第3話 乙女マリィと酒と涙1/2
パーティが今回アジトにしている街、クレアシオンにある宿屋兼酒場「ドワーフの宴亭」に着くとイツキはマスターに「マスター! この子が家のパーティの新人マリィ。よろしくね」と言った。
マスターと言われた骨格の良い男性は「おう! マリィよろしく」とマリィに言う。
マリィは「はい! マリィをよろしくです♥」とにこやかに笑った。
マスターは「料理の準備は出来てるから飲みな」とイツキ達に伝える。
「ふおおおおおお!」マリィは歓迎会の豪華絢爛料理に驚く。
そこにはメガイノシシの鍋、異国のスパイスの匂いがする大きな鹿肉の串焼き、クレクレタコのワインビネガードレッシングサラダ、メイリル鰺のフライトリュフソース掛け…。
「す、すごい… こんな料理、本でしか見たことが無い‼」とマリィは驚きのため息を付く。
イツキは「すごいだろ! ここの酒場の料理はマスターが猟師だから、料理を格安で提供してくれるんだよ」と言ってまるで自分で作ったかのようにえへん! と胸を張る。
なみなみと注がれたビールがマリィ達のいる机に次々と運ばれてきた。
「これがお酒かあ…」
目を丸くしてワクワクしているマリィ。
「さあ酒だ! リーダー、乾杯の音頭を!」とニガヨモギがイツキに話しかける。
「我がパーティにようこそマリィ!」とイツキが言うとニガヨモギとカーサンが 『ようこそマリィ!』と言って一斉に乾杯の手が上がる。
慣れないマリィは少しタイミングが遅れて乾杯の手を伸ばした。
マリィはその後早速ビールを一口飲んで「お酒って美味しい!」と微笑んだ。
しかし当然マリィは酒の飲み方を知らなかった…。
「そんなに飲んで大丈夫なのマリィ…」とカーサンは心配げにマリィに言う。
「大丈夫らよカーサン、マリィそんなに酔っていません!」と言ってビシッと敬礼するマリィ。
宴会は宴たけなわと言ったところだ。
マリィが寺院に捨てられた捨て子だと言う話題でマリィの歓迎会はかなり盛り上がった。
ニガヨモギはそれを聞いてちょっと涙ぐんでいる。
「それでーマリィはなんとイツキに一目惚れしました!」
わーいと手を上げて喜ぶマリィ。
『えっ!』とパーティメンバー全員で驚く。
マリィは「声を掛けられてときめいたのー私の初恋なのーうふっ!」と言って豪快にバタンと椅子ごと倒れた。
「…マリィはこんな年で乙女なのか…」ニガヨモギはどこかニヤニヤと嬉しい顔をしていた。
そしてニガヨモギとカーサンは顔を合わせて爆笑する。
カーサンはイツキに「イツキどうするの⁉」と嬉しそうに聞くが、イツキは少し顔をしかめ無言で日本酒を飲んでいた。
そしてようやく口を開いたイツキは「子供っぽいのは好きじゃない」と言い、ニガヨモギはイツキに対して「まだ童貞のくせに」と苦々しい顔をしながら言った。
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