45:後輩くんの秘蔵写真を見ていたら……


「ふあぁ……もう夜かぁ」


 病院のベッドに横たわりながら、すっかり暗くなった外を見てついそんなことを呟いてしまう。入院すると退屈で時間が長く感じるって話を聞いたことがあるから、こんなにあっという間に感じるのはきっと真田くんが毎日お見舞いに来てくれるからだよね。


 今日も楽しかったぁ……。真田くん以外にもカタリナさんやちーちゃんが来てくれたからすごくにぎやかだったし、真田くんとは私から手をつないじゃったし……ああ、もう私は本当に彼のことが好きなんだ! 


 だからこそ、真田くんと初めて出会った時のこととか一緒にバイトをした日々、そして遊びに行った時の楽しい思い出を全部思い出したい。私が知らない私と真田くんとの思い出をもっともっと私は知りたいんだもん。


 でも全然記憶は元に戻る気配もないや……。え、エッチなことを考えたときになぜか断片的に思い出しちゃうけど、もっと真っ当な思い出し方があるはず。何か思い出の物とかがあれば……。


「そういえば、カタリナさんがくれた差し入れまだ見てないや」


 乙女同士の秘密の品だ、なんて言ってたけど一体なんなんだろう。ふと気になった私はベッドから起き上がって袋を取り出し中身を見てみる。あれ、なんか写真入れが入ってる。なんだろう……!?


「こ、これは……お、おうちにいる時の真田くんの写真!?」


 袋の中身に入っていた写真入れには、おうちの中でリラックスモードの真田くんがいっぱい映っている写真ばかりだった。そして、袋の中にはカタリナさんからの手紙も入っていて、私はそれを読んでみる。


『先輩さんが記憶を失う前に欲しがっていた写真を渡しておく。今回はタダでいいぞ♪』


 え、え、え? わ、私こんな写真を欲しがっていたの? そ、そりゃ真田くんの写真はいくらでも欲しいけど……こ、こんな本人の知らないところで勝手にプライベートの写真なんか見ちゃっていいの?


 い、いやだめだよ! こんなの真田くんが知ったら悲しんじゃうし、いくらなんでも勝手に覗き見るようなことは……。


「……で、でもちょっとだけ。ちょ、ちょっとだけ……」


 で、でもせっかくカタリナさんからもらったんだからそれをないがしろにするのも良くないよね。うん、そうだ。ちょ、ちょっとぐらいは見てもバチは当たらないはず。決してすごく見たくてうずうずしているわけじゃないよ。


 ……


 ……


 ……


(あああああああああ! こ、このパジャマ姿の真田くんすごく可愛い!!! い、今すぐ抱きしめたい、い、いっぱいなでなでしてあげたい!!!)


(いやああああああ! こ、こっちのだらーんとしている真田くんもすっごく可愛くていい!! か、カタリナさんはこんな姿の真田くんを目の当たりにしてて平気なのかな……わ、私だったらすぐに……)


(この制服姿の真田くんはすごくかっこいい! 普段は真田くんの制服着ているところなんて見れないから、こんな貴重な姿を見れるなんて……がふっ)



「……はっ!? な、なに写真に見入っているの私!? こ、こんなの良くないよ……良くないって! ああ、でも写真をどうしても見ちゃうよ。あ、この写真もすっごくいい……うっ!」


———

「なんでホテルに連れ込めそうだった今日に限ってこんなことになっちゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお! 神様、お願いです真田くんとえっちさせてくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! 私のパンツ、チラチラ見ちゃう真田くん可愛すぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

———


「い、今のは……な、なんか私、とんでもないことを言っていた気がするんだけど」


 真田くんの写真をいやらしい目で見ていたら、また変な記憶が蘇ってきた。い、いやきっとこれは何かの間違いだよ、絶対そう! こ、こんなこと私が思うはずがない——うっ!?


———

「……ね、ねぇカタリナさん」


「ん? どうした先輩さん」


「さっきの写真、一万円で売ってくれる?」


「wow……もちろんオッケーだ」

———


 こ、これは……真田くんとの写真を一万円で買っていた記憶!? そ、そりゃあの時買った写真も、今見ている写真も一万円どころか、私財投げ売ってでも手入れる価値のあるものだとは思うけど……ま、まさかこんなあからさまに手に入れていたなんて。


 うう……どうして私は真田くんのことをエッチな目で見た時に記憶が戻ってくるの? しかも思い出した記憶もろくなものじゃないよぉ……こ、これじゃあ真田くんに少しずつ記憶が戻りつつあるってこともいえない。


 ……あれ? で、でもエッチなことをした時に記憶が戻るってことは……も、もしかしたら、き、キスしたら……やっぱりちゃんと記憶を取り戻せるんじゃ。


「……し、しちゃおうかな。ちゃ、ちゃんと事情を説明すれば……真田くんもしてくれるよね?」


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