犬と社交
休日の朝。
公園の至る所に、散歩中の犬とその飼い主がいる。
いつも散歩で顔を合わせるのだろう。
飼い主同士が挨拶を交わしている場面をよく見かける。
親しげな飼い主たちが犬を連れて集まり、ちょっとしたグループをつくっている時もある。
人間たちは会話に花を咲かせ、犬たちは犬なりにスキンシップを楽しんでいる。
犬たちは犬種もサイズもバラバラで、小型犬もいれば中型犬もいる。はしゃいだ様子で舌を出すチワワが、とても可愛らしい。
その賑やかな光景は、なんとなく学生時代における教室を思い起こさせる。
休み時間の、教室。
あの子やあの子に、あの子たち。
クラスメイトが集まり、ワイワイお喋りしている。
それを、自分の席からバレないように覗き見する。
犬連れのグループを、一組の犬と人間が少し離れたところから眺めていた。
犬は柴犬で、なんとなく人間っぽい表情を浮かべている。
犬と人間に会話ができるのなら、こんな会話をしていただろうか。
「すまないね。輪に入っていけなくて。人見知りなんだ。賑やかなのには、近寄れない」
「いえ、いいんです。わたしも社交は苦手ですから」
「そんなことを言って、本当は仲間が欲しいだろう」
「無理をしてはいけません。そのうちに、時が来れば仲間もできるでしょう」
柴犬と人間は連れ立って歩き出した。
どちらが引っ張るでもなく、同じペースで歩いていた。
ひとりでもいいし、ひとりじゃなくてもいい。
今日もきっと、やっていける。
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