エピローグ

あぁあ、もうやーめた。



「桜野てんのデータを消去しますか。」


「はい。」


「本当にいいですか?」


「はい。」


私は迷いなくそう答えた。


何を隠そう、ここはサイバースペースだ。だから、いくらでもデータを消去出来る。


国民シュジンコウ計画が施行された今、人々はサイバースペース、通称バーチャル空間で生活するようになった。


それが今の日本の当たり前だ。


勘のいい人ならもう気づいただろう。


そう、「桜野てん」とは、サイバースペース上の私のアカウント名だ。実名ではない。


そして、もうひとつ。


今の日本では、人生をやり直す事が簡単に出来るのだ。だって、データ上で生活しているのだから。


だから、私は「桜野てん」としての高校生活のデータを削除した。高校生活の選択をどこかで間違えたからだ。


一体どこで間違えたのだろう。


偏差値?性格?外見?・・・


多分、全部だろう。


そう思った瞬間、無意識にズボンの裾をぎゅっとにぎりしめていた。


なんでこうなってしまったのだろうという少しの後悔もあるが、そんなにへこむことではない。


だって、人生は何度でもやり直せる。


だから、国民シュジンコウ計画というのかもしれない。



とにかく、次の設定はどうしよう。


偏差値は、60?くらいの高校。


外見は、髪を程よく巻いたおしとやか系。


性格は、程よい陽キャ。うるさい系ではなく、友達が多い系の陽キャにしよう。


制服は、ブレザーとチェックのスカートがいい。


もちろん、電車通学ではなく自転車通学だ。


きっと、これがなりたい自分の理想像なのだろう。





さぁ、名前は何にしよう?


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私はシュジンコウ はるかぜ @automne1013

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