第6話 AI

「隆文はAIについて、何処まで知っている?」

「AIって、人工知能の事だろ?

 20世紀後半から、開発が進んでるけど、未だに実現してない技術…

 だったかな?」

「ああ。

 半分正解で、半分不正解だ。」

「どういう事?」

 片目をつむり、維持悪っぽく微笑む達也に、憮然とする僕。


「まぁ、仕方ないか。

 現在いまでも、理解出来ているヒトが少ないからねぇ。」

 達也は腕組みをすると、ゆっくりと目をつむり思案のふりをする。

 その様子を僕が眺めといると、達也はゆっくりと話し始める。


「AIというのは、二つ存在してるんだ。

 一つは、君が答えた人工知能。

 もう一つは、拡張知能というやつなんだ。」

「カクチョウチノウ??」

「ああ。

 大量かつ、多種多様なデータから、ある特定の現象を抽出、定型化を行い、汎用の処理としてシステム化する仕掛けの事さ。」

「ふ~ん。」

「あんまり、興味がなさそうだねぇ。」

 反応の鈍い僕に、ため息をつく達也。


「でも、拡張知能これ人形aiDollに使われていた…

 って言ったらどう…す…る。

 って、顔が近い近い!!」

 人形aiDollという単語が出たところで、達也の顔をガン見すべく、顔を近づける僕に、間合いを嫌う達也。

 ソファーに押し戻される僕。

 自分の首もとをまさぐる達也。

「フゥー。

 野郎の顔をガン見する趣味はないぞ!!」

「それで…」

 話しを催促する僕を見て、やれやれと呆れる仕草をする達也。

人形aiDollが、ヒトとコミュニケーションを取れるのは、クラウド上に保持されている様々な行動パターンから、ヒトの口角、目の動き、声の強弱、音程、音色、そして直前の会話文章を勘案したうえで返答を返している。

 っていうのは、説明し…た…よ…な?」

「えっ??

 そ、そうでしたっけ?」

 話の後半から四六のガマ状態になっている僕を見て、ふか~~~くため息をつく達也。

「…話しを続けるぞ。」

 達也の言葉に、首を縦に振るしかない僕。


「でだ、コミュニケーションを取るロジックに拡張知能が使われているのさ。」

「ええ?

 その部分こそ、人工知能が働いていたんじゃ…ないの?

 学校でも、そう習ったよね?」

「それは、人工知能に対して不勉強なヒトビトの戯れ事だよ。」

 手と首をヒラヒラさせる達也。

「とりあえず、恣意的なプログラムを組み込んだモノ以外に、人工知能はまだ開発できていないんだ。」

「シイテキ?」


「そうさ。

 一部のヒトビトの都合に合わせて、自立しているように見せかけながら、対象者を都合のよい方向に誘導しているのさ。」

「ふ~ん。」

 お茶を飲んで、その場の空気を濁すことにした。


「話しを…戻そうか。」

「うん。」

「さっきも触れた通り、人形aiDollはヒトとのコミュニケーション処理をクラウドに任せている。

 従って、人形aiDoll側では、一切のデータ保持は不要なはずなんだ。」

「それは、クラウド上で処理した方が都合がいいという事?」

「そう。

 世界で稼動している夥しい数の人形aiDollから、日々アップデート情報が登録され、より良い解答が導き出される可能性があるからね。

 個々が保持するよりも、全体に行き渡るようにしておけば、より自然なコミュニケーションが取れる訳さ。」

「なるほど…。

 えっ?

 じゃぁ、しのは不要なはずの情報を何故保持しつづけるんだ?

 それも、特殊な処理?ってやつで?」

 混乱する僕を見ながら、ニヤニヤしだす達也。

「なぁ、隆文。

 お前、小学六年で夢精したんだってな?」

 とんでもないプライベートが晒され、赤面を通り越し、頭まで真っ白になる僕。

「なっ…なっ…なっ…」

「なんで知ってるか?って。」

 達也の問いに、僕は激しく首を縦に振った。

「しのさんの記憶メモリーに、一部始終がバッチリ残ってたのさ!」

 満面の笑みでドヤる達也。

 …本気で殴り倒したくなった。

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