いい子ポイント
「空くーん、お迎えきたよ」
先生に呼ばれてぼくは元気よく立ち上がった。先生にさようならを言ってドアに走っていった。
「空、おかえり」「お母さん!あのね……」
ぼくはすぐにぼくの「とびっきり」のお願いを言おうとした。でも先にお母さんが
「空、今日帰ったらいいものがあるよ」
と言った。ぼくはなんとなく嫌な予感がした。
家に帰ると、そこには変身ベルトがあった。
「お母さん!なんで……」
お母さんはぼくが喜んでると思ったのか
「空を早く喜ばせてあげたくて。空、がんばってたもんね」
とぼくの頭をなでようとしてきた。でもぼくはその手を払った。お母さんを悲しませたかもしれないと思って顔は見られなかった。
「空、どうしたの?保育園で何かあった?」
全然違うことを言うお母さんにぼくはイライラした。
「違うよ!ぼく、ぼく、せっかくもっといいお願い考えたのに!」
そしてぼくは外に出てしまった。お母さんが呼ぶ声が聞こえた気がしたけど無視して走った。心臓が苦しくなってもまだ走った。
「空くん?」保育園で一緒のゆみちゃんのお母さんに声を掛けられて、ぼくの足はようやく止まった。
「どうしたの?」
ぼくは答えられなかった。すると、ゆみちゃんのお母さんは携帯を取り出して電話し始めた。すぐに走ってくる足音が聞こえて振り返るとお母さんがいた。
「お母さ……」ぼくは抱きしめられた。
「一人で飛び出すなんて危ないじゃない!心配したのよ!」
普段大きい声なんて出さないお母さんが急に叫んだのでぼくはびっくりしてしまった。
「ごめんなさい……!」ぼくはわんわん泣いてしまった。
それからお母さんはゆみちゃんのお母さんに頭を下げていた。ゆみちゃんのお母さんも「なんともなくてよかった~」と言って帰っていった。
家に着いてもぼくはお母さんの顔を見られなかった。でもお母さんは
「おなかすいたでしょ?ごはんにしよっか」といつもどおりだった。
お母さんのそばに行くと
「今日はカレーだよ!空、ジャガイモむいてくれる?」
とピーラーを渡してきた。他のお友達がどうかはわからないけど、ぼくのお母さんとお父さんはぼくに色々なことをさせたいらしく、ピーラーの使い方も何度も教わってぼくはもう完璧に使えるようになっていた。
すべてきれいにむき終わるとお母さんは「ありがとう」といってシールをくれた。そのあとも食器を並べたり、流しに片したりして、お母さんからポイントをもらった。でも今日は素直に喜べなかった。
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