普段は見せない武器で無双するキャラクターに憧れた男の探索者記録~力を隠すその探索者は刀を握れば最強です~

みょん

とあるキャラクターに憧れる探索者

 ある時、日本に……否、世界にソレは現れた。

 深淵へと続く暗闇の世界、それはある時期を境に【ダンジョン】と呼ばれるようになった。

 今まで普通の生活を謳歌していた人々にとって、ダンジョンの登場は驚きと共に夢を与えることになる。

 ダンジョンの登場と共に人々にスキルやレベルという概念が生まれ、それは先天的であったり後天的であったりと、その人間の運や努力に左右されるステータスになったわけだ。


 ダンジョンの登場以降、そういったレベルの概念はより一層人々に対して格付けを行うことになり、強い力を持つ者は周りからも、そして国からも重要な存在とされ多大な期待と援助を受けることが可能になる。


 そしてその反対も然り、大して力を持たない人間はそれ相応の待遇しか受けることは出来ず、常に自分の限界との戦いとなり、それよりも上を行く人間たちに嘲笑われる日々を送ることとなった。


 切望と嫉妬、希望と絶望、その表裏一体を表すかのように二分されてしまった人々の構図は時に大きな争いを生んだりと問題は山積みで、ある意味で世紀末のような世界観となってしまった。


 まあとはいえ、それも時間を置けば段々と落ち着いてくるのは必然であり、差別などはまだ残り続けてはいるものの、人々は手を取り合いながら未曽有のダンジョンという存在に挑み続けることになるのだった。


 さて、そんな現代に生きる一人の少年が居た。

 幼い頃より高い能力とスキルを併せ持ち、確実と言えるほどに将来が約束された有望な少年なのだが……少しばかり、彼には困った趣味というか拘りがあったのだ。


「やっぱりさぁ。真に強い奴ってのは力を隠してなんぼだと思うんだよな。もちろん一緒に探索してくれるメンバーに迷惑をかけないってのは前提だがな」


 そう豪語したのは時岡ときおか瀬奈せな、女の子のような名前だが立派な男の子である。

 日本人特有の黒髪黒目という至って普通の少年だが、そんな彼の周りにはダンジョンに蔓延る魔物の死体が大量に転がっている。


「分かってたけど、刀を使うまでもなかったな。こいつで十分だ」


 瀬奈は手に持つ弓を見つめてそう言った。

 この世界ではスキルによって各々の人間が扱うことの出来る大体の武装が示されるわけだが、彼が本来得意とする武装は弓ではなく刀だ。

 ならばなぜ本来の武器を使わないのか、それが彼の拘りだった。


「自分の力を最大限発揮出来る武装じゃないサブ武装で普段は戦い、ここぞって時に真の力を解放する……う~ん♪ いつ考えてもかっこいいねぇ♪」


 命の危険と隣り合わせというダンジョンを心から楽しんでいる様子だが、それは彼にそれだけのことを口にできる実力があるからに他ならない。

 たとえ刀ではなく弓であっても、魔物たちの死体で山を作る程度には彼は強い。


「さてと、それじゃあ素材を持って組合に戻るとするか」


 そう言って瀬奈は出口へと向かうのだった。


 ダンジョンに挑む者は色んな人間たちで溢れており、その中の一人に瀬奈は過ぎなかった。

 そんな彼らのことを世の中では【探索者】と呼び、立派な一つの職業として成り立っているのだった。


▽▼


「はい、それでは今日もありがとうございました! お疲れ様です!」

「お疲れ様でした~」


 探索者組合で素材を預け終え、俺は帰路に着いた。

 今日も今日とて学校が終わった後は探索者としての日々だったわけだが、特に危険があったわけでもなくすんなりと俺の冒険は終わった。


「一つの武装を極めれば……って言葉があるけど、弓の扱いが本当に様になって来たよな俺」


 俺はスマホを取り出し自分のステータスを確認した。

 そこには俺の探索者ランク、並びに今保持しているスキルが全て記載されている。


【弓術レベル6】


 スキルにはそれぞれレベルが存在しており、基本的にはレベルの上限は10とされているため、俺の弓術は普通より高いレベルだというのが周りにも認知されている。

 しかし、俺には周りの誰にも言っていないスキルがあるのだが……ふとそれにも目を向けた。


【剣術レベル10】【無双の一刀】【剣聖】


 そんなスキルが堂々と並んでいた。

 さっきも言ったがスキルはレベル10が限界ではあるものの、稀にレベルの概念が存在しないスキルが隠されているともされ、俺にはその二つが発現したのだがこれも俺だけが知る事実だ。


