第4話 ゼロだけど生きています

「君は何をしたかわかっているの?」


そういったのは愛琉狩商会のメル。

突如現れてクリスティーヌをハリセンで殴った少女だ。


「鍋にしただけやん。

 弱肉強食やろ?」


ハデスが頬を膨らませる。


「それが問題なの!」


メルが怒る。


「ごめんなさい」


クリスティーヌが謝る。


「なんであやまんねんな!」


ハデスも怒る。


「猪といえばステーキでしょ!」


「はい?」


「せっかくの新鮮な猪よ?

 血抜きしてちゃんとした処理すれば美味しい猪ステーキができたのに……」


メルは怒る。


「でもお野菜もありましたし。

 お鍋もいいかな?と思いまして……」


「はぁ。まぁいいわ。

 猪を狩ったので来てほしいと言われてきてみれば……

 もう食べ終わっていたことも気にしないでおく」


「いや、毛皮を取りに来てもらおうかなと思いまして……」


「約束覚えてる?」


メルが目を潤ませる。


「はい、猪パーティ……」


「そうよ!今度しようって誘ってくれたのに。

 グスン」


「うわー、クリスティーヌ。

 それはあかんわ」


「あ、あのですね。

 狼の毛皮もありまして……」


クリスティーヌは狼の毛皮をメルに渡した。


「狼も食べたの?」


「美味しく食べました」


「ふーん」


「狼は油でカリッと揚げました」


「というかなんで狼を食べようと思ったの?」


「狼さんがイチさんを食べようとしたからです」


「そ、そうなんだ?」


メルはイチを見る。


「うん。食べられそうになったよ」


イチが答える。


「ところで貴方はどちらさま?」


「その質問には答えれへんよ」


ハデスが答える。


「なんでよ?」


「この子記憶喪失の転生者さんやねん」


「転生者?ってことはブリタニ王国に召喚された系?」


「いや、それが時の女神さんやねん」


「女神系ね。

 ってことはこの子もチート級なのね」


「チート級?」


イチは首を傾げる。


「異質な能力を持っているってことよ」


「あー。そういえば時の女神様は言語能力をアップさせたって言ってたよ」


「あらら?」


「あとステータスが1000倍になるって」


「それはすごいじゃない!

 それならテオスもイチコロじゃない?」


「ふふふふ」


クリスティーヌが笑う。


「なんで笑うのよ?」


「ステータスを見てください」


「ん?」


メルは、イチのステータスを見る。


「え?すごい0が沢山ある!」


「うん?」


イチは首を傾げる。


「すごい、どこを見ても0じゃない!

 0以外の数値なんてどこにあるの?

 魔力、武力、攻撃力、腕力。全て0。

 素早さ、体力、命中率、マナ、オド、チャクラ。

 全て0。

 ちょっとまって。レベルが0な上に戦闘素質まで0じゃない!」


「戦闘素質?」


「戦闘素質というのは。

 レベルがあがったときにあがるステータス数値のことよ。

 これが高いとレベルが上った時の数値が大きいの」


「え!属性素質も0!

 うそやん!?」


ハデスも驚く。


「あら、ハデスさん見てなかったんですか?

 イチさんはほぼほぼステータスが0なんですよ?」


「ほぼほぼ0って全部0やん」


ハデスは落ち込む。


「幸運の数値を見てください」


クリスティーヌは笑顔で言う。


「え!!!幸運3000も!

 なんで?幸運だけならファルシオンと渡り合えるわよ!」


メルが戸惑う。

でも、メルとハデスは冷静になる。


「ってあれ?時の女神様の祝福で1000倍ってことは元値は……」


「3ですね」


クリスティーヌがペロッと舌を出していった。


「……」


メルとハデスはクリスティーヌを見る。

クリスティーヌは「てへ☆」と笑った。



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