第4話 覚醒
目の前に白いモヤのようなものが見える。
おぼろだったものが、見慣れていない天井であることに気づく。
背中には馴染みのないクッションの感じがする。
徐々に覚醒していく最中、突然、眼前に現れる
「…モデル亜由美。」
僕の口から漏れた言葉に微笑み返す
僕の顔を軽く確認した後、
◇ ◇ ◇
再び目を覚ますと、とんでもない近距離で僕の顔を覗き込んでいる達也が現れた。
「うわわぁぁぁ!!」
「お、おおぉおおおぉう。」
とっさの事態に驚く僕と、僕に驚いた達也が視界から消え、床に倒れるような音がする。
音のした方向を見ると、尻餅をついている達也が居る。
「ふぅ…とりあえず、意識が戻ってよかったよ。」
「???」
達也の言葉を理解できない僕は、首を傾げるしかない。
「覚えてないのか…。」
ため息をつき、僕のベッドの横にパイプ椅子を持ってきて座り直す達也。
そして、自分がベッドに寝かされていることに気づく僕。
鼻先に付くエタノールの嫌な匂い…ここが病院の一室だという事をようやく理解できた。
「クソ真面目で勤勉なお前が学校に来ていないと、俺の彼女からお前を気遣う話を聞いたのさ。」
達也の言葉を聞きながら自分の記憶を手繰り寄せる。
「まぁ、面白くもない話だが、腐れ縁のよしみだと、お前の家に行ったのさ。」
僕は、しのに大切な話をしようとして…
召喚状を見せられて…。
「玄関が開いてたので、お邪魔したら。」
『ボクハ…ボクハ』
「お前が、しのさん抱いて気絶してるじゃないか…」
『ボクハ、ニンゲンジャナイ』
口元を抑え、漏れ出そうな嗚咽を抑え込もうとする僕を…達也は目を細めながら見つめている。
「まぁ、いいさ。
今夜は
達也はゆっくりと立ち上がると、ウィンクして立ち去ろうとする。
「あ、あの…『しの』は…。」
やっと口に出来た、僕の言葉だった。
「その事については…」
扉とベッドの中間で立ち止まり、しばし思案する素振りを見せる達也。
「まぁ、明後日以降にしようや。」
そう言い残して達也は病室を出ていった。
入れ替わるように入ってきたのは、あの看護師だった。
◇ ◇ ◇
目を覚ました翌日、僕は帰りたくない自宅に戻ってきた。
部屋は恐ろしいまでにきれいに片付けられていた。
そして、召喚状は見当たらなかった。
とりあえず、自分がデザインチャイルドだったという事実を冷静に受け止めることにした。
誰もがそうであるように、出自を選ぶことは出来ない。
「誰も…。」
自分の口から漏れた言葉が虚しく部屋に広がっていく。
学校の友人達…
先生…
後輩…
達也
僕は、僕自身を彼らにどう説明すればいいのだろうか?
この疎外感と孤独感はどうしたらいいのだろうか?
「しの…。」
幼い頃から、いつも側に居てくれた彼女に…
会いたい気持ちが抑えられなくなっていく。
時計を見れば、すでに昨日は過ぎ去っていた。
眠ることもいとわず、夜明けを待つことにした。
「明日以降なんて、待っていられない!!」
達也の
過去の人生を振り返ってみても、今ほど全力で頭を回転させたことはない。
今、僕には、やらないといけない大切なことがあるんだ!
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