9:先輩にうまーく言いくるめられた


「あのー土屋先輩。先輩ってネット掲示板とかやってます?」


 先輩にち●ぽの大きさを聞かれた日の翌日。俺はバイトが始まってしばらく経った後に、さりげなく掲示板のことについて聞いてみた。本当はすぐ聞こうかと思っていたんだけど、珍しく結構お客さんが来たので一息つくまで聞けなかったんだ。


「ひゃ、ひゃい!? な、なにそれ私知らないなぁ〜」


 すると先輩は明らかに動揺した様子を見せていたが、口では知らないと言っている。うーん、そうは言われてもこの反応じゃ嘘をついているって疑わざるを得ない。


「5chみたいなやつですよ。最近友達が面白いスレを見つけて、それを読んでみたんですけど女性って結構エグいこと考えているんだなぁって思ったんですよね」


「へ、へー。まぁそりゃ、女の子も中には変なこと考えちゃう人もいるんじゃないかなぁ。あ、私は清廉潔白だから安心してね!」


 清廉潔白な人がち●ぽの大きさを聞いてくるとは思えないけど……。やっぱり怪しい。もっと攻めてみるか。


「そのスレの内容、なんか女子大生が彼女持ちの後輩を奪いたいってものだったんですよ。先輩、どう思います?」


「え…………。あ、そういえば真田くん。最近マクド●ルドで三角チョコパ出たみたいだけど食べた? あれ、私大好きだから早く買いたくて仕方ないんだぁ〜」


「いや、まだ食べてないですね。俺も好きなんで食べたい……………って、話逸らさないでください!」


「え!? な、なんの話してたっけ。さ、最近イヤホンを爆音で聴いてたから耳が遠いんだよねぇ〜」


 そうやってシラを切っているようだったけど、明らかに先輩は焦っている様子だった。なんだかいつもされっぱなしだからこそ、俺が優勢なこの状況は目新しくてなんだか気持ちが謎に高ぶってくる。よし、このまま攻めていくぞ!


「じゃあもう一回言いますね。今度は耳かっぽじって聴いてください。女子大生が彼女持ちの後輩を奪いたいってものだったんですけど……先輩はどう思います?」


「は、はー……そ、そんなことがあるんだねぇ。ま、まぁ好きな人と結ばれたいって気持ちは誰にだってあるし、それが叶うならなんだってしちゃう人もいるんじゃないかなぁ。うん、それは悪いことじゃないと思う!」


「え、でもやっぱり人の彼氏取るのはよくないことじゃ」


「いや、合法だよ。人の彼氏を奪うのは合法」


「そ、そうですか……。でも先輩、なんだかそのスレの人、どうにも先輩がこの間していた行動と同じことしてるような気がしたんですけど、それって」


「気のせいだよ。私、掲示板なんかしてないもん」


「せ、先輩!?」


 訴えかけるような視線を送りながら、先輩は俺の手を握って断言した。いきなり手を握られてた俺はあたふたとしてしまい、ついつい頭の中が真っ白になってしまう。女性経験の無さが完全に弱点になっているじゃないか俺!


「そういう略奪を考えちゃう女の子もいると思うけど、私はそうじゃないよ。私は真田くんの恋路を応援してる! もしかしたら私がそんなこと考えているんじゃないかって不安にさせちゃったのかもしれないけど、そんなこと全然考えてないからね!」


 目をキラキラ、怖いぐらいに輝かせて先輩がそんなことを言うから、俺は自分が先輩のことを変に疑ってしまったことに罪悪感すら感じてしまう。い、いやでも怪しいのは明らかだし……先輩が嘘をついている可能性も……。


「お願い……真田くん。信じてほしいな」


 お客さんが誰もいないからか、先輩は店の中でぎゅっと俺のことを抱きしめた。あああああああああああああああああああああ! 前にも抱きしめられたから少しは耐性がついているのかと思いきや、全くそんなことはない。先輩のいい香りが頭の中をふわふわさせて、当たってしまう胸が俺の理性をじわじわと追い詰めてくるんだから。


 も、もう駆け引きとかこんな状態じゃできない……こ、これ以上追求なんか無理だよぉ……。


「わ、わかりました……せ、先輩のこと信じます……」


「よかった! それじゃあ真田くん、今日は三角チョコパイ一緒に食べに行こうか! 今日こそ時間は空いてるよね?」


「あ、空いてますよ。それじゃあ一緒に食べに行きますか」


「やったぁ! それじゃあ、残りの仕事も頑張ろう!」


 そんなわけで、俺は先輩のことをうまく追求することができずにうまーく言いくるめられてしまった。……いや、先輩はきっと本当にそんなことをしていないんだ!





「よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!! 掲示板のこと聞かれた時はどうしようかって思ったけど……ようやく……ようやくだよ……やっと……やっと私の悲願が叶うんだね…………!!! ま、まだ練習はできてないけど……きっと、なんとかなるはず! やったああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


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