…

 え~と、生身も一名…

 はい…はい…

 たぶん、大丈夫かと…

 ええ、彼にゾッコンなので…

 あはは…

 そうですねぇ…

 はい…はい…

 分かりました。

 では、そのように…」

 電話を切り彼が振り返ると、彼の父親が立っている。


「計画通りか?」

「はい、お父さん。

 それで、素体の方は?」

「ああ、サルベージは全て終わった。

 あとは固定記憶ROMをバラシて最終確認をおこなえば、一連のプロジェクトは終了だな。」

「しかし、佐々井博士の研究は凄いねぇ。

 今でもなんだから。」

「ああ、この研究成果を持ってすれば、我々は人工知能の完成を見ることができるかもしれないな。」

 そう言葉を残し、研究室を退く父親。


 達也はコンピュータに向き直る。

「お前、やっぱり面白いヤツだよ。

 隆文。」

 達也は悪い顔で微笑んだ。

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