20:先輩に背中を流してもらう。……あ、あの何か当たってるんですけど


「いやー、真田くんとこうして一緒にお風呂入れて私は嬉しいよ〜。どう、真田くん。お風呂気持ちいい?」


「ま、まぁ……。あ、あの先輩。な、何も一緒にお風呂入らなくてもいいじゃないですか!」


 なぜか先輩と一緒にお風呂に入ることになってしまってから、俺と先輩はぎゅうぎゅうになりながら一緒の浴槽でお湯に浸かっていた。一緒に入ると言っても、まさかこんなことになるなんて思っていなかった俺は、ただただ視線をそらすことで精一杯だった。


 だ、だってバスタオルを羽織っているとはいえ、先輩はわざとらしくゆるーく着てるから、今にもぽろっとおっぱいが出てきそうで……あああ! 俺の理性が持つ気がしないよこれ!


「えー、それはダメだよ。私は真田くんと裸の付き合いをしたいんだからさ。ほらほら、もっとくっついてお互いもっと仲を深めよう!」


「え!? そ、それは……お、俺そろそろ身体洗います!」


 これ以上先輩と一緒に入っていたら自分がどうなるかわからない。そう思った俺は、浴槽から出て身体を洗うことにした。ひ、ひとまずここでさっさと体を洗って風呂から出よう。うん、そうしよ——


「そしたら私が真田くんの背中洗ってあげる!」


「……ええ!?」


 いや、先輩はそう簡単にいかないようだ。浴槽から出ようとした俺の手を掴んで、満面の笑みを浮かべながらとんでもない提案をしてきた。せ、背中を洗うって……な、なんで先輩はそこまでしようとするんだよ!? そ、そんなの恋人の間柄でもそうそうしないだろ!?


「そ、そんなことしなくていいですよ先輩!」


「やーだ、するもん。私は真田くんの身体洗いたいんだから!」


「そ、そんなこと言ったって……うわぁ!?」


「ほらほら〜ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴー、シコシ」


 先輩が素直に俺の言うことを聞くはずもなく、半ば強制的にバスチェアに俺は座らされて、先輩が優しく俺の背中を洗い始める。ああ、なんだこれ。いざされ始めると先輩の手加減が程よくてすごく心地よくて、もっとしてほしいとすら思ってしまう。


 こ、こんなこと許されていいんだろうか? 俺、明日死んじゃうのかな?


「どう、真田くん?」


「……き、気持ちいいです」


「それは良かった! ならもっとしてあげるね!」


「……!?」


 そう先輩が言った後、背中に何やら柔らかい感触を感じた。それがなんなのか、俺はすぐに察することができた。ただ、それが本当にそうなんだってわかってしまったら……俺はきっと、この場で鼻血を垂らしながら気絶してしまうだろう。だからここは我慢だ、我慢……我慢……。


「真田くーん、どう?」


「ど、どうって……」


「私のあれ、当たってるの気づいてるでしょ?」


 おそらく先輩は確信犯だ。先輩に背中を向けているからどんな顔をしているのかはわからないけど、きっといたずらな笑みを浮かべて俺をからかっているに違いない。で、でも俺だって男としての意地がある。先輩の思い通りに鳴ってたまるもんか、絶対乗り切ってやる!


「な、なんのことですか? 俺にはさっぱりわかりません!」


「えー、そうなの。じゃあ……教えてあげるね。当たってるのは……私の、おっぱ——」


 先輩が耳元で当たっているものの正体を俺に伝えようとしたその時。


「て、停電!?」


 タイミングがいいのか悪いのか、家が停電になってあたりが真っ暗になってしまう。で、でも助かった。これで何事もなく風呂から出ることができるはずだ。ふぅ……危ないあぶな———


「うわぁぁぁああああ停電だああああああああああ暗いの怖いよ真田くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」


 それは突然のことだった。どうやら先輩は暗闇がめちゃくちゃ怖いらしく、悲鳴をあげながらぎゅっと俺のことを抱きしめてきた。しかも、運が悪くバスタオルは落ちて……俺は、裸の先輩に抱きしめられた。


 つまり、な。


「あああああああああああああああああああああああ!」


 あまりに甘美なその感触、そして香りが一気に俺の体に流れ込んで。頭の中がピンクになって何も考えられず、理性が一気に吹き飛びそうになるのを叫びながらこらえて……俺は風呂場からなんとか出て行った。


 ……やっぱり先輩のおっぱい、すごい。

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