10:先輩と二人きりで……
「いやー、本当に三角チョコパイは美味しいねぇ!」
「間違いないですね」
バイト終わりに。俺たちはマクド●ルドによって、一緒に三角チョコパイを店の中で食べていた。ああ、このあったかいチョコが美味しいのはもちろんだけど、それを包み込んでいるパイ生地もめっちゃ美味しい。この二つが奇跡的なコンビネーションを見せているからこそ、これは凄まじく美味しいんだろう。
「うーん、もっと食べたくなっちゃったから追加で買ってくるね。真田くんは何かいる?」
「いや、俺は大丈夫です」
「オッケー。じゃあ行ってくるねー」
先輩は軽く俺に手を振って、レジに向かっていった。それにしても土屋先輩、思っていたよりずっと大食いなんだな。三角チョコパイ以外にもハンバーガーにポテト、それにナゲットまで食べてるし。それであの美ボディなんだから、結構筋トレとかもしてるんだろう。コツとか教えてもらおうな……。
「お待たせー。いやー、やっぱり労働の後のマックは最高だね! この後もたっぷり運動するし、ご飯が捗るよ!」
「運動? やっぱり先輩、ジムとか行ってるんですか?」
「あ、えっと……う、うん! ジム行ってるよー」
「やっぱり! 何かコツとかあるんですかね、俺も鍛えてるんですけどなかなか成果が出なくて」
「なかなかすぐに結果は出ないから、根気強くやることが大切だよ。ところで真田くん、実は私、他にもっと美味しいお店知ってるんだけど……行かない? てか行こう!」
「え、まだ食べるんですか!?」
こんなに食べてるのにまだお腹が空いてる先輩に、正直俺は驚きを隠せなかった。すごいな……今度オススメの食べ放題でも紹介するか。
「うん、メインディッシュがまだ残ってるからね。いやー、楽しみだな。それじゃあ行こっか真田くん!」
「うわぁ!」
半ば強制的に俺は先輩の手に引かれ、店の外に出た。相当ワクワクしているのか、先輩は鼻歌まじりで歩いているけど、一体俺はどこに連れていかれるのだろうか。それにメインディッシュってことは焼肉とかに連れていってくれるのかな? それともしめのラーメンとか?
「せ、先輩、どこに行くんですか?」
「んー? とってもいいところだよ。内容は……内緒」
「内緒って……教えてくださいよ!」
「それじゃあサプライズにならないじゃん! 楽しみに待っててね〜!」
サプライズ……? そんなにいいところへ連れてってくれるのか? でも大学生は高校生と違ってお金を持っているし、俺が想像しているものよりはるかにいいところに行くのか?
それとも、実は飯屋じゃなくて他のところに連れて行ってるのか……!?
「さーて、もうすぐ……あれ、ここじゃない? えーっと、こっちかな」
スマホをチラチラと見ながら先輩は目的地まであるているようだけど、どうも一向に着く気配がない。あっちこっち先輩がキョロキョロと歩き回りながら探しているようだけど、もしかして先輩は方向音痴なのかな?
「あ、あれ……こ、こっちじゃ……ち、違う…………ど、どこぉ?」
どこに向かっているのか教えてもらえないので、俺も一緒に探すことができない。だから先輩と歩きながらただただ時間が過ぎ去っていく。
……でも、こうやって先輩と手を繋ぎながら歩けるなんて。恋人みたいなことができて正直めっちゃ嬉しい。今日は絶対手を洗わない。
「え……ぜ、全然着かないんだけど。な、なんで……ど、どうして……」
「あれ、先輩。もしかしてここに向かってました?」
「え……? せ、銭湯……」
とはいえいよいよ足が疲れてきたって頃合いに。ちょうど目の前に銭湯があった。もしかしたら先輩はバイトで疲れを流すためにここに来ようとしていたのかもしれないし、他の場所にほんとは向かっていたのかもしれない。
その真偽のほどはわからない。まぁでも、ここで一風呂するのも悪くないよな。
「あんまり人もいなさそうですし、ゆっくりできそうですね」
「………………うん、そうだよ。こ、ここに向かってたんだー……真田くんも疲れてるだろうって思ってね」
「じゃあ行きますか。俺、銭湯とか久しぶりですよ」
「そ、それはよかったぁ。い、いっぱい疲れを癒してねー……」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! な、なんでよりによってラブホまでの道に迷っちゃったの私! もう最悪…………真田くんとえっちするつもりが銭湯に来る羽目になるなんて…………いっぱい真田くんと気持ちよくなりたかったのにいいいいいいいいいいいいいいい! ……あれ、でも待って。銭湯でこっそり真田くんの裸……覗けるんじゃ? う、うへへへへへへへへへへへへ……! 不幸中の幸ってやつかなぁ……うひひひひひひひ」
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