第50話 偽りの王


 ◇



「――さて、。これでよかったのか?」

「あぁ、これでいい。これで」

「ふむ。あの場でお目当ての少女を攫い、他の人間を皆殺しにしてしまえば丸く収まるものを…人の考えは理解できんな」


 灰色のコートを羽織る優男――悪魔はコルデー達がいたホテルから離れると直ぐにが待つ――王国の「王の間」に戻り報告を行なっていた。


「ふん。人の考えがお前ら悪魔に分かってたまるか。お前は俺の言う通りに動けばいい」


 悪魔を従える人物――ステンノ・ウェルデンは相手が「悪魔」だと分かっていても横暴な態度を変えない。


「…承知した」


 ただ、コルデー達が恐れていた悪魔はステンノの一言で順従に従う僕のように王座の真横に恭しく立つ。


「計画は順調だ。計画は順調だが…」

「城に潜伏していたか?」

「…あぁ」


 悪魔の口から出た「鼠」という単語を聞き、ステンノは苦い顔を作る。しかし今は計画の途中だということを思い出し表情を戻す。


「油断はしていなかったつもりだが…父上…ウェルデン王達が攫われるとは」

「それは私も同感だ。隙はなかった…それでも――あちらが少し上手だった」

「――まあいい。今はそんなもの捨ておけ。こちらの手数が減っただけで計画には支障はない。予定通り進める」


 ステンノはそれだけ告げると目を瞑る。

 

「――」


 その姿を横に仕える悪魔は――厭らしく嗤いその顔を見られないように顔を伏せる。

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