第二話
『新入生、起立。』
入学式が始まった。
いよいよ高校生かぁという実感がふつふつと湧いてくる。周りを見るといかにも真面目そうな顔つきをした同級生がずらりと並んでいた。
真面目の量産型
体育館の教壇から見える光景はこんな言葉が1番似合うのだろうと首席の子が話しているのを見て思った。
中学までは『真面目』が一個のステータスだった。それは、全員が全員真面目じゃなかったからだ。勉強に特化した人もいれば、運動に特化した人もいて、とにかくいろんな人がいた。でも、高校は違う。この入学式でそう実感した。
そりゃあ、ステータス『真面目』の人が300人も集まったら、それはステータスじゃなくなる。勇者が300人もいるようなもので、それはもう勇者が一般人ということだ。
きっと、この入学式に主席した誰もがそのことに気付いたと思う。いや、もっと前から気付いていたかもしれない。そうだったら、私はもうすでにいろんな意味で出遅れている。
今日は朝から衝撃的なことばっかだなぁ。
そんなことを思っていたら、いつの間にか入学式が終わっていた。
「ねぇねぇ、次何するんだっけ?」
「えっ、あっ、たぶんホームルームやと思うよ。」
突然の事すぎて、思わずびっくりしてしまった。それと同時に、話しかけ方が陽キャだなぁと思った。
「ホームルームってなんだろね〜。あっ、隣の席の桜野てんちゃんだよね?うちは、杉咲かなで。お互い名前が平仮名やん、仲良くしよ!これからよろしくね。」
びっくりするほど陽キャって感じで、まぶしい。
「あっ、本当だ。名前がひらがななの一緒だね。かなでちゃんって呼んでも大丈夫?」
「いいよ〜、じゃあうちもてんちゃんって呼ぶね。」
「うん、これからよろしくね。」
「てんちゃん、緊張してる??もしかして急に話しかけるの嫌だった?」
緊張しているのが相手に伝わっているらしい。そりゃあ、とても緊張するに決まってる。同じ高校なのに、真奈ちゃんぐらいの陽キャがいるからだ。当たり前のことかもしれないけど、ちょっと驚きが隠せない。
癖でスカートをぎゅっと握りしめた。
「全然!むしろ嬉しかった。うちさ、結構人見知りでさ。声かけてくれてありがと。」
「よかった。嫌がられたのかと思った。うちも、人見知りなのよね。あっ、そろそろホームルーム始まるよね。じゃ、これからよろしくね。」
「うん。」
絶対人見知りじゃないだろと思ってしまった。
そういえば、真奈ちゃんも人見知りだと言ってた気がする。絶対違うのに。そういうとこも真奈ちゃんと似ていて、かなでちゃんには不思議と親近感が湧いてきた。
そう思うと、少しだけ高校生活に希望の光がさした気がした。
ふと横を見ると、窓から見える太陽の光が散りかけの桜を明るく丁寧に照らしていた。
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