バイト先の可愛い先輩に子供扱いされているので、見栄張って帰り際に先輩の前で使う予定がない0.01mmのアレ買ってみた。すると翌日からどうも先輩の様子がおかしい
28:ゲームセンターで先輩に良いところを見せたい
28:ゲームセンターで先輩に良いところを見せたい
「美味しかったぁ……。先輩、この店紹介してくれてありがとうございます!」
「よかったぁ、真田くんが喜んでくれて。また今度一緒に行こうね!」
「はい! ところで、次はどこに行くんですか?」
「えーっとね、次は——」
「おいヨシト、あそこのゲームセンターに私は行きたい。てか行くぞ」
「お、おい!」
昼ごはんを食べ終わって、次に行く場所に先輩が案内しようとした時。カタリナがゲームセンターを見つけて俺の手を引っ張り、有無も言わせぬまま俺は連れられてしまった。そうだ、カタリナは屈指のゲーム好き。ゲーセンなんか見つけたらそこに引き寄せられてしまうやつだった。
「ま、待って!」
もちろん先輩がそのまま俺たちを放っておくわけもなく、先輩もゲーセンの中に入る。
「おお、先輩さんすまないね。私はゲーセンを見かけるとゲーマーの血が沸き立ってつい寄ってしまうんだ。ちょっくら私はあそこの格ゲーをしてくるから、二人で暇を潰しておいてくれ」
そういってカタリナは格ゲーが並ぶところにそそくさと行ってしまった。あいつ、一応今日は恋人のフリってことで来てるのに……いや、カタリナは本当のデートでもゲーセン見つけたら格ゲーを優先するか。
「仕方ない。先輩、俺たちも何か遊んでいきましょう」
「う、うん! でも私あんまりゲームセンターとか来ないからよくわかんないんだよね……」
「そうなんですか?」
ゲーム好きな俺としてはそんな人がいるってことが意外だった。でも最近はゲームセンターも下火になりつつあるし、遊びの選択肢として選ぶ人も少なくなっちゃったのかもしれない。
「うん、あんまり興味がなくて。でも真田くんとならどこでも楽しいから問題ないけどね!」
「え? あ、ありがとうございます……」
急に嬉しいことを先輩から言われて、俺はびっくりして顔を背けてしまう。ああ、めちゃくちゃ嬉しくて気分が高揚してる。でもそれを今先輩に見せるわけにもいかない。でも何かで発散しないと……。
「あ、このでかかわのぬいぐるみ可愛い! ごりら可愛いなぁ〜」
ふと先輩が、クレーンゲームの景品である人気漫画「でかかわ」のぬいぐるみを物欲しそうに見ていた。台を見るに、あのぬいぐるみを取るのは至難の技だと思う。現に隣で同じ種類の台をやっている人が全く取れずに金を巻き上げられていた。だけど、ここで俺が先輩にあのぬいぐるみをプレゼントできれば先輩にいいところを見せられるだろう。よし、ここはぬいぐるみをとって先輩にかっこいいところ見せるぞ!
「先輩、俺があれとります」
「え、良いの? でも真田くんにそんな苦労かけるわけには……」
「大丈夫ですって、任せてください」
早速俺はお金を入れてクレーンゲームを始めた。あ、やべ。久しぶりにやったからミスった。でも慣れていけば絶対取れるはず。よし次だ次……。
「さ、真田くん……」
「次こそは……次こそは……」
なんて考えてプレイしていたら、見事クレーンゲームの沼にはまってしまった。でかいぬいぐるみなのにクレーンの力が明らかに弱く設定されていて、テクニックで押し通すしか手段はなさそうだからあれこれ試してみたは良いものの……一向に取れる気配はなく、先輩の前で醜態を見せる始末。
最悪だ……先輩の前で良いところを見せたかったのに。
「おおヨシト、クレーンゲームしてるのか」
格ゲーをやり終えて満足したのか、カタリナが満足そうな表情をしながら俺たちのところにやってきた。
「カタリナ……俺は今集中してるんだ。邪魔しないでくれ」
「まぁそうカッカするな。私にも一回やらせてみろ」
「まぁいいけど……どうせ取れないだろ」
「ふん、私をお前と一緒にするな。……ほら」
「え」
俺があれだけ苦労したものを、カタリナは一発でとってしまった。嘘だろ……こ、これじゃあ俺がただ恥かいて、お金をドブに捨てただけじゃないか!
「がっかりするなヨシト、運がなかっただけだ。あと私よりゲームが下手なだけ。ほら、ぬいぐるみ」
カタリナが励まし風に煽ってきやがった……けど何も言い返せない。
「うう……。せ、先輩。ぬいぐるみです……」
「お、落ち込まないで真田くん! 私のために頑張ってやってくれただけで十分嬉しいから!(落ち込んでる真田くんめちゃくちゃ可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! ぬいぐるみみたいに抱きしめてあげたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!)」
クッソ、先輩に気を使わせてしまった。もし次機会があったら絶対一発でぬいぐるみをとって先輩にいいところ見せてやる!
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