44:先輩がどうやら嫉妬しているらしい
「今日もいい天気ですねぇ……」
「ほんとだねぇ……」
今日も先輩のお見舞いに来たのだが、二日続けていい天気だったので昨日と同じく中庭のベンチでゆっくりすることにした。本当にここは陽が当たって心地がいい。もちろん、昨日みたいにくつろぎすぎて眠るなんて失態は絶対犯さないけど。
「お、二人ともここにいたのか。探したぞ」
「あれ、カタリナ?」
そんな風にゆっくりしているところに、何かの袋を持ったカタリナがやってきた。一体こいつは何を持ってきたんだろう?
「おいヨシト、今日は私も先輩さんのお見舞いに行くって行っただろ? お前の耳はちくわみたいに穴が空いていて、聞いた言葉がすっぽ抜ける仕組みになっているのか?」
「ご、ごめんって……」
そういえば朝ゲームをしながらカタリナにそう言われたような気がする。でももう最近の俺は先輩のことしか考えられなくて、四六時中先輩のことが頭の中にある状態だ。だから他のことがすっぽ抜けやすくなっているのは間違いないだろう。
「まぁいい。先輩さん、これお見舞いの品だ。ヨシトがいないところで開けるといい」
「え? カタリナさんそれってどういうこと?」
「それは見ればわかるさ。ヨシト、それを無理やり開けたりするなよ」
「しないけどお前は一体何を持ってきたんだ!?」
「乙女同士の秘密の品だ」
なんだよそれ……。とはいえ、無理やり見るのは良くないし、さすがのカタリナも先輩が困るようなものを持っては来ないだろう。でも気になるなぁ、乙女同士の秘密の品が。
「あー、お姉たちここにいた!」
タイミングがいいのか悪いのか、ちひろさんもきた。そういえば、カタリナがいる時にちひろさんと会うのは初めてだよな?
「あれ、ちーちゃん」
「また真田くんと一緒にいて……はっ!? な、何この美人な人!? も、もしかして三人で満天の青空の下でえ、えっちなことを……!?」
「なんでそうなるの! カタリナさんも今来たところだし、私と真田くんはここでゆっくりしてただけだよ!」
「なぁヨシト、この先輩さんに負けず劣らずの愉快な人は誰だ?」
「先輩の妹のちひろさんだよ。ちひろさん、こいつは俺の家でホームステイしている留学生のカタリナです」
「カタリナだ。よろしく頼むな」
「ほ、ホームステイ……同じ屋根のした……はっ!?」
「ちひろさんが考えているようなことは決してありませんから!」
「ご、ごめんなさい……。は、初めましてカタリナさん。お姉の妹のちひろです」
「いやー、姉妹揃って面白い人達だ。なぁヨシト」
「ま、まぁ……」
それは否定できない。相変わらずちひろさんは謎にえっち判定が厳しいし、今も謎に顔を赤くしてる。これは多分、もうゆっくりできる気がしない。
「だがヨシト、確かに私たちの仲は特別なものだよな。同じ屋根の下で暮らしているわけだし、どうしたって親睦は勝手に深まってしまうもの。この間も、夜遅くまで二人きりで……」
「あ、あああ、あああああ! え、えっち! や、やっぱりえっちな関係なんだ! ふ、二人とも破廉恥! えっちなのは死刑!!!」
「ち、ちひろさん勘違いしないで! 夜遅くまでゲームしていただけですから!」
「で、でも夜遅くに二人きりでいたんでしょ!? そんなのもうせ、せ、せ……え、えっち! えっち! えっち!!!」
「AHAHAHAHAHA! 愉快すぎるな先輩さんの妹!」
「笑っている場合じゃないだろカタリナ! せ、先輩も止めてくだ……先輩?」
「二人きりで夜遅くまで一緒にいたんだ……」
「え?」
先輩がどこか圧を感じる笑顔を俺に向けながら、いきなりぎゅっと俺の手を握ってきた。俺はそれにびっくりしてつい言葉を失ってしまう。ど、どういう状況だこれは!?
「先輩さん、嫉妬してるんだろ?」
「え!? し、嫉妬!?」
「……うん、したよ。だ、だって……わ、私だって真田くんともっと一緒にいたいんだもん」
カタリナが少し煽るように先輩に聞くと、すると先輩はさらにぎゅっと俺の手を強く握りながらそれに頷いた。せ、先輩が嫉妬した……なんだかそれを聞いて、俺はつい嬉しく思ってしまった。いやだって……好意的に思ってないと、そんなこと思わないじゃないか!
「素直になったじゃないか先輩さん。あとは記憶が元に戻れば全てうまくいきそうだな」
「そ、そうかな……? でも、戻らなくても私はきっと平気な気もするんだ」
「ほぉ」
「だって、今も真田くんは私の隣にいてくれるもん!」
「だってさ、ヨシト」
「…………」
やばい、顔がすごい熱い。先輩が本当にちゃんと俺のことが好きかどうかは定かではないのに、それでもこんなこと言われたらもう……たまらなく嬉しい。
「妹さんはどうだ? 二人の関係を見て」
「えっち!」
「あ、もうこれはちーちゃんえっちしか言えないモード入っちゃったね」
「そんなモードがあるんですか!?」
どうやらちひろさんはちょっと理性がどこかに行ってしまったみたいだ。しばらく元に戻るまではそっとしておこう。
「さぁ真田くん、またここで寝ちゃってもいいよ。私が枕になるから!」
「ね、寝ないですから!」
「二人ともお熱いじゃないか」
「えっち!」
ああ、本当に賑やかだなぁ……。
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