 元々、俺はずっと刀のみを使って自分を鍛えて極めたのだが……まあなんだ、幼い頃に読んだことのある漫画にインスピレーションを受けたわけだ。

 その漫画に出てくるレギオンナイトというキャラが居るのだが、彼は極みの頂である剣術を使わず、基本的に槍で戦うというキャラクターだった。


「それで、本当に強い奴と出会ったりした時、或いは信念を通そうとした時は真の力を解放する……あぁ何度思い出してもかっこよすぎだろ」


 スキルのレベルが10というのはかなり異例であり、それは国に報告しなければいけないほどの重要性を秘めているが、俺は目立つのが嫌なので隠し続けているのである。

 本来なら探索者として登録しているので見つかるはずだが、何故か発現したスキルの【秘匿レベル6】を応用することで、俺のスキルやレベルを誤魔化すことも出来ているというわけだ。


「ま、弓術だけで登録しているから俺の探索者ランクはCなんだけどね」


 探索者ランクはダンジョンでの功績や学業も加え、スキルによっても判定されるのだが、剣術無しの俺に下された判定はCランクで、まあ言ってしまうと到底デカい顔を出来ないランクだ。

 探索者のランクは一番上がSランク、下がFランクとなっており、つまり俺は一番下から四番目というわけだ。

 しかしまあ、ダンジョンに潜る際の制限はそこまでなく、定められたランクよりも奥に潜ることが出来るので、それもまた俺の弓術が着々と育つ一因でもあった。


「ピンチになれば刀を抜けば良いし……うん?」


 なんてことを考えているとダンジョン帰りのパーティが歩いていた。

 全員で五人のそのパーティだが、そこに居る顔は俺も全て知っていた。


「今日は刹那さんのおかげで余裕だったなぁ!」

「本当にね! ねえ刹那さん、これからも私たちと一緒に――」


 その五人は全員学生で、俺が通っている高校の同級生でもあった。

 彼らはほぼAランクだが……一番先頭を歩いている金髪の美女、彼女に関しては話が違う。


(……すめらぎ刹那せつな、数少ない学生でのSランク探索者)


 その実力は学生の枠に収まらないともされており、俺の本来の武装と似通った剣を彼女は扱っている。

 魔法の腕もそれなりのようだが、特に俺は絡みがないため有名人ではあっても彼女がどんなスキルを持っているのかは知らない。


「いえ、明日からは一人で潜らせてもらうわ」

「え?」

「ちょっと刹那さん!?」


 俺のすぐ傍を皇は歩いて行き、それを慌てて残りの面子が追いかけていく。

 そんな中、一人の男子と肩がぶつかったのだが、そいつは謝るどころかこんなことを口にした。


「てめえ、Cランク風情の雑魚が何ぶつかってんだゴミが」

「……………」


 探索者はそれぞれ、腕にランクを示す勲章を付けているため、それで彼は俺がCランクだと分かったんだろう。

 まあ今ので分かったように、少しはマシになったようだが低ランクと高ランクで醜い争いもそうだし、あんな風にイキる奴も居る。


「Aランクだから間違いなくエリートではあるんだろうけど、もう少し他人への気遣いとかあった方が良いと思うけどなぁ。ああいうのって基本的に早死するタイプだってレギオンナイトも言ってるぜ」


 俺にはどうでも良いことかと歩みを再開させた。

 言っちまうと俺は本来の力を隠しているわけだが、だからといって誰かに迷惑を掛けたりするつもりはない。

 力を隠してパーティに入り込み、それで出来ることをせずに他の面子が怪我をするような事態はごめんだからだ。


「明日も学校があるし早く寮に帰らないとな」


 時岡瀬奈、今年十七になり高校二年生になったわけだけど、俺が夢見た……と言うと少し違うけど、拘りを持って生きていける今が本当に充実してるぜ!


 ちなみに、学校においてもCランクは割と下に見られているので……そのいざこざに関しては巻き込まれるとなると非常に面倒なので、先生たちにはマジでどうにかしてもらいたいところである。



【あとがき】


現代ファンタジーは初めてなので、ゆる~く書いていきます。

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