第5話 その名はアースロック

「出会う人々にしあわせを!

 ハッピーライフエンター!」


イチはそう言ってスライムに石を投げる。

スライムは粉々になる。


「うん、クリスティーヌの予想は的中やな」


ハデスが言う。


「でしょ!イチさんの凄いところは超幸運!

 命中さえすればクリティカルヒットです!

 攻撃も狙えば必中です。

 外すことは不運で当たることは幸運ですから!」


クリスティーヌは得意げに言う。


「うむむ。

 もしかしてイチくんの幸運はクリスティーヌさんに出会ったことかもしれないわね」


メルが笑う。


「そんなに褒めてもなんにも出ませんよー」


「……」


それを遠目で見る男がいる。

男の名はアースロック。

大地を揺るがす男だ。

その視線に気づく少女メル。


「ちょっと用事思い出したから――」


メルはその場を離れようとする。


「社長。

 逃しませんよ?」


アースロックがそう言って現れる。


「みんな逃げて!!!」


メルはそう言ってアースロックとの間合いを取る。


「言ったでしょ!逃さないって!」


「く!!!」


メルはそう言って身構える。


「ちょっとヤバくない?」


イチが剣を構える。


「イチ、あかんで!」


ハデスがイチを静止する。


「でも!!!」


「ダメです、イチさん」


クリスティーヌもイチを止める。


「でも!ヤバイよ。

 あの人!」


「ヤバいですね!

 でも、これはメルちゃんの運命なんです」


「そんな!ふたりが戦わないのなら僕が!!」


イチはそう言って剣をアースロックに向けて襲う。

アースロックは足を地面に叩きつける。


アースロックとイチの間に土の壁ができる。


「くそ!」


イチはその土の壁を剣で壊そうとするも壊れない。


「お兄さん、なにか勘違いしてないか?」


「僕は僕の目の前にいる人を護るんだ!」


イチはなにかにとり憑かれたようにそういった。


「俺は仕事の話をしにきたんだ。

 君と戦うためじゃない」


「だったらどうしてメルさんは、そんなに怯えているんだ!?」


「悲しいことにそれは俺が怖いからだろう?

 ですよね?社長!」


「社長?」


イチはなにかに気づく。


「書類の確認が300件くらい溜まってますよ?」


「書類?」


「その人の名前はアースロック。

 ちょっと怖いけどいい人……のはず」


クリスティーヌは小さくそういった。


その男の名前はアースロック。

愛流狩商会に雇われた用心棒。

とても強い用心棒。


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