51:そして朝がやってきた


「……んっ」


 窓から日が差し込んできた。昇ったばかりの太陽は眩しくて、少し起きるのが億劫に感じる。でも、段々と夜の出来事を思い出してきた俺は、すぐに意識がはっきりとしてきた。


 そうか……おれ……き、昨日土屋先輩と……。


 確かに俺は先輩とはじめてのあーんなことやこーんなことを思う存分堪能した。だけどやっぱりそれが現実だったのかいまいちはっきりしない。もしかしたら夢だったんじゃないかって感じるぐらいだ。


「……つ、土屋先輩が、は、裸の土屋先輩がいる……や、やっぱり本当だったんだ」


 一緒のベッドにいる、裸の土屋先輩の存在が、結局あの夜が本当だったんだって教えてくれたけど。ああ、俺は本当に先輩と……ヤベェ、まだ元気だ。


「せ、先輩……」


「……(ヤバイヤバイヤバイ本当に真田くんとヤっちゃった……と、とんでもない夜だったよ……す、すごいの真田くん持ってたし……)」


 どうやら先輩はまだ寝ているらしい。やっぱり先輩は大人の余裕があるんだろうなぁ。俺なんか気絶するように寝てしまったのに。


 とはいえそろそろ先輩も起こさないと。正直なところ少し気まずいけど、俺たちはもう恋人同士なんだ。こんなことでつまづいている場合じゃない。


「先輩、そろそろ起きてください」


「……(真田くん好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き……またやりたいよぉ、真田くんを感じたいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉお)」


「せ、先輩?」


 あれ、なんだかモゾモゾと動き始めたけど目は開いてない。先輩は一体何をしているんだろう。


「……(真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん真田くん)」


「先輩、せんぱーい」


「はっ!? さ、真田くん!? おはよー真田くーん! 大好きぃぃぃぃい!」


「うわぁ!?」


 先輩の身体を少しさすると、すぐに先輩は目を覚まして裸なんて気にしないままぎゅっと俺のことを抱きしめてきた。夜にいっぱい触らせてもらったとはいえ、この感触にはまだまだ慣れる気がしない。


「あ、朝から元気すぎですよ先輩」


「だって真田くんにいっぱい元気にしてもらったからね! 真田くんは夜……どうだったかな?」


 少し頬を赤くしながらニコッと笑って、先輩はそんなことを聞いてきた。そりゃあ、答えなんか決まってる。ずっと好きだった先輩と、これ以上ない素敵な時間を送れたんだから。


「……これ以上ない幸せな時間でした。おれ、やっぱり先輩のことすごい好きです!」


「真田くん……私も! 真田くん、だあああああああいすきいいいいいいいいいい!!!!!!!!」


「ちょっ、せ、先輩!? そ、そこにキスつけるとまた痕が!」


 めちゃくちゃ積極的な先輩は、俺の首元に激しくキスをし始めた。もう既に背中には何個か痕があるのに、また増えちゃうよこれ。


「わざとつけてるんだもーん。嘉人くんは私の彼氏なんだってアピールするために!」


「よ、嘉人くん!?」


 え、今先輩俺のこと下の名前で読んだ?


「やっぱり彼氏は名前で呼びたいなぁって思ったの! 真田くんの名前、嘉人でしょ? これからそう呼ぶからね!」


「な、なんか照れますね」


「だから真田くんも私のこと下の名前で呼んで♪」


「えっ」


 先輩から下の名前で呼んでくれと言われたけど……あ、あれ? 先輩の下の名前ってなんだ!? ら、LINEでもユーザー名が土屋にしてるからわかんないぞ。


「あー嘉人くん、私の名前知らないんだぁ」


「い、いや、え、えっと……す、すみません。知らなかったです」


「ぶー、なら今日からずっと忘れないようにしてね。私の名前はね……綾音だよ」


 俺の耳元に囁く形で先輩は名前を教えてくれた。綾音……すっごく可愛い名前。


「はーい嘉人くん、私の名前よーんで」


「あ、綾音さん……」


「はにゃぁぁぁぁぁぉぁぁぁあああああ! もう一回、もう一回!!!」


「綾音さん!」


「もう最高……ねぇ真田くん、まだ時間あるからさ……ね?」


「え、せ、先輩!?」


 先輩は俺の手をぎゅっと握ると、そのまま俺の上に乗ってきてペロリと舌なめずりをした。あ、このパターンは絶対……。


「あー、真田くんまだまだ元気だねぇ。じゃあまた……しちゃおっか!」


「……じゃあまた綾音さんのことわからせますよ」


「私だって負けないもんねーだ! 真田くん……だーいすき!」




終わり

